応援コメント

§2-12・【補足】第二章のあとがきとして…文明の歴史は『財政破綻』と『高インフレ』のみの歴史 ←うれしく無いわ(ºㅁº)!!」への応援コメント

  • 毎回わかりやすく、参考になります。

    作者からの返信

    Trevor Holdsworth様、いつもありがとうございます(^^)/

    ちょっと補足なのですが、フランス・ルイ16世の話なのですが、これには非常に重要な前話があります。1720年代のミシシッピ・バブルです。絶対王政のルイ14世の時、フランスは延々と対外戦争を続け、この結果、ルイ14世逝去の時には国家収入の約10倍近い16億ルーブル(年収は大体1.5億ルーブルと言われています)もの債務を抱え込み、この多くを国内の貴族などに負っていたために徴税権などを貴族に売り飛ばして糊口をしのいでいたというほど酷い時代でした。この時、ジョン・ローが出てきました。ペテン師とも早すぎた天才とも言われ、数年後にフランスを破滅させるスコットランド人なのですが、彼は現代の管理通貨制度に通じる志向を持っていました。混乱し疲弊したフランス宮廷・政界に近づいて紙幣を発行する〜現在のように〜事の重要性を説いて回って成功します。それまでは金貨が主流だった通貨に対し、紙幣を発行することでインフレ等を効率よく抑圧できるということです。現在では当然の考え方で、またおそらく紙幣などは中世の中国で既に一部ある程度は出回っていたようですが、紙幣による全面置換の初の試みとなり、その後のバブルを生み出したのです。顛末はこんな感じです。

    まずジョン・ローはフランス王政の許可の元、王立銀行(Banque Royale)を作ります(始めは1716年創業のジョン・ローの私設民間銀行=Banque Générale。後に事実上の国有化により中央銀行と同じ働きを持つ)。この王立銀行がフランス市中に流れていた金貨などの現物通貨を買取り、その分の対価として王立銀行券=紙幣を発給しました。当時のフランスは度重なるインフレと金貨などの改悪によりますますインフレが悪化する…を繰り返していたために通貨への信頼性が失われ、逆に「王立の銀行」という政府への信頼の方をより頼ったために「通貨の価値が安定した」ことから紙幣への交換(換金)が続きました。てか、そのくらい当時のフランスの通貨体制は崩壊していたということでした(爆)。しかしより重要な事は「(金貨や銀貨などの)全国民資産分を超える量の王立銀行券(紙幣)を発給してはならない」ということでした。これによりインフレはある程度抑圧でき、紙幣の信頼性が担保されフランス経済の立て直しが可能と思われたようです。そのためこの王立銀行券は兌換紙幣でした。兌換紙幣だったので額面通りの金貨などへの換金が可能で、この事から(Goldの含有量を減らす貨幣改悪よりも)信頼性があったというわけです。

    とはいえジョン・ローの本来の目的は、当時の新大陸(北米)のフランス領の利権の方でした。
    元々、現在の合衆国のかなりの領域はフランス領で本来なら現在の世界の標準語はフランス語でないとおかしいくらいの勢いがあった当時、特にミシシッピ領域はフランスの対外資産の重要な場所でした。フランスはこの後半世紀くらいの間にほぼ全ての新大陸領土を失い、ハイチを中心とした領域のみを植民地化するに駐まりますが、この時代はかなりのテリトリーを押さえていました(現在、ケイジャンと呼ばれるフランス系を中心とする黒人・ネイティブたちの地域でジャンバラヤなどの独特の料理などをもった地域)。そしてこの地域は、当時は財政難などから開拓が半ば放置されていたようです。
    ここに目をつけたジョン・ローは「西方会社」という、英国で言うところの東インド会社に当たる新大陸領土全域を網羅・経営する会社の独占権を取得(25年ごとの契約)。開拓事業を始めますが、実業よりも経営の方に重点があったようで投機的な西方会社の株取引が盛んになりました。ジョン・ローが口八丁手八丁で西方会社の株を売り飛ばしまくったということのようです(ワイは学生の時、そう聞いた)。ただし西方会社と言ってもただの町工場とは違い、事実上の巨大国策会社であり新大陸植民地の開拓(収奪)事業だったので会社の株も飛ぶように売れたわけですし、同時にこの巨大会社がやがて中国などの他の植民地会社を吸収合併して「フランス東インド会社(Compagnie française des Indes Orientales)」となり、インド会社はさらに王立銀行(Banque Royale)をも取得し超巨大企業へと変貌します。わすが2,3年の間のことです(1716年Banque Générale→1718年Banque Royale。1719年にはCompagnie française des Indes Orientalesの傘下)。

    紙幣化によって経済安定+インド会社の株、爆売れ…と良いことだらけだったのですが問題も残っていました。インド会社の株が売れまくったために民間銀行からカネ(紙幣)がなくなり、ここにBanque Royale(中銀に相当)が資金を供給し続けねばならなくなり、紙幣の乱発と同じ結果になったのです。加えて王宮の偉いさんども(バカども)の金遣いの粗さや賄賂の悪習、貴族たちが持っていたルイ14世時代までの(戦時など各種の)債権の価値が暴落していたために「カネくれー(ꐦ°᷄д°᷅)💢」みたいなイヤな流れになり、貴族や偉い連中の「もっとカネ(紙幣)刷れ!」という圧力を受け、これらの理由から当初の「国民資産以上の紙幣を発給しない」という大前提が守れなくもなりました。挙句、多額の政府債務も残ったまま(貴族や金融業者などの金持ち連中が持っていた)。

    通貨供給量が増加し、しかも政府債務は残ったまま…というインフレで国家破綻しそうな苦境に追い込まれたジョン・ローは現代に通じる「奇策」に打って出ます。「債券の証券化」です。
    フランスの王室債務(≒国債)でインド会社の株式を購入できるようにしたということです。これは債券で株式を購入できるというよりも「債券という負債を株式という資本に変えられる。それも国家的規模で」という初の試みにもなりました。この結果は劇的で、フランスはルイ14世が溜め込んだ10数億ルーブルのほぼ全てがインド会社の株式に転換。政府債務はほぼゼロになり、資金供給がなされたためにますます株バブルが発生。株価は当初は500リーブレだったものが10,000リーブレに高騰。また通貨供給量もインド会社国策化の前の4倍にもなり庶民層までもが株を買ったり、外国人投資家がわざわざフランスにやってくるということが発生したそうです。こうして好景気がさらなるバブルを呼び…だったのですが、このカネがインド会社の実業に流れることがなく単なるペーパーカンパニー化していたことから「ミシシッピ開拓で金・銀など天然資源がザックザク&植民・移民でますます儲かる…」という「実際の仕事」を全くしていませんでした。そのためこのインド会社を巡る投機騒ぎは本当に単なるバブルで終わり、1721年には破綻します。バブル崩壊です。多額の戦時債務等を背負ったフランス政府に対し、ジョン・ローの提言により硬貨改悪を辞めて紙幣発給。これにより経済が安定し、インド会社という巨大国策プロジェクトを動かして好景気→バブル化したものの実業が全く追いつかずに破滅…という複雑な展開を見せたのがミシシッピ・バブルでした。

    これにより多数の資産家が破滅し、庶民は溜飲を下げたという話も伝わっています。反面、債券の証券化に際しては、もともと債券には金利がついていて、この金利分の利払いを保証していたため(なので手持ちの債券を紙幣に変える気になれた)この利払いの支払いが延々と1790年代まで続いたそうです(革命政権が支払い放棄。現代だったらテクニカルデフォルト案件)。またジョン・ローは失意のうちにベネツィアで客死しています。インド会社はその後の新大陸史を見れば明らかでアングロサクソンの影響下に入り、主にハイチを中心とした地域の植民地化の仕事を請け負います。またインド会社はBanque Royaleという中銀を飲み込んだだけでなく政府債務を引き受けた事もあって(当時のフランスで一般的だった)国内の間接税徴税権も手中にしていたのですが、これも破綻と同時に旧態依然とした徴税請負制に戻りました。

    政治的な総括としてはこんな感じになるかと思います。まずフランス革命の遠因になったと言われていますが、ワイ的には必ずしもOuiではなく続く15-16世の頃の宮廷内の腐敗による組織上の問題からフランス経営が行き詰まったと考えるべきでジョン・ローのせいばかりではないと思います。またジョン・ローがフランスでは悪逆非道な狂人扱いで国家を破滅させたと考えており、それは現在のフランスの財政政策にも影を落としています。確かに大規模国家国家完全バブル破綻の実例なので苦い思い出でしょうけど、しかしこれもワイに言わせれば「効率よく管理すればなんとかなったはずだ」ということです。つまりこのコラムで良く出てくる「債券の証券化」という偉大なアイディアです。もしフランスの東インド会社がまともに実業に精を出し、イギリスのインド経営を担った英国インド会社のような有能さがあれば結果は全然別だったろう…とも思うのです。

    実はこれがワイの考える「国家破綻を抑止する切り札」ではないかということです。ワイがこのコラムで「日本は絶対破滅しない」というのは、この「債券の証券化」を事実上、実行しているからということに気づいたからです。国債整理基金特別会計のことです。多額の政府債務を日銀などが引き受け、この時に溜まった国債を国債整理基金特別会計という「現代のフランス東インド会社」の中に繰り込み、日本国債をダミーの投資会社などに(現金とともに)貸し与えるor株式に転換し、このダミー会社が国内外の投資によって莫大な利益を得て政府に還元する…という、まさに「債券の証券化」を実行しているから破綻しないのだということなのです。ジョン・ローの時には「集めたカネを確実な投資に回す」という知恵と有望な投機対象がなかったから失敗したのだろうと思うのです。ジョン・ローは300年ほど早く生まれた天才で、環境が整っていたら「偉大な経済学者」となっていたように思います。ジョン・ローがもし今の日本を理解したら、何ていうんでしょうね? 興味がありますね(^^)

  • そういう意味では、アニメの通り、2200年のテロンでは、日本人が中心にいたからこそ? 国家破たんを免れることが出来たんでしょう……と思いたいですね。

    作者からの返信

    全くうれしくない話なんですが、2022年までの状況を見てみると、新コロ→ウクライナ紛争という常軌を逸した突発性イベントを鑑みるに、日本以外の国が(日本よりも遥かに優位性があったにも関らず)自滅への道を必死になって歩んでいるような気がします。「キミら、気でも狂れたんか??」と??

    下手すりゃ日本一人勝ち(爆
    しかし焼け野原に一人生き残っても、寂しい以上に苦しいのではないかとも…(๑¯ω¯๑)

    このコラムを書いたときにはまだ2018年位だったような気がします。あれから4-5年。わずかな年月なのに、もう手が届かない遥か昔の幸せな時代だったような気がしてきましたよ。

    これからどうなるんでしょうね…(๑¯ω¯๑)?
    ワイにもわかりません…