4 uwowtha yujugu me:fe tho:lo ya: vam u:tunle.(ウォゥざが新しいいのぢが私のなかにいると言った)
oldath? wob erth cu?(オルダす? なんぢゃ?)
説明をすると、レクゼリアの顔に激しい嫌悪の色が浮かんだ。
ne+do! erav uwowthama therotha. tenava re fog ned honev o+guce therothma thertigazo.(厭だっ! 私はウォゥざのにぞうだ。ぞんな奇怪ながみのぼうりぎを使われたくない)
ネルサティア系の神々にすら敵対心を持つウォーザの民の尼僧にとっては、シャラーンの神などさらにいかがわしく思えても仕方のないところではある。
だが、それからモルグズは説得を続けた。
これではいつまでも、レクゼリアと子作りを続け無くてはならない。
だが、本能が告げているのだ。
もう、そんなに時間は残されていないのだ、と。
いままで沈黙を保っていたエィヘゥグが口を開いた。
morguthuma yurva erth the+gxon.(モルグずのこどばはだだじい)
その目には、真剣な光が宿っていた。
uwowtha vomoth morguthuma gxafthzo.(ウォゥざはモルグずのごどもを望んどる)
それでも、レクゼリアはなかなか納得しない。
ひょっとしたら、とモルグズは思った。
レクゼリアは口では子供が欲しいと言っているが、もうそんなことはどうでもよくなっているのではないだろうか。
ただ、この性フェロモンを持つ半アルグの肉体に強い愛着を抱いているだけかもしれない。
ふと、寂しさを覚えた。
自分の存在そのものを、逆に全否定された気がした。
かつてのレクゼリアとの交わりのとき、自分も子供をつくる、つまり新たな生命を生み出すことが出来るかもしれないと心の底から震えるような喜びを味わったが、結局はレクゼリアもただ欲望におぼれているだけなのかもしれないのだ。
じっとレクゼリアの、もうすっかり成熟した女の顔になったウォーザの尼僧の顔を正面から凝視した。
やがて、レクゼリアが言った。
fova ba:botho.gow rolbova ned topo.(あがちゃんは欲しい。でもお前と別れたくない)
青い瞳が潤んでいた。
ただの性フェロモンのせいだけではない、と思いたい。
彼女には最初は憎まれていた。
兄の体を奪った憎むべき相手として。
それでも、紆余曲折をへてこんなことになっている。
なんだか奇妙な関係だった。
モルグズが苦笑したそのとき、スファーナにひっぱられるようにして、褐色の肌の痩せた男が、寺院のなかに入ってきた。
zurvonigav! ers oldasma zereys.(連れてきたわよ! オルダスの僧侶)
僧侶のほうは、明らかに怯えていた。
おそらくオルダスという神からしても、やはりエクゾーンは邪神なのだろう。
スファーナに「ひどい病気にしてやる」とでも、脅されている可能性がある。
tom zertiga ers cilas polbowa yu ci resazo cu?(お前の法力は女を妊娠しやすくするのが可能か?)
なんだか我ながらおかしな表現のようにも思えたが、意味は通じたようだ。
ただ、向こうは片言のセルナーダ語しか話せないので、スファーナを通訳替わりにして会話をした。
伊達に三百年は生きていないらしく、スファーナはシャラーン系の言語も、話せるらしい。
若干、手間取ったものの、なんとか相手の言うことを理解した。
確かにオルダスの法力には、そうした力はあるという。
ただしそれは、男性の生殖能力を高めるだけであって、女性に子供ができにくい原因がある場合、まったく効果はないらしい。
さらに、かなりの体力を男性側は消耗するという話だ。
つまり、この場合、モルグズに法力をかけるという形になる。
モルグズとしては、体力の損耗がいささか気にかかる。
それこそ、命を振り絞るようなことになるかもしれない。
だが、もはや悩んでいる余裕もなかった。
オルダスの僧侶は、モルグズの腹のあたりに手を近づけると、なにやら奇妙に異国的な言葉を唱え始めた。
やがて、かっと下腹のあたりが燃え盛るようになる。
それからあとは、体のなかで暴風が吹き荒れたようにも感じた。
いままで死の力をふるい続けてきた自分が、まったく正反対の力をレクゼリアのなかに放出していくのがわかる。
心臓が破裂するのではないかと思った。
命の溶岩が体の内部でどろどろに溶解し、激しく渦巻いては、幾度もウォーザの尼僧のなかへと生命の根源のようなものを立て続けに放っていく。
無明の闇のなかにいままで、自分はいた、とモルグズは思った。
しかしその遥か向こうに、ほんのわずかな光が見える。
得体の知れぬ恐怖に襲われた。
いままで、自分は殺人者としての生を送ってきた。
それなのに、こんなことが許されるのか、と。
これからさらに、大いなる殺戮を続けるのに本当に、それでもよいのかと。
誰かが、よい、と告げた。
急激に意識が薄れ、そしてまた、覚醒していく。
気がつくと、下にレクゼリアがいた。
まだ自分の一部は、彼女のなかにある。
熱い。
涙が気がつくとこぼれ落ちていた。
uwowtha yujugu vath me:fe tho:lo ya: vam u:tule.(ウォゥざが新しいいのぢが私のなかにいると言った)
神託を、授かったらしい。
きつく彼女と抱きしめ合うと、また目から涙がこぼれてきた。
命を奪うだけだったこの体が、まさか本当に新たな命を生み出すことになるとは、いまだに信じられなかった。
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