進化

流々(るる)

人間の指は六本

「はい、山本くん、ありがとう」

 黒板の前で先生は続ける。

「いま山本くんが読んでくれたように、虫の脚は六本あります」

 なんか気もちわるいよなー。

 あしと手ってどうやって区べつするんだろ?

 わたし、虫きらーい。

 二年生の理科の授業。虫の話で教室はざわざわしている。

 外の雪は今日も止みそうもない。


「はーい、それじゃ虫の話はおしまいにして、今度は私たちにとって身近な動物、サルの特徴を考えてみましょう」

「おれ、サル見たことあるーっ!」

「サルって、かたまってるんでしょ?」

「そうですね。サルは仲間同士が集まって生活する動物です。それを『群れを作る』と言います」

「サルは力も弱いから群れを作るんだって、テレビで言ってた」

「だって、サルは夏にちょっとが降っただけで、死んじゃうことがあるんでしょ?」

 マジ!?

 うそだぁー。

 しんじらんなーい。

 それじゃ、冬なんかすごせないじゃん。


 虫の話よりざわついてしまった。


「サルは私たちと違って寒さに弱い生き物なので、冬の間は土の中に穴を掘ったり、洞窟の中で生活しているといわれています。その他にもサルの特徴としては――」

 先生が黒板に書いていく。


・ことばのような音を出して、なかまどうしでコミュニケーションをとる。


・「ふく」というもので体をおおって、寒さをしのぐくふうをしている。


・手のゆびは五本しかない。


 親指とでチョークをはさんで書いている先生も、それをノートに書き写している子供たちもみんな、黒茶色の太くて長い剛毛に体中が覆われていた。

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