3 ba erab ned tom zemgega re laqresa.(あだしはあんたの殺されたこうぃびとじゃない)
aboto resa era narha qu?(あんたは女を馬鹿だと思ってる?)
いきなりの発言に、なんと答えていいかわからなかった。
ba erab ned tom zemgega re laqresa.(あだしはあんたの殺されたこうぃびとじゃない)
俺はどこまでも馬鹿だ、とモルグズは思った。
事情を知っているのか、女の直感かは不明だが、アースラはとっくに自分が「ヴァルサの代用品にされている」と気づいていたのだ。
これほど、女性にとって屈辱的なこともないだろう。
だが、アースラは屈託なく笑った。
mende era ned.ba eloba li nxaduba tocho.(問題ないよ。あだしはあんたとずるのをたのすぃんでる)
そう言うと、アースラはこちらにむかって接吻してきた。
それを、目を皿のようにしてノーヴァルデアが見つめている。
savu:r!(待てっ!)
ノーヴァルデアの顔が真っ赤になっているところを初めて見た。
jod,,,jod ers ned van!(それは……それは、良くない!)
完全にノーヴァルデアは混乱しているようにしか思えない。
たかがキスだというのに、なぜそこまで慌てるのだろう。
ただ、これが良い兆候とは思えない。
アースラはゼムナリア信者と協力するつもりではなかったのか。
しかし、いまの行為はむしろノーヴァルディアを無駄に挑発しているとしか思えない、
だが、だとすれば俺はもててるんだな、と皮肉げにモルグズは思った、
もしノーヴァルディアがこちらに異性として興味を抱いているのであれば、アースラは彼女にとって恋敵ということになるのだろう。
だが、かたや恐るべき死の女神の尼僧であり、かたや火炎と破壊の神の尼僧なのだ。
災厄、どころの話ではない。
ただ、これもあるいは、胸糞の悪い話だが神々の勢力争いの一部なのだろうか。
つまりゼムナリアとクーファーの。
だとすれば無茶苦茶だ。
そもそもアースラはクーファー神の神託により、やってきた。
そしてノーヴァルデアもそのことを知っていたのだ。
あるいは協調するように見せかけてゼムナリアとクーファー、この二柱の神々はそれぞれこちらの身を独占しようとしているのかもしれない。
つまり、ノーヴァルデアとアースラの争いはただの嫉妬といった問題ではなく「神々の代理戦争」かもしれないのだ。
まるでオスマン帝国のスルタンになりハーレムでももったようだ。
あるいは中華文明圏の歴代皇帝となり、後宮を構える身にでもなったのか。
だが、喜びなど微塵もなかった。
すでに、モルグズの最愛の相手はこの世界から失われているのだから。
ラクレィスが呪文を唱え終えた。
一見した限りではなにも変化は起きていないうように見えるが、これで魔獣よけの結界が完成したのだという。
yuridgurf soltalm na: mxaz foy colnxe.(魔獣がここにsoltalm なる mxaz だろう)
ふと、その表現が聞きなれないものであることに気づいた。
mxazはわかる。
これは動詞に後ろにつくもので、しづらい、しにくい、というような意味だ。
だとすれば「なりづらい」なのかもしれないが、soltalmというのがわからない。
動詞so:ltarは「近づく」という意味だが-lmで終わる単語は珍しい。
-umなら副詞の可能性が高いのだが。
そこで気づいた。
動詞が、副詞になるとはどういうことだ?
副詞は名詞以外の形容詞、動詞などを主に修飾する。
sa:ltalmはつまり、後ろのna:を修飾しているらしい。
na:は動詞canarの活用したものだが、不規則動詞なのでおかしな形になることが多い。
「近づく」に関連する副詞が、na:をどう修飾しているのか、意味がわからない。
wob soltalm cu?(soltalmってなんだ)
すると、ラクレィスははっとしたような表情を浮かべた。
soltalm na: era so:lta, ta, na:.(soltalm na:は近づく、そして、なる、だ)
ずいぶん昔、一度、ヴァルサも似たような表現した記憶がぼんやりと残っている。
ラクレィスは一本の細い木の枝めがけて、いきなり手刀を繰り出した。
枝があっさりと折れる。
basxugiv ta lakimugiv.(俺は叩いた、そして、折った)
闇魔術師が説明を続けた。
ba:sxulm lakimugiv.ye:ni era mi:fe.(ba:sxulm 折った。同じ意味だ)
しばし考えた末、理解した。
これはあるいは、一種の複合動詞に近いのではないかと。
複合動詞はアジアの言語に多く、日本語でも頻繁に使われ、非常に発達している。
いまの場合は「叩き折る」とでもなるだろうか。
セルナーダ語にも似たような表現があるらしい。
だが、ヴァルサはなぜ教えてくれなかったのだろう。
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