第一章 裁判所に行こう!
第4話 はじめての裁判所
もちろん、裁判所になんか今まで用事はなかった。一体何階なのだろうと看板を凝視すると……家事事件(調停など)の文字。
おお、これかな?
恐る恐るエレベーターのボタンを押し、上の階へ。
到着すると、今はお昼休みで十三時まで受付は閉まっているとのこと。
しかたなく待つことに。番号札を持ち、待ちながらチラシや記入台を見ると、調停の申込書があった。
私は生つばを飲み、申込書に触れた。
幸いというのか、他に人はいなかった。その場には私しかいなかった。変な背徳じみた気持ちが喉からせり上がって目眩がした。
そっと申込書にに目を通す。
私と旦那の名前を記入するところ、生年月日、本籍地、現在の住所、当人たちの親や同居している人の名前と年齢、そして、離婚理由について思い当たること。
待ち時間の間、それらを書き埋めていく。
理由。
一番聞きたいところだ。
ゆるゆると……思い出した事があった。
――生まれてくる子どもについて、だんだん考えを放棄していった旦那。それについて話し合ったし、喧嘩もした。私は罵詈雑言を叩きつけてふて寝した。もしや……このことだろうか……私はそれを書いた。書きながら泣いた。息子は抱っこ紐の中ですっかり眠っていた。本当に可愛い寝顔だった。
十三時になり、窓口が開いた。申込書を出すと、さすが事務作業、特に感情もなく淡々と、記述が甘いところを指摘した。
「円満調停ですね。一緒に婚姻費用分担の調停もですね」
私が頷くと、足りない書類を教えてくれた。
収入印紙、切手、あとは戸籍謄本……うろ覚えだが、これらを言われたように思う。収入印紙や切手など合わせると三千円もかからなかった気がする。いや、もっと安かったような。この値段で話が聞いてもらえる上に間を取り持ってくれるってすごい、なんて、まだ産後ウツだった私はぼんやりと思った。(県や市によって内容は多少違う)
それらを用意してから改めて申し込む事となった。そして、次回申し込んだ時には三名並んでいた。みんな似た顔色をしていた。
ところで、婚姻費用分担の調停とは文字通り、結婚している間の生活費用である。まあ、旦那の場合、出産に至るまでのお金は出してないし入院費ももちろん払ってない。裁判所に行く前にネットで調べると生活費について記述があり、やっておいた方がいいと書いてあったので一応頼んだ。
余談だが、産後一週間目に職場に行き(暇だったからというトンデモ理由)、一ヶ月後には働いていたのでお金は……出産費がかさんだためあまりなかったが、それでもなんとかなったが……あまりにも何もしない旦那なので、せめてその辺り責任はないのかよ?? という気持ちを込めての申し込みだった。
そして、戸籍謄本。
これ、結婚前に見ておくべきだった。
旦那、元よりバツがついている人。ということで、戸籍謄本には前の奥さんと子どもの名前がバッチリ記載されていた。そして凄まじい数字を見てしまったのだが、旦那さんの名誉を少しだけ守ってここでは記載しないでおく。
まあ……これ見たら多少冷静になって、結婚を考えたと思う内容とだけ書いておく。
これから結婚する皆様。相手の戸籍謄本を見るのも大事な作業かもしれませんよ。
ちなみに、本籍地を移動させると前の本籍地での結婚歴が記載されないそうです。今はどうか知らないけど、何にしても、ご注意を。
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