第三章 究極の破局から生き返った或る国家の物語〜無敵国家日本

§3-1・日本の戦後復興とは、戦時債務を精算する作業 ←実はたったこれだけ

§3-1-1・人類初の試み〜莫大な債務を返済した国家がとった方法論

 これまで我々は、21世紀における日本という国が、経済力では世界第三位であり続けている強さの理由があるということ、しかも意外なほどタフな国家であるということを論じてきた。

 そして明日、ガミラスによる突然の日本侵略でも発生しなければ、対GDP費200%になるという国債の負担『だけ』が脅威となるだろうという話しを進めてきた。


 とはいえ、仮にガミラスが地球侵略して来たとしたら、実のところ、2199年でも2018年でも大した違いなどないのだ。イスカンダルのスターシアの目にとまるかどうかだけが重要なのだから。BBY-01ヤマト以前の地球製宇宙戦闘艦など、役に立たないという意味では『装備していなかった』とほぼ同じだからだ。宇宙戦艦など一隻ももっていない現在の我々と、所詮、同じということだ。

 別の言い方をすれば、2018年の日本にガミラスが来寇して来たとしても、結果は同じ。180年の技術上の進化など、ガミラスを前にしては何の意味も持たない。

 よって2019年に『次元波動エンジン』の艦を、海上自衛隊の護衛艦をベースに作ってイスカンダルへと送り出したとしても、結果は何も変わらなかっただろう。その宇宙艦が護衛艦初の『やまと』となるか、ブルーノアと名乗るかはともかくとして・・・


 ということは、我々現在の日本にとって深刻な脅威というのは、(世界の他の国々が直面している)戦争や内戦ではなく、地震などの大規模自然災害を除けば『国債の債務負担だけ』ということになった。


 そして国債は『ただの債務ではない』のであり、戦費のような『生産活動に必ずしも大規模には貢献しない公共事業』とは異なり、『国富を増やす』ための重要な原動力でもあった。国家の産業の増進を図るためには、避けて通ることの出来ない『負の遺産』だったのだ。やるしか無い結果、蓄積する避けようのない負債ならば、逆にこの債務を消す方法さえ見つかればよいはずだ・・・という単純な結論に至るはずだ。


 ということは、莫大な国家債務を消滅させた事例を検討し、現在と未来への羅針盤とすればよいということになる。

 それも究極の破滅を経験し、人類史上有り得ない破局からの復活・・・であれば、なお一層よい。きっと人類にとっても役に立つだろう。


 その最たる世界的な事例こそが1945年の日本だ。別の言い方をする。『不可能なほどの莫大な国家債務を消滅させることの出来た唯一の国』ということだ。この過去こそ、未来への希望だ(正確に言えば『地獄の門を開いた』ではあるのだが・・・)。しかも近現代史に置いて、これほど詳細な記録が残っているのは、この一例しかない。他の国は自国の政権与党(つまり政府)の失態を、これほどまでに赤裸々に記録することはないからである。後々の非難を避けるために、だ。


 しかし、これがとてつもなく膨大で、またその都度、長い説明を要する項目のオンパレードになってしまった。というのも、世間で言われている内容とは少し違う結論を導きたいからだ。無論、その結論が『正しい』と信じるから、長々と記述するのではあるのだが・・・。

 なので、まずは概略を説明し、その後、改めて詳述させてもらいたい。概略は以下のような感じだ・・・


   ※     ※     ※


 第二次大戦時、帝国政府は莫大な戦費を賄うために莫大な量の戦時国債を発行した。その額はGDPのおよそ8倍以上。国家予算の70倍を越えた。

 この負債を国民の税金を使って償還することとした。

 そのために『財産税法』という『預金税』を導入した。

 この預金税を実施するために『銀行の預金封鎖』と『新円切り替え』を行った。これらは基本的には私人への補償だった。全債務のおよそ45-50%に相当した。


 一方、戦争に協力した各企業・銀行などの法人に対しても補償しなけばならなかった。

 ところがこちらは『戦争遂行の原動力』と見做みなされたために、GHQの圧力で補償することができなくなった。

 帝国負債のおよそ半分にも及んだその負債は、そのまま各企業・銀行を困窮に追いこんでしまった。日本の産業復興の足枷あしかせだった。

 そのため、国税を使って救済した。


 この時期はまた物不足・生産財不足・資金不足から年100%以上、トータルで300%以上の途方もないインフレに見舞われ、国民は困窮を極めた。この時期、日本本土の復興を目指して鉄鋼と石炭産業に集中的に資源を投下する『傾斜生産方式』が採用されたが、効果は不明。つまり国策産業政策が上手く行ったとは言いがたかった。


 むしろ激しいインフレと新円切替により債務が減少した事と、金融・企業の救済策の功奏が大きかったと思われる。戦後の法人への補償のことだが、特に金融面での救済は大きく、銀行が債務超過から抜け出すことが出来、その後の自律的な高度経済発展を遂げた。


・・・という流れだ。

 そして筆者が述べたい「世間一般とは違う結論」とは、


1.戦後の苦しい時、誰もが生きるか死ぬかの時に情け容赦無く引き剥がした血税を、国民の反対など『Out Of 眼中』で金融関係の救済に突っ込んだこと

2.実は債務の減損には、激しいインフレと通貨切り下げが功を奏した、ということ

3.石炭というエネルギーを国内で賄うことが出来たこと


・・・この三点のために戦後復興が可能だったと言いたいのだ。勿論、主に日本人一人ひとりの凄まじい負担の上におこわなれた返済であり、また大日本帝国の頃にかなりの技術の蓄積があったからこそなのは言うまでもない。もともと、この国は人的リソースがあり、また国家・企業に技術力があったのである。なければこの奇跡はムリだ。実際、これらが足りなかった韓国はムリだった。また同様の問題を抱えていた中共は1980年代以後、外資導入という『ガイジンを招き寄せる』という逆転の発想で乗り切った。特に中国は過去100年に渡って欧米や日本から植民地扱いされていたのに、今度は自分から彼等を招き入れたのだ(狙いは主に日本だったが)。

 一方で朝鮮戦争の特需とか傾斜生産方式といった国策産業振興策は、多分、ほとんど何の役にも貢献していない。その話しもするつもりだ。


 そこでまず、当時の日本がどのような状況に置かれ、どのように対処したのかを検討してみる。


  ※     ※     ※

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