第77話「否定禁止 その2」
同時に構えた2人だったが、先に動いたのはイスズだった。
体重を乗せた拳を放つ。
フーソはワープを使わず、皮一枚のところで避けると、すぐさま反撃に応じる。
つま先がイスズの
「ぐぅぅ! いっッ!! だが――」
痛みで顔を歪めるイスズだったが、フーソの足をガッチリと掴み、逃げられないようにする。
そのまま拳を叩きつけようと振るうが、フーソは瞬時に自身をワープさせ拘束から逃れる。
「だろうな。当然、そうする!」
フーソのワープはどこから出てくるか分からない。しかも全身が現れるかも不確定。全方位に気を張らなくてはならず、確実に後手に回る。しかし、イスズは迷わず、目の前に拳を突き出した。
その拳はちょうど、その場へと現れたフーソへとぶち当たる。
「……ッ!」
予想の外からの攻撃により、フーソは足のふんばりも効かせられず、吹っ飛ぶ。
「お前……、良い顔つきになってきたじゃねぇか。そうだよな。避ける為のワープとはいえ、漢なら、相手の正面に堂々と出るもんだ!」
イスズは「気にいった!」と言って、太ももをパーンッと叩く。
「次はお前の番だ。掛かって来いッ!」
イスズは仁王立ちで、フーソが立ち上がるのを待つ。
「理解不能。いま畳み掛ければ終わったものを……。だけど……、キライではない」
フーソはダメージなんか無かったようにすぐに立ち上がるとイスズへと肉迫する。
そして――。
ガンッ!
鈍い音と共に、イスズの頭部に衝撃が走る。
苦悶の表情を浮かべ、一歩よろけるが、倒れることなく、その場に留まる。
「次ッ」
フーソもイスズに習って、その場で無防備に突っ立つ。
「いいね。喧嘩してるって感じだ。火事と喧嘩は江戸の花ってなっ!」
今度はイスズが、相手の顔面を打ち抜く!
フーソも鼻や口から出血しながらも、その場から動くことなく、耐えた。
交互に殴り合いを続ける。
イスズもフーソも自身の腕っ節だけでの勝負。
ホムンクルスのフーソは多少の出血はあれどピンピンしているのに対し、イスズは次第に膝は笑い始め、疲労が体を蝕み肩で息をし始めている。
「ハァ、ハァ、ここまで殴って倒れなかったヤツはいなかったんだが、逆に俺の自信が倒されそうだぜ」
ニヤリと無理矢理笑みを浮かべながら、拳を振るう。
フーソは涼しい顔でその一撃を受けると、次の自分の番に向けて、足に力を入れようとした。
だが、フーソの足が上がることはなく、逆に膝をつく。
「こ、これは、体の限界?」
表情なく、ダメージが無さそうに見えていたが、その実、しっかりとダメージはあり、今身体が限界を迎えていた。
「どうやら、ぼくの負けのようです」
フーソはスッとまぶたを閉じ、イスズからの攻撃を待った。
「ふざけんじゃねぇ! 勝手に自分で自分の限界を決めてんじゃねぇ! テメーはまだ立っているし、話もできてる。本当の限界だっていうのはぶっ倒れてから言いやがれッ!!」
「意味不明。倒れたら喋れない。だけど、一理ありますね」
ぐぐっと膝に力をいれて、なんとか立ち上がる。
とても蹴りを繰り出せるような体力は残っていなかった。だから、フーソは腕に力を込め、腰を回し、足に頼らず拳を振るった。
「良いパンチだ」
イスズはその一撃を堂々と受け止めると、今度は自分が歯を食いしばり、拳を固く握る。
傍から見れば、イスズもとうに限界を迎えているように見えたが、それでもその拳は力強くプレッシャーを放つ。
フーソが全てを出し切り、よろりとよろける。
「お前が倒れるのは、自分の限界に負けたからじゃあない。俺が引導を渡してやるッ!」
イスズは下から打ち上げるように拳を振るい、フーソに叩き込んだ。
フーソは宙へ弧を描き、地面へと落ちた。
「ハァ、ハァ、ハッ! 久々に良い喧嘩だったぜ」
異世界転生禁止ッ!!~トラック乗りが不本意に異世界転生したからテンプレ全部ブッ飛ばす~ タカナシ @takanashi30
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