§2-12・【補足】第二章のあとがきとして…文明の歴史は『財政破綻』と『高インフレ』のみの歴史 ←うれしく無いわ(ºㅁº)!!

皆さん、お付き合いくださいましてありがとうございます。

2199年のテロンが、たとえガミラス戦役に生き残ったとしても莫大な国家債務を抱えて破綻するしか無かった…という話をしました。

この原因は『国力の限界を超えた、対異星人戦争』の結果です。しかしガミ公との戦争なんて物事の本質ではないのです。テロン人は2200年に『生き残った』はずなのに、『いいや! テロンは死んでいる!』と言い切るには理由があります。



人類の文明の盛衰を丹念に調べてみると驚く事実に気が付きます。

一つの文明や国家が破滅する理由は『財政破綻』と『高インフレ』のたった二つしか無いという真実です。

それはすなわち『国家の破滅は単なる通貨的現象の結果で説明できる』ということです。


例外はたった二つで、戦争に敗北して植民地になったり絶滅した場合と、ペストや天然痘のような大規模感染症(パンデミック)の二つだけです。これは敵が勝手に他からやってくるので、まあ、ある意味どうしようもないですね…


  ※     ※     ※


例えばルイ16世時に勃発したフランス革命を見てみますと、彼以前の治世ルイ14-15世時の対外戦争と国内外の経営の失敗による財政破綻と庶民層の高インフレによる暴動の結果と考えられます。


別の例を上げれば日本の江戸幕府倒壊がそれに当たります。財政破綻しかけた幕府が1830年代の前後から行った一連の貨幣改悪が原因で、金銀の含有率を下げた悪い貨幣を鋳造したものの、


「金|(銀)の含有量が半分くらいなら、倍よこせや(# ゚Д゚)!」


…みたいな感じで大量に市場に出回ったため、通貨インフレ(通貨が増えるとインフレが発生する)が起こり、庶民生活は破綻し、時にええじゃないかみたいな投げやりな騒ぎや打ち壊し、挙句、政権崩壊と明治維新を招いた…というのが真実です。財政破綻しかけた幕府の通貨的失策により、高インフレが発生して本当に破滅したのです。


ガイジン(=フリゲート艦オリバー・ハサード・ペリー級に名を残すペリーの弟・マシュー・ペリー)の、呑気な四隻の日本旅行外輪船の旅…など、実はなんの影響も無かったのです。なぜならそれ以前に英国やロシアなどの艦が日本にやってきて、時に火を吹いたりしていたわけで(その対策として1825年異国船打払令が出ている)、何もサスケハナ号が来寇したことが最初ではないわけで、そもそもたった四隻の装甲艦でひっくり返るような脆弱な国では無いからです。まるでたった一隻の野蛮人の戦艦に、まるごと焼かれるようなマヌケなガミラス帝国のような、そんなブザマな…(ry

あれ…ಠ_ಠ;??



どちらも「民間人の経済活動が活発になりブルジョワ層が旧来の支配階層に抵抗して革命を…」みたいな事を歴史の教科書で読んだかもしれませんが、そんなのは「共産主義的階級闘争論に洗脳された左翼の落書き」であって、本来、教科書検定で通すべき内容でさえ無いのです。真実は違います。


『財政破綻+高インフレ』の組み合わせが総国力を超える程の規模になった時、旧体制が吹っ飛び、時代の変革がなされる(可能性が出てくる)のです。他はありえません。

文明の展開と終焉は究極、『インフレ』という現象でのみ説明できます。


そもそもブルジョワ階層は多くの場合、支配階層と癒着していたかカネを貸していたか、下手すれば自分たちが貴族になったり貴族のような豪華な生活を営んでいたりしたエリートであって『革命家』では無かったからです。


「連中にカネ貸していたのに何でクビ、落とそうとするの…( ・᷄д・᷅ )?」

っていうか革命時、金持ちや金融業(ユダヤ人等)が結構焼き討ちにあってるじゃないですか? 庶民層はブルジョワを味方だと思っていたのではなく、ブルジョワは革命後に事実上の支配層に『カネを持っていたから、なれた』のです( ̄∀ ̄)


それどころかルイ15世の時代には五回もデフォルトを起こし(新大陸植民地バブル等)、貴族たちの多くが破産するという状況になってますが、この時には市民革命は起きていませんよ。

そもそも一つの国家が断末魔を迎える事は『殆どありません』。大抵は持ちこたえます。ルイ15世の時のように五回もデフォっても生き残るのが普通です(ただしこの事例は現代的な国家には当てはまらない旧体制であるので過度な強調はしないつもりです)。デフォルトは現象に過ぎず、決定要因ではありません。高インフレも同じです。終熄すれば良いのです。


もう一例、あげます。ロシア革命とソビエトの崩壊です。

教科書的には、庶民が第一次世界大戦と増税に耐えかねて革命を起こしソビエトを作った…と書いてありますが、正しくはこうです。


莫大な戦時債務を増税で補うしか無かった帝政ロシアでは、戦争経済体制への移行により物資不足が発生。物価高(インフレ)が発生した。つまり莫大な債務と増税・インフレによってロシア帝国は消滅した…です。第一次大戦はメルクマールであっても決定要因では『ない』のです。債務とインフレによって破綻したのです。


同じことはソビエトでも言えます。ソ連は1991年に破滅しロシア共和国とその他の国々に分裂します。実際には一応、ロシアとその他の社会主義的な国家15の連邦制度を採用していましたが、事実上、モスクワ共産党の支配下にあった単一独裁国家です。破綻の理由も単純で、しかも大変ユニークです(^m^)


西側との戦争に備えた軍備偏重経済の結果、庶民生活が常に圧迫され、同時に不足する資本をなんと西側から借り続けていたのです。その額、総額数千兆円(爆)

彼らは結局、仮想敵からカネ借りないと生きていけない体制になってしまったのです。西側と戦争することは自分の血流を止めることです。死にます。つまり「ソ連は西側と戦争する気などなかった」のです。事実は逆で「西側から核攻撃を含む侵略を阻止したかった」←こちらです。


ただし、「自分のクビを〆る金貸し屋をぶっ殺してやる(# ゚Д゚)」…の可能性はあったかもしれません。

暴力的な徳政令要求ですね。とはいえ、イベリア半島全域まで共産主義化しても、もう誰もカネを貸してくれなかったことでしょう。この段階でやはり死にます。


このソビエトの破綻も通貨的に説明できます。返済不能の国家債務と物資不足の悪性のインフレにより国力が落ちたことが理由です。もっと言えば共産主義自体の敗北です。共産主義は『通貨』の持つ潜在的な能力を放棄したのが敗因なのです。『カネのない世界』は全てソビエトのような断末魔を迎えます。

共産主義に資産価値などありません。むしろこの債務を全額返済したのだから、ロシア共和国が凄いというしかありません。天然資源の出る国は幸せです。物事に動じないロシア魂にも価値があります。彼らは価値があります。


つまり一つの文明は、財政破綻(債務総額+利払い負担が限界を超えた時)&悪性の高インフレというダブルパンチをくらい、これが強烈すぎて『統治機能を失った場合』にのみ破滅します。


2200年のテロンはまさにそうなりました。ガミラス戦役で『勝った』としても、財政破綻(戦時債務)と高インフレ(物資不足)がテロンの総国力を遥かに超えていたために勝ち負け関係なく『死んだ』のです。


日露戦争後の日本が、ある意味、こうだったかもしれません。ロシアから戦時賠償をせしめるつもりが失敗し、多額の戦費負担による増税とインフレにより日比谷焼打事件(←事実上の革命騒ぎ)などの大暴動に発展しました。この時には、まだ大日本帝国には相当の余力があったために帝国は存続しました。大日本帝国が力尽きるのは1945年です。


…では、力尽きた極東最強の帝国が、どのような凄惨な結果になったか? を次章で詳しく検討することにします。


それは人類史上最悪の債務を抱え、しかも復活のための産業基盤を失った廃墟と絶望の中からの奇跡の復活の物語です。おそらく日本人以外でこれを成し遂げた民族は、もう後にも先にも出てこないかもしれません。


ただし2200年のテロンが、本来、採らねばならない道筋でもあります…

日本人以外には耐えられそうにない苦難の道のりですが…



----------

【補記】 ノベルアッププラス 2019年7月18日初出内容

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る