第13話 アニメとかラノベで貴族の息子ってのは噛ませ犬なんだけど、現実では勝ち組なんだよな
昼休みが終わり、午後一の授業が終わった休み時間に一人の男子生徒がガルフに因縁を付けてきた。
「どうして転校生の君がティアと一緒に居るのかな?」
彼の名はミッシェル。見た目は一言で言えば色男。ジョセフと同じく貴族の長男で、ティアを狙っているらしい。ガルフはティアの意向もあり、警護役だと言うわけにもいかず、返答に困ってしまった。
「黙ってちゃぁわかんねぇんよだよ! なんでてめぇみたいなモンがティアと一緒に弁当食ってんだって聞いてんだろうが!」
これが本性だろうか? 彼は汚い言葉でガルフを罵り始めた。シェリーは隣の席で小さくなってしまっている。
「俺はなぁ、ずっとティアに目ぇ付けてたんだよ。ヤツをモノにすりゃ王配だ」
小声で汚い本音を口にする男子生徒。こんなヤツがティアの心を傷付けてきたのだろうかと思うとガルフは無性に腹が立ってきた。
「なんたって、俺の家は伯爵家だからな。王女の婿にはふさわしいだろ?」
醜く顔を歪めて薄ら笑いを浮かべるミッシェル。
《ジョセフが男爵家ならコイツは伯爵家か……貴族の息子というのはこんなヤツばっかりなのか? そう言えばジュリアは侯爵家とか言ってたっけ……同じ貴族の人間でもえらく違うものなんだな》
貴族のボンボンの思い上がりにガルフが嫌悪感を感じ、黙っているのを伯爵家という肩書に恐れをなしたと勘違いしたミッシェルは調子に乗って絡み続け続ける。
「お前、貴族の出じゃ無いよな。一般庶民が王女様と釣り合うわけ無いだろうが」
その一言にガルフは黙っていられなかった。
「爵位が何だって言うんだ! そんなもの、ボクには関係無い!」
まあ確かにバードリバーの王子であるガルフにはドラゴニアの爵位などどうでもいい事なのかもしれない。だが一般的な考え方ではミシェルの言い分の方が正しいと言えるだろう。実際ガルフとて結婚相手となると、それなりの家柄の娘でなければ許されない筈だ。しかし、ミッシェルは、伯爵家に対して突っ張ってきたガルフの気迫に言い様のない恐れを抱き、逃げる様に去って行った。
「へっへっへっ、ザマぁ無ぇな。根性無ぇくせに伯爵家だからって偉そうにしてっからそんな目に遭うんだよ」
事の成り行きを眺めていたジョセフがミシェルの事を笑い飛ばしていた。貴族だからと偉そうにしているのはジョセフも同じなのだが、彼は自分が偉そうにしているのは家柄のおかげでは無く、自分の力でだと思い込んでいる大馬鹿者。やはりブレイザーの言う通りの貴族のバカ息子だ。前述の通り彼の家は男爵家。一般庶民からすれば男爵でも十分だと思うのだが、貴族の中でのヒエラルキーで言うと最下層。学校ではミシェルに対して偉そうに出来るが、貴族連中の社交界では格上の伯爵家であるミシェルに二歩も三歩も譲らなければならない。それが嫌で嫌で仕方が無いのでグレてしまったのだが、ティアを射止めて王配の座に着けばそのコンプレックスも解消される。そんな強い思いが彼にはあった。それが行く行く、彼の命運を大きく狂わせてしまう事になるのだが……
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