第7話 調停員

 話は裁判所に戻り――。


指定されたのは◯階の◯号室だった。その部屋は調停を起こした側の待合室らしい。受付の人はなく、小さな病院の待合室みたいな感じだった。

ちなみに、呼び出された側は一つ下の階、△階の△号室。

私は9時30分集合だが、相手は10時集合となっている。会わないようにと、とことん配慮されている。


待合室に入ると、すでに二名腰掛けていた。

一人は二十代後半くらいの女性。栗色のショートカットにシャツにパンツ、ボーイッシュな印象だ。俯き加減で口元をハンカチで押さえていた。

もう一人は男性だ。三十代半ばか後半あたりだろう。少し柄のよろしくない、にーちゃんな感じだ。スマホでゲームをしているのか、一心不乱に指を動かしていた。

私は奥の方に腰掛けると、時計をぼんやり見つめた。息子は幸い寝ていたので静かだったが、ミルクの時間もあったのでそれを気にしつつの時計だった。


「◯◯さん、いますか?」

 スーツ姿の女性が入ってきた。調停員だ。◯◯さんは女性の方で、俯きながら出て行った。

 次に男性も出て行った。私は最後か、と待っていると、六十代後半くらいの少しぽっちゃりした小柄なおばさんが入ってきた。

「七津さんですか?」

 この人が私の調停員だった。近所にいる、美味しそうなおかずを作りそうな感じのおばちゃんだ。

 私は後ろを付いて行った。

「旦那さんと会わないように、階段を使って降りますね。部屋も迂回していくので待合室の前は通りません」

 すごい。忍者屋敷か。

 うねうねと通り、×号室へ。

 いざ――。

 

 なんか見覚えのある部屋だ。

 あ、そうだ。刑事ドラマで見る取り締まり室だ。

 四人入る程度の狭さに長机が二つくっついている。

 そこにはもう一人の調停員がいた。

 おばさん調停員と同じくらいの年頃のおじさん調停員だった。白く薄い髪にベージュのスーツを着ている。二人が並ぶと、なんというか、お見合いの仲人夫婦みたいな感じで、硬いイメージとちょっと違った。

 

「よろしくお願いします」

 私たちはそれぞれ挨拶をすると、調停員二人は簡単に自己紹介をした。

 おばさんが佐藤さん(仮)、おじさんが山田さん(仮)と名乗った。

 

 調停員というのは裁判官の一人……ではない。あらゆる職業、年齢、性別により、調停の際に二名呼ばれるという形らしい。なので、法律に強い人というわけではなく、聞き手として雇われている、みたいな感じらしい。

 私はたまたま年配の調停員二人だったが、この後見た調停員は若いお姉さんやら、やたら身体の大きいお兄さんやらとバリエーションが豊かだった。

 佐藤さんと山田さんが普段何をしている人か知らないが、今後長きに渡る調停を最後まで見届けてくれる人となる。

 

 さあ、いよいよ第一回調停が始まる……。

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