10 ers narhain zeros..(ナルハイン神……)
まだ炎上を続ける街の姿が地の果てに見えた。
一体、どれだけの犠牲者が出たのか、想像するのも厭だ。
もう、おそらくあの街はほぼ全焼しているだろう。
途中、「誰かが雨を望んだ」らしく、激しい雨が降ったが、それでも火災は収まらなかった。
あれほどの規模になれば当然かもしれない。
アーガロスの仕業だと言っても、信じてくれるかどうかは疑わしい。
そもそも、自分はアーガロスを殺害し、村の人々も殺している上、街の住人も一人、殺めているのだ。
さすがに街一つ焼かれて、イシュリナス騎士団は本気になっているはずだ。
wob isxurinas i+sxures bu:roma patca era cu?(イシュリナス騎士団の数は何だ?)
意気消沈した様子でヴァルサが答えた。
sakdecsxas.(五千)
もちろん騎士団が五千、あるわけではないだろう。
よく考えれば質問の仕方がまずかったわけだが、五千人の騎士団というのはいくらなんでも数が多すぎないだろうか。
pagice i+sxures bu:ro ya: isxurinasiale cu?(他の騎士団はイシュリナシアにあるか)
ya:.lakgos i+sxures bu:ro.gxofos leks ta leksuyale.(ある。lakgos 騎士団。彼らは王と王国にgxofosする)
lakgosは銀を意味していたはずだ。
gxoforはうろ覚えだったが、奉仕する、仕える、そんな感じだった気がする。
azim patca wob era cu?(彼らの数はなんだ?)
sakdecsxas.patca era mi:fe isxurinas i+sxurea bu:role.(五千。数はイシュリナス騎士団と同じよ)
血の気がひいた。
イシュリナス騎士団は、イシュリナス教団、あるいはイシュリナス寺院とでも呼ぶべきもの管轄にあるのだろう。
中世ヨーロッパの場合、騎士団は宗教、つまりはキリスト教と密接な関わり合いがあった。
この世界は多神教なので、ここまではまだ理解できる。
問題は、lakgos騎士団のほうだ。
これは、王と王国に仕えているようだった。
地球でもイングランドのガーター騎士団のような世俗の騎士団は存在するが、こうしたものは騎士が戦力として実質的な力を失ってからの、いわば団員になるのが名誉、といった感じの意味あいを持つ。
だが、この世界では違うようだ。
銀騎士団、というのはなんとなく語呂が悪いので白銀騎士団と呼ぶことにモルグスは決めたが、そうした「王国直属の騎士」が存在することになる。
やはりこの世界ではすでに国王による中央集権がかなり進んでいるとしか思えない。
しかし、イシュリナシアだけでイシュリナス騎士団五千、白銀騎士団五千という兵力が存在するというのは、なかなかに恐ろしいことのように思える。
騎士だけで合計、一万の兵力を持つことになるのだ。
もっともモルグズがイメージしている重武装の騎士とは違い、ただ馬に乗っているだけの軽騎兵、ということもありえる。
それでも一万騎の騎兵、というだけでもかなりのものではある。
これに歩兵が加われば、総数はいくらになるのだろう。
しかし、今はこの世界の軍事について考えるよりも重要なことがある。
イシュリナス騎士団の騎士たちは、独自の司法権を有しているという話だ。
さすがに五千の兵力を自分たちにすべて向けてくるとは考えにくいが、こちらを追ってくる敵の数が百騎単位というのは、ありうるかもしれない。
ますます絶望的な気分になったそのときだった。
mavi:r!(見てっ)
いきなり、ヴァルサが後ろから興奮したような声をあげた。
モルグズは絶句した。
金色の、光り輝くものが、地上すれすれの高度でこちらに近づいてくる。
これもこの世界に特有の現象なのだろうか。
had wob ers cu?(あれはなんだ?)
sxalva ned!(知らないよっ)
一応は魔術師であるヴァルサですら、うろたえてる。
つまりこの地でも異常な現象、ということらしい。
金色の光がこちらに近づいてくるに連れて、その正体がわかってきた。
明らかに、人の姿をした姿が、宙に浮いて滑るように接近しているのだ。
だが、逆に正体がわかったことで、モルグズは緊張した。
おそらくは、ヴァルサもだろう。
(やだなあ。そんなに警戒しなくてもいいじゃないか。少なくとも僕は君たちの味方のつもりなんだけどね)
ヴァルサがつぶやいた。
ers narhain zeros..(ナルハイン神……)
彼女にも、神と接触するというのがどういうことか、理解できたようだ。
(つまんないな。僕の正体をヴァルサちゃんにばらしちゃったのか。まあ、別にいいけど。というわけで、強くて偉くて格好いい神様、ナルハイン様だよ)
本来なら呆れるべきところかもしれないが、怖かった。
相手は、少なくともこの地では「神」と見なされる存在なのだ。
明らかにヴァルサは怯えていた。
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