11 alov tel.ner zerosa......(あなたに感謝します。偉大な女神よ……)
どうやらそれは、ユリディン寺院の二本の塔のようだった。
その周囲を青白い壁のようなもので覆われている。
まるでCGで作られた立体画像のようだ。
ers arkejits.jen hxukav yuridin zersefma zambozo.(幻術だよ。いま、ユリディン寺院の結界を表している)
まるで魔法のようだと思ったが、これはまさに「魔術そのもの」なのだ。
ers fanpon cu? yuridin zerosef tsas yuridsum gardo re zembotse.(面白い? ユリディン寺院はいつも魔術的に結界で守られているんだ)
実際に視覚化されると……いや、これも幻術らしいのだが……ユリディン寺院の魔術的な防御の凄まじさが改めて実感できた。
こんなところに潜入するなど、やはりまともではない。
gow aln zambo yas hice pe+sxezo.(でもあらゆる結界はhiceところがある)
hice?
聞きなれぬ言葉だが、スファーナが説明してくれた。
yuridum we+ce.(魔術的に弱い)
we+ceは物理的な意味で弱いという意味だとは知っていたが、セルナーダ語では物理現象と精神、魔術現象に別の言葉を使う例が多い。
これはたぶん魔術が実在しているのと無関係ではないだろう。
vomov mavi:r(みてよ)
少女のようなレーミスがまたなにやらつぶやくと、幻影がゆらめき、赤っぽいへこみのようなものが、塔のあちこちに現れた。
ers yuridbemma u:motsa.u:motsa duyfum usolas a:mofe yuridus tenas dog zerosefnxe.codi pe+sxeri zaglis yuridzoszo.(魔術宇宙の歪みだ。たくさん魔術が寺院で使われているんで歪みが少し生じている。これらの場所は魔術印が壊れている)
よく見ると、建物の外側を覆う結界の防壁は無数の魔術印が描かれていた。
そのなかで確かに、形が歪んだり、明らかに機能していないと思しき魔術印が存在している。
ku+si, mende era ned do:ce u:motsatse,zagliv ci cod zambozo.(普通、小さな歪みは問題ない。でもね、僕はこの結界を壊せる)
wob hasos bac zaglito nxal cu?(この結界を壊したらなにが起きる?)
すると、驚いたようにレーミスがこっちを見た。
vomov savu:r! eto no:vayuridres cu?(待ってよ、あなたは闇魔術師じゃないの?)
心底、レーミスは驚いているようだった。
どうやら彼は、モルグズを闇魔術師だと思いこんでいたらしい。
wam aboto erv no:vayuridres cu?(なぜ俺が闇魔術師だと思った?)
vekav ci! heyigs yuridres ers mig celzic yuridle.now ku+sin yuriders losxus ci ned foy.(わかるよ、強い魔術師は魔術に敏感なんだ。でも普通の魔術師は気づかないだろうね)
そういえば、いままでも似たような経験は何度かしている。
しかし、ゼーミャはこちらが魔術師だと気づいた様子はなかった。
実際、厳密には魔術師ではないのだが。
umm...tom yuridtiga era mxulg.(ううん、あなたの魔力は奇妙だ)
それが自分の魂が別の世界からのものなのか、あるいは正式な魔術師でないためなのは、モルグズにもわからない。
wam? era ho:nce...(なに? 懐かしい……)
そのとき、いきなりレーミスの青い両目から、涙が伝い落ちていった。
気づいたのか、とモルグスは思った。
un no:vayuriders etigi yuriduszo vel.erig van reys.tenav ci yuriduszo erv ned absxan yuridres teg.(一人の闇魔術師が魔術を教えてくれた。いい奴だった。それで俺は正式な魔術師じゃないが魔術を使える)
had reys ers....(あの人が……)
しばらく少女めいた美しい少年は、涙を流し続けていたが、やがて部屋の隅の奇妙な像に、頭を下げた。
alov tuz.ner zerosa......(あなたに感謝します。偉大な女神よ……)
あまりに雑多にものが散らばっていたのとレーミスの存在に気をとられて気づかなかったが、それはひどく不気味で、圧倒的な力を宿しているように思えた。
高さ一エフテ(約三十センチ)ほどの、異形の姿を象った像である。
漆黒の、黒檀のような木材から掘り出されたものらしいが、どうにも見ているだけで背筋が寒くなるような嫌悪感を催す代物だ。
頭部はどうやら羊の頭の形をもしているようだが、雌羊らしいのにやたらとねじくれた長大な角を生やしている。
無数の乳房を体のあちこちからぶらさげ、そこには忌まわしい姿をした悪鬼めいたものが、しがみついている。
直感的にこの女神がなにを表しているのか理解した。
これは、エグゾーン女神の彫像なのだろう。
ほんの一瞬、その醜悪な顔がにやりと笑ったような気がした。
あの美しい少年が、こんな神を信仰していること自体が、なにかの間違いのような気がする。
そしてかの女神は、スファーナが尼僧として仕える女神でもあるのである。
邪神、と断じて差し支えないだろう。
今更ながら、自分たちが出会ったのもこの神の引き合わせなのだと思うと複雑な気分になった。
やがてレーミスが、こちらをじっと見た。
目から涙を拭った少年は、いきなりこう訊ねてきた。
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