§8-3-3・負の所得税のメカニズム3 ←所得税率を変更するだけで社会福祉や公的扶助と同じ効果を期待できる

『負の所得税』は、所得税率を変更することで社会福祉や公的扶助と同じ効果を期待できる。これも大変重要だ。

従来の生活保護やフードスタンプに代わる制度だということだ。


単純に『働けない世帯』に直接、『負の所得税』を適用するだけだからだ。わかりやすく言えば「国家が最低賃金を提供する」ということだ。しかもこのカネは自由に使える。「負の所得税を払った結果」だから国民の義務を果たしているからだ。結果として『手元に現金が国から支給された』に過ぎないという解釈だ。道徳的な問題など一切ない。


しかしこういう疑問も湧いてくる。「その金額では足りないではないか?」と。

例えば糖尿病患者だ。彼らには人工透析が必要だったりする。こうした人たちの中には『全く働けない』という人たちも出てくるかもしれない。他にも重度の身体障害者や精神病患者など、そもそも「社会復帰が困難」という人たちもいる。


しかし心配は無用だ。『負の所得税』の税率を『可変』にするのだ。


重度の身体障害者や精神疾患者などは、病院などでの罹患証明書の提出と確認の代わりに『負の所得税』を、普通のニートに比べて増やせばいいだけのことだ。たとえば重度身体障害者には『負の所得税を200%にする』とか、軽度の知的障害者は負の所得税率を110%くらいとか、精神病患者で投薬などで改善が見られる者たちはより低く80%とか、怪我などをして働けなくなったものは100%とか、自由自在に可変税率で対応すればよいだけなのだ。


それこそ『累進課税制度』にすればいい。より貧乏な人たちにはより負の所得税率を上げたり、全く働けないほど重篤な障害を持つ人たちには、その症例に応じて負の所得税率を上げればよい。勿論、同時に『租税免除額』を20万円から22万に引き上げるなどの措置もおこなえばなお結構だ。


同じことは生活保護者だけでなく、たとえば母子家庭や老人にも適用できる。

たとえば子供のいる家庭で離婚すると、女性が子供を引き取る場合が多い。すると残念な現実として、女の労働賃金が男に比べて低く押えられているために(←性差別)急激に貧困層に陥る事例が多発している。日本などでは女性の労働所得は男の約六割、アメリカにおいてさえ75%に抑え込まれている。


当然、男女における賃金格差があるのは大問題で、『同一労働同一賃金』が徹底されていないのは雇用主の問題だけでなく、社会の問題だ。なぜなら、2020年代の日本においては母子家庭に対する公的扶助の形で『政府予算=税金が投入されているから』だ。元ダンナが母子家庭にちゃんとカネを払わないがために、国全体がその負債を追うことになるのだ。


そんなの断じて( ゚ω゚ )つ『お断り』だ!


これに対しては、元ダンナに対する懲罰的徴税や、資産没収や投獄を含めた厳しい態度で臨まなくてはならない。誰かのセックスの結果を、無関係の他人に付け回すなど許しがたいからだ。我ら新自由主義者は忘れてはならない。我らにとって国家は『愛すべきものでは無い』。単なる道具だ。当然だ。国は『自由市民の集まり』に過ぎないからだ。


貧富の格差の是正でさえ『貧者という個人の自力救済の支援』でしかない。誰かの負債を他人が背負う制度はファシズムであり、奴隷制だ。個人は国家に隷属すべきではないし、してはならない。


国家は単なるツールで留めるべきで、国家の本質は『安定したエネルギー政策と金融の管理』であって、そのために中銀が存在している。中銀はインフレと、自国通貨の価値を守るのが仕事だからだ。同時に国家が『よりまともな』税制を敷けば、国民経済のよりマシな結果が導き出せる。GDPが国家の富を表すのであれば、それは『時の政府の運用実績』だ。この運用実績には歳入と歳出の効率性も当然含まれる。よい税制にしなければGDPの向上は望めない。


負の所得税によって貧乏人にカネをバラ撒く…というのは決して無駄ではないし、無意味でも浪費でもポピュリズムでもない。基本は『嫌かもしれないけど頑張って仕事したら、使えるカネが増えますよ』というシステムだ。そして『全く働けない』場合でも、『なら最低限+αの消費活動をしろ。他の誰かのメシのタネになれ』という、あくまでも経済成長メカニズムに沿った施策に過ぎない。

ただし、これらはまた別の問題。改善が進むまでは現実の方で打てる手を打たねばならない。


その一つの方法がこの『負の所得税』だ。母子家庭に対しては、負の所得税率および租税免除額を手厚く配慮したらよい。


母子家庭は戸籍で判る。これを元に負の所得税率を他の『生活保護支給対象世帯』よりも手厚く配分し、また租税免除額を引き上げることで税控除枠を拡大するのだ。こうすれば、頑張っている母子家庭の母親の可処分所得が増大する。

ママが子供のために働いて、月に15-16万円程度稼いだとしても、(他の人ならば課税対象になる場合でも)国からの補助金(←負の所得税の還付金)と租税控除枠の拡大により『無税もしくは超低額の税負担』で済むからだ。


なにより国からカネをもらったとしても『何に使おうがガタガタ言われる筋合いなどない』制度だ。だから母子家庭がカネ貯めて旅行に行ったり、月に一回くらいは回転寿司屋をぐるぐる回ってハシゴしたり、なんならホストクラブとかに行って息抜きでもしたらいい。


ただし借金すんなよ。月に二度も三度もカネ、くれてなんかやらねーからな

今度は自己破産だからな…(  ̄ー ̄)y-~~


全く同じことが年金生活者に相当する老人たちにも適応できる。

老人は年金に代わる『負の所得税+租税控除枠』の恩恵で現金を手に出来る。たとえば家のローンが残っているから働かねばならない老人でも、課税対象は他の層に比べてより緩やかになるので、身体の老いなどによってあまり働けなくてもやっていけるようになるはずだ。


これらもまた負の所得税の偉大なメリットだ。障害者だけでなく母子家庭、老人などにも幅広く対応できる。つまり障害者公的扶助・母子家庭支援・生活保護受給者救済・介護世帯給付金・年金制度の代替に使えるのだ。


ということは、現行のあらゆる公的扶助、年金を『やめるべき』という結論が出てくる。

すべてこの『負の所得税』に一本化するのだ。


税収入(政府歳入)が(負の)所得税率と租税免除額の二つで決定されるように、税支出(政府歳出)もまた『負の所得税』に一本化する。この負の所得税による可処分所得額の決定だけで、現在のあらゆる公的扶助・年金と同じかそれ以上のサービスを、より効率よく無駄ガネ使うことなく執行できる。

当然、『公的扶助・年金・介護』の支出もまた、『負の所得税率』と『租税免除額』の、たった二つの単純でシンプルなパラメーターを変更するだけで実施可能な構造だから、これまたスピーディで効果が高い。


現在の日本のように年金・医療介護・母子家庭・生活保護世帯・障害者世帯等で縦割りになっている行政組織もシンプル化できる。ということは無駄な官僚機構をスリムが出来、これがまた政府の無駄な支出を抑え、その分のカネを社会的弱者のために回すことだって出来るのだ。官僚機構のリストラと行政改革にも繋がる良い制度なのだ。

無論、心配する向きもあろう。「この税制だけで本当にそんなことが可能なのか?」


可能だ(  ̄ー ̄)y-~~


なぜなら…

「今までと同じ金額のカネをかき集めれば、それでいいんだろ (  ̄ー ̄)y-~~」


…だからだ。

最低でも、これまでと同じ税収入を『負の所得税』でかき集めれば良いではないか? それだけ。

残念なお知らせだが、負の所得税は『公平でわかりやすく無駄がない』とは言ったが、『税金が軽くなる』とは一言も言ってない(爆)。いままでの『給与所得』『利子所得』『配当所得』『事業所得』『不動産所得』『退職所得』『譲渡所得』…みたいな面倒くさい細かい区分を辞めて、この税制の『総所得』という科目一本に絞り込み、その代わりに個人のあらゆる金融・動産を調べ尽くし『絶対に逃さない』ように工夫すればいいだけのことだ。そして、これこそが国家の仕事そのものだ。


また当然のことながら、『国民健康保険料』と『消費税』分も廃止される。こちらの分も『負の所得税』に含まれるからだ。今までのように別途、支払い用紙が自宅に届いたりすることはなくなる。またお店で『こちらの商品は8%』『こちらの商品は10%』みたいな煩雑でわかりにくく、しかも実際に取り違えること多数…というような馬鹿馬鹿しい消費税計算も必要なくなる。これらは廃止して『負の所得税』のみに一本化するのだ。


国民健保などの国民健康福祉の増進に必要な予算は、この『負の所得税』と法人税、そして(やめるべきではあるが、やむなく残ってるのなら)対外関税など他の税制との組み合わせによって、これまでと同額かそれ以上の徴収を目指す。加えて、20世紀の中頃から突然、世界のトレンドになった『消費税』なる、手間暇ばかりかかり脱税の温床と市場規模の縮小などの悪影響しか出てこないワケ判らんクソ税制はとっととやめる。


要は、いままでと同じ金額もしくはそれ以上の税収入を『より効率よくよりシンプルに、より平等でより公平に、しかもより無駄金を使うことなく』国民から収奪するための税制…それが政府にとっての『負の所得税』のメリットなのだ。



だったら、いますぐ各国政府も導入したらいいじゃん (  ̄ー ̄)y-~~



…そういうことなのだ。為政者にとっても都合がよい税制だったのだ。

貧乏人を救済することの出来る税制でありながら、持ってる奴らからより沢山ふんだくることが出来る累進課税制の効果が期待でき、しかも単純で公平で分かりやすいのだから『より良い税制』に決まっている。そしてこの『単純な収奪』すなわち『総所得からの天引き』という究極のシンプルさこそが、これまた負の所得税のメリットとなるのだ。


そこで次回は、全ての個人金融資産をたった一つの『総資産』としてまとめ、これに課税するという超シンプルな課税方法のメリットについて詳述する。



            【 次回に続く 】

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