§2-11・あと、日本国債務の消し方を伝授する ・・・筆者がではなく外国人が、だが(後編)
○日本は本当に公的債務問題を抱えているのだろうか?
この話しは日本ではあまりに有名で、もしかしたら一度は見たことがあるかもしれない。フィナンシャル・タイムズの2010年6 月15日付の記事だ。書いたのはエコノミストでもあり同誌コラムニストのマーティン・ウルフだ。こんな感じの内容だった。
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日本はGDP比200%を越える債務があるとされているが、こんなもん、さっさとなくすことが出来る。こうしろ。
まず日本の国債は償還期限が短すぎる。これをまず長期国債に載せ変えろ。なぜならば、長期国債は「金利が高い」からだ。金利が高いということは債務負担が大きいということだ。負担の大きい債務を減らすために、まず大きい負担に負債資源を集中させる。このため償還は15年程度に伸ばすのが良い。
次にインフレを起こす。たとえばアルゼンチン人を雇うのが良い。なぜならアルゼンチンは破滅国家で常に悪性のインフレに苦しめられている。こういう無能を雇って、インフレを最低でも3%にあげろ。当然、国民の生活は厳しくなる。しかし知ったことではない。国が楽になるし、その結果、将来は楽になる。我慢しろ。あと、現金なんかもっててもしょうがない。カネの価値がドンドン勝手に下がるからだ。だから享楽的な消費行動をとったほうがいい。特に資産価値が上がる現物を買っとけ。それに、大金持ちの方が激しく損するというのは、結構痛快だろ?
結果として3%という「悪性の」インフレ状態が実現したとする。すると国債は5%程度に爆上がりする。2018年時では0.01%ということもあったくらいだから、普通なら到底許容できない数字だ。しかしほかの条件が同じなら、残る公的債務の市場価値は40%以上も下落するだろう。金利が上がれば国債は下がるからだ。
ここで日本政府は残りの債務を、このダダ下がりした時点での市場価格で買い直す。すると公的債務の額面総額をGDP比40%が減って無くなり、残りを別会計で処理すればいい。
このプロセスは事実上の「債務引き抜き」だ。日本国から債務を引き抜いて、特別に再生機構のような、債務だけを扱う金融機関もしくは特殊法人を作って、この中に突っ込む。そうすれば日本にはもう債務はなくなる。しかも残った債務は半分程度だ。
この段階まで行って初めて日本国政府は増税と支出削減を実施し、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の小幅な黒字化を実現すべきだ。アベノミクスの最中にダラダラと増税なんかすんなということだ。
あと政府の借り入れ額は借金の借り換え分だけで充分で、債務比率は安定すると仮定出来る。プライマリーバランスの黒字に関しては、その時の実質金利と経済成長率との関係性で決めればよい。以上だ。
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・・・筆者的には「多分、正解」 m(_ _)m
彼の言い分はこうだ。
「国債の満期期間を延長し、デフレから一定のインフレに移行することで、日本は公的債務をGDP比でほぼ半減できるし、同時に経済の正常化も実現できる。中央銀行をもつ国は、債務不履行に陥る必要などない。代わりにインフレを作り出せばいいのだ。政府が低利長期で借り入れられるというのが前提となるが、巨額の過剰債務を帳消しにするのに、それほど大規模なインフレは必要ない。予想外のインフレである必要はあるが。日本では、現在の長期金利からすると、どんなインフレでも予想外のインフレとなる。ゆえに正攻法こそが解決法のように思える」と。
多分、そうだろう。
敢えて付け加えるならば、引き抜いた債務を「株式化」すればもっといいだろうということだ。2010年代後半になって、結構頻繁に使われる手段となった。つまり、かつての国債の利子を株式の配当にするわけだ。これまで述べてきたとおりだ。
国債を延々と買い直し続けるという場合には、それは永久債と同じであって、日本国株式会社の株式と同じという話しは既にした。なら、債券の株式化もまんざらありえない話しではない。
この話しは「債務を整理する」だけの話しであって、日本国株式会社解散の話しではない。会社更生法に基づかない、日本株式会社更正手続きに過ぎない。日本はこれからも生き残るからだ。
特に日本国債の90%は国内で消費されている。なので彼等を損させないようにする方法も考えたほうがよいと思うのだ。しかも国債の約35-40%程度は中央銀行が持っていたはずだ。つまり株式化は中央銀行の信用不安を減らす意味合いがあるということだ。
特に中央銀行が債務を抱えてしまうのは良くない。日銀には市中銀行が、ある一定の割合でカネを預けている。準備預金のことだが、冷静に考えてみれば、借金抱えている
株式化すれば本当の意味でも資産になるし、「株式の配当」という形でこれまで通り税金の一部が支払われる。
とはいえ、こんな手段を取れば何をやってもCDS始め、負担は大きくなるのは仕方ない、と言われてしまえば、もうそれまでだが・・・。
良いことだってある。大暴落した日本国債と日本円は当然、激しい円安を招くだろう。だとすれば輸出力は強化され、一次所得収支は爆増する。円安効果も手伝って外国人観光客が激増する可能性が高く、サービス収支も黒字化できる。
挙げ句、自国通貨を切り下げれば、多分、債務は消える。
なぜなら、「国家債務、残り500兆円」という時に、円の値段を半分にしたら「残り250兆円」に下がるからだ。
つまり「新円発行」もしくは「硬貨・紙幣の全面刷新」だ。硬貨は地金の割合を減らしたり、製造硬貨の種類を減らしたりする。紙幣はデザインを一新し、新しくダダ下がりの国債と等価交換する・・・などだ。
無論、我々市民からすれば良い迷惑だ。銀行に溜め込んでいた預貯金が半分になったということだからだ。だが、一気にやれば「あのときはひどかったね」で終わる。その後には持続的な経済成長が続くはずだ。
特にこのマーティン・ウルフの解説時、日本は厳しいデフレ時代だった。アベノミクス真っ盛りの現在とは状況が逆だ。
つまり、アベノミクスという政策は「計画倒産」ということでもあったのだ。
だから財務省関係者の人間はアベノミクスを嫌うのだ。自分が財政をやりくりしている時に「計画倒産します」という経営者を許容するバカはいない。特に日本は国内にも大量の資産を、それも現金を持っている。現金は海外の不動産とは違い、国債の下落と同様に下落する。計画倒産は、やれば日本人の現金を直撃する。
特に財務省は「日本国民の財布の中身を守る!」を自分たちの存在証明としている。
だから「増税しろ&アベノミクスは危ない&国家はとてつもない債務を抱えている」と左翼メディアをけしかけたとしても不思議はない。計画倒産まがいの経済運営を辞めさせたいとしても、その気持ちは分かる。
以前からずっと述べている通り、利払いが出来ればまずは国債を発行しても安心だ。そして利払いには税金がアテられる。だから財務官僚は増税したいはずだ。
増税すれば利払分の余力が出てくる。それは日本国の国債の信頼性をあげることに繋がる。それも、そんなに大々的でなくてもいい。利払分くらいでいいのだ。これが国債の負担のために国家が破産することを避けるための方法なのだから。
しかもアベノミクスはインフレ化政策だ。インフレは庶民の日常生活に打撃を与える。デフレの方がまだマシ・・・くらいに考えたとしてもおかしくない。
しかしデフレ国家は天国ではない。我々が長く苦しめられてきた、賃金が上がらないという不満だけではないのだ。
デフレが続けば国家債務は延々と減らないままだ。
インフレは通貨の価値が下がること、ひいては国債の価値が下がることだからだ。ならインフレは、それだけで国の借金が減少するということなのだ。
無論、デフレはこの逆だ。
実のところ、累積債務はインフレによって消すしか無い。それは持続的な経済成長であるべきだ。アルゼンチンのように経済成長が見込めないインフレは、真の意味での敗北だ。フォークランド紛争で負けた挙げ句、買った国の人間に「無能」呼ばわりされるのがオチだ。
つまり日本の本当の問題は「借金デカいが、それ以上に資産・特に現金資産がデカい」ことだと言えるかもしれない。
インフレになることは、借金以上に大量に抱え込んでいる資産、それも半分が現金資産である日本国民の資産が勝手にドンドンと消耗してしまうからだ。これはこれで実にアホらしい・・・。
もし全員が現金を持っていない状態だったら、この手を使っていたかもしれないということだ。逆に言えばカネを持っているのならば、海外資産(特に不動産)に突っ込んで、あらかじめ逃しておけばいいということかもしれない・・・。
ただし、日本が本気で債務を抹殺するというのなら、そのやり方は既にあるということだった。
恐ろしいことに、実はこういうやり方を実際に採用した国が幾つもあるのだ。
典型的なのが戦後直後の日本だ。次にその話しをしようと思う。
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