2 nediv cod fo+selpo tocho.(お前と一緒にこの塔から出る)
それからヴァルサは自らの過去を語り始めた。
egseleva tosnxe era yerce colpo.ers mig du:ce tos.gow adsi ajosogo foy erav dewdalg.(私はここから遠い村で産まれた。とっても小さな村よ。でも、両親は私が半algかと疑っていたみたい)
言っている意味が、よくわからなかった。
tom adsi erig ned reysi cu?(お前の両親は人間じゃなかったのか?)
erig reysi.gow dewdalg egsela reysuma adsipo kap uldce du+pad erig alg nxal.(人間だった。けど半algは昔の先祖がalgだったら人間の両親からも生まれるの)
つまりは隔世遺伝のことのようだが、説明しても理解してもらえないだろう。
vomova mavi:r.vam pali era welt.alnureys abos ers dewdalgma mini,(見てよ。私の瞳って緑色。みんなはこれが半algの目だと思っているの)
weltuma mini era cu?(緑の目が?)
welt mimi era dewdalgma egmid.gow ers yatmid.(緑の目は半algの証。yatmidだけど)
yatmid wob ers cu?(yatmidってなんだ?)
yatmice na:fa.(間違った考え)
「迷信」とここは訳すべきかもしれない。
話をまとめると、緑色の瞳の人間は半algと誤解される可能性があることになる。
ta jopag kageva foy madsama vunzo.reysi nafas jodzo dewdalgma egmid tus.(それに私はお母さんの胸をよく噛んだみたい。人々はそれを半algの証として考えるのよ)
気象の強い赤ん坊なら授乳の際にはそういうこともあるだろう。
馬鹿馬鹿しい話だ、とかつてのモルグズならば思ったかもしれない。
しかし、この世界のことを考えると、そうも言えない。
現代日本のように、情報が溢れている世界ではないのだ。
ましてや現実に危険な生物、あるいは怪物が跳梁跋扈しているのであれば、半algを人々が警戒するのも当然だ。
彼らは知識がないので正確な判断ができず、迷信が迷信であることもわからないのだから。
くだらない、の一言で切り捨てるのは簡単だが、自分が最初からこの世界の住人だったら、たぶん似たようなことをしているだろう。
だが、それは半algがそれだけ恐れられているということでもある。
dayzogav re magboga cedc.gow ham su:je zadum neva.mxuln metsfig hasogav da vam la+tasnxe teg.(私は怪物みたいに扱われた。でも、状況はもっと悪くなった。変なことが私のまわりで起き始めたから)
一体、なにが起き始めたというのだろう。
ra+pots sxo: asroga.ma:se kap asroga.la+tas so+sum neg.(いきなり木が燃えた。家も燃えた。あたりが明るくなった)
ヴァルサの表情は暗くなった。
aln tasmogav ci ned yuridtigazo teg.(みんな私が魔力を抑えられなかったせいだよ)
この世界の魔術師の才能は、どうやら生来のものらしい。
それからのヴァルサの話は、残酷に過ぎた。
魔術師の才能を持ちながら、それを制御できないものは魔術師が弟子にとる、という習慣があるようだ。
ヴァルサにとって不運なのは、その相手がアーガロスだということだった。
アーガロスは、偉大な魔術師として、当時もそれなりに高名だったらしい。
魔術師の弟子としてヴァルサの新たな地獄が始まったが、それは聞いているだけで不快になるような話ばかりだった。
奴隷同然にこき使われたらしい。
その他の主人への「奉仕」については、ヴァルサはなにも言わなかったが想像はつく。
彼女はtavzay、「売女」として扱われていたのだから。
それにしても、tavzayというのもなかなかに酷い言葉だ。
tavは「体」を意味する名詞だとはわかる。
問題はそのあとだ。
セルナーダ語では「売る」という動詞の不定形はzayirであり名詞形はza:yiとなる。
tavの後ろについたza:yiの発音が弱くなりzayになったとしたら、tavzayはそのまま「体売り」という意味になるのだ。
改めて、アーガロスへの怒りを覚える。
あの男は亡霊になってまで、まだヴァルサを苦しめようとしているのだから。
varsa,wob wonto ci yuridustse cu? (ヴァルサ、お前は魔術でなにができる?)
wonva ci asrizo.ta usolava ci soszo.(火をつけられる。それに光を生み出せる)
なるほど、と思った。
魔術師は、五つの系統に分けられると以前、聞いたことはあった。
炎、水、大地、風、そして闇の五つである。
それぞれの系統により、得意な分野はまったく違うらしい。
アーガロスやヴァルサの属するasroyuridres、すなわち「火炎魔術師」は、炎、光などの術を得意とする。
ただ、ネルサティアの文化では火は生命の根源とみなされているため、人に活力を与えたりする術もあるらしいがそこのあたりはよくわからない。
ただ、火炎魔術師はどうも攻撃的な術が多いような気はしている。
もちろん、術の使い方にもよるのだろうが。
ただ、ヴァルサの魔術が、とてもアーガロスとは比較にならないほどに弱いということはよくわかった。
師匠と弟子だから当たり前かもしれないが。
少なくともこの塔にいる限りは、自分たちに未来はない。
アーガロスの悪霊に一方的にやられる。
だとすれば、残る手段はやはりひとつだ。
nediv cod fo+selpo tocho.(お前と一緒にこの塔から出る)
ヴァルサは困惑しているようだ。
半algがこの社会でどう扱われるかを、彼女は知悉しているのだろう。
それでも、もうここにはいられない。
ヴァルサを守りながら、塔から外に出るとすでにモルグズは決めていた。
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