12 fu:mov ci ned!(落ち着けるわけがない!)

 nap eto cu?(あなたは誰ですか?)


 erv morguz.(俺はモルグズだ)


 eto ned ku+sin.(あなたは普通じゃない)


 突然、にじり寄ってきたレーミスが少し怖くなってきた。


 le:mis! vomov fu:mo:r!(レーミス! 落ち着いて)


 fu:mov ci ned!(落ち着けるわけがない!)


 レーミスが熱にうかされたように叫んだ。

 あるいはさっきの神像が、なにかよくない影響を与えたのかと思った。


 wob eto tarmas! tom tarmas boskosum batsos! reys? resa? alg? dewdalg? ned.tom tarmas ers ned cod judnikma tarmas! zemno.fikuv mig rxo:bilum heyigfe zemnoma tigazo!(あなたの魂はなんですか? あなたの魂は根本的に違う! 人? 女? アルグ? 半アルグ? 否。あなたの魂はこの世界のものじゃない! 死。とても恐ろしく強い死の力を感じるんです!)


 そういうことか、とモルグスは納得した。

 魔術の才能に溢れ、強力な魔術をふるう人間ともなると霊的、魔術的な物事に過敏になりすぎるようだ。


 eto se+gxon.erv ned cod judnikma reys.zemev ti+juce yudoniknxe.ta vegi cod yudinksa...(お前は正しい。俺はこの世界の人間じゃない。俺は別の世界で死んだ。そしてこの世界に来たんだ……)


 eto rxo:bin.tom zemnoma tiga era rxo:bin to:g...(あなたが恐ろしい。あなたの死の力は恐ろしすぎる……)


 melrum ers.ers molgimagz dog.(当然よ。彼はモルギマグズなんだから)


 相当にミーレスにとっては、モルグズの魂がとてつもないものとして感じられるようだ。


 molgimagz.....aa,had magartis yas tic tom tsem!(モルギマグズ……ああ、あの魔剣はあなたのためにあるに違いない!)


 もはやレーミスは、宗教的恍惚とでもいうべき状態にあった。

 率直に言って、見ていて不気味なほどだ。

 しかし、冷静に考えてみれば今まで自分のしてきたことは、かなりとんでもないことなのも事実ではある。

 死と破壊の王につづいて「災いをもたらす」とは大げさな気もしていたが、レーミスのこの態度を見る限り、やはり自分は良くも悪くもこの世界では異常な存在、と考えるべきなのだろう。

 もし地球で「別世界から来た人間がいたら」と逆に考えれば、確かにとんでもない。

 すでにネスファーディスのように、人間であってもモルグズの持つ「地球の知識」の価値に気づき、こちらを狙っている者もいる。

 ゼムナリアの言うとおり、これから敵はどんどん増えていくのだろう。

 だが、魔剣モルギマグズとやらを手に入れて、それで終わりもはずもない。

 そうなれば、また新たな別の敵に狙われる可能性が高い。

 昔の少年漫画じゃあるまいし、どんどん強い敵が現れていく。

 しかしその敵が邪神や怪物、魔王の類ならまだいいが、中央集権的な国家などに狙われている時点で、神話的なファンタジーとも異なる生々しさを感じる。


 avto nan tigazo.(あなたは大きな力を持っている)


 レーミスが言った。


 yanvov fog tuz.(僕もあなたに協力したい)


 alov.gow...(ありがたい。だが……)


 今度は女装美少年まで引き連れることになるのだろうか、と思うとさすがに悩む。

 いまでも十分に、悪目立ちしているのだ。


 yanvov colpo.(ここから協力するんだ)


 レーミスが言った。


 sxafum sxulv yuridin zerosefma zambozo.sinviv ci e+sezo.gow losxuv ci tom pe+sxele.vomov ambo:r bac cuchato fog vischo so:rol nxal.(ユリディン寺院の結界を僕は詳しく知っている。僕は自分自身を隠せる。だが僕はあなたの居場所に気づくことができる。もし僕と話したいときは念じてくれ)


 少しうそ寒いような気分になった。

 このレーミスが仲間だということは理解しているのだが、首に鈴をつけられた猫のような気分だ。


 fikuv had reyszo topo.(あの人を君からは感じるんだ)


 おいおいラクレィス、とつい思った。

 お前はいい奴だったけど、この子は本当に大丈夫なのか?

 なにか病的なものを、今更ながらレーミスからは感じた。

 はじめはその美しさに驚かされていたが、やはりこの少年も一筋縄ではいかないのだろう。

 自分も含め、知り合いがみんな情緒不安定に思えるのはきっと気のせいではない。

 アースラやラクレィスは、今にしてみると本当に、道を踏み外していたがまだまともだったのだと思う。

 だがあの二人はあまりにあっさりと、質の悪い冗談のように殺された。

 死は、基本的に、唐突にやってくるものなのだろう。


 le:mis lokyis tuz.erig van.(レーミスはあなたを気に入ったみたい。良かった)


 lokyiv mxuln reysule.(俺は変なやつには好かれるんだ)


 sxalva li.(知ってる)


 だが、どういうわけか、幸せには好かれないのは、ある意味では当然のことだろう。

 これからはゼーミャと体を重ねれば、少しはいろいろなことを忘れられるのだろうか。

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