§8-3-2・負の所得税のメカニズム2 ←『控除額』と『所得税率』の二つだけで全てが決定出来るシンプルかつ強力なメカニズム

○控除額、所得税率が自由に変えられる

 →政策運用上の柔軟性が高まる


これがとても大事だ。この税制はシンプル故に『柔軟性に優れる』システムだ。税徴収運用上、間違いや問題が生じた時、すぐに修正できる柔軟性を備えているということだ。例えば上述のテロンで、税収入の増加が必要な状況になったとする。例えば、暗黒なんちゃら帝国の強そうな戦艦が地球領域をウロウロし始めていて、これに対して国防費の増額が必要となった…とする。


この場合、例えば「租税免除金額を下げる」ことで、簡単に税収のUPが計れる。例えば控除額を月10万から月6万に下げるとかだ。これだと全員に一律引き下げ分相当の増税となり、低所得層の負担は増すことになる。試しにやってみよう。


【租税免除額を6万円に引き下げた場合】

○南部君 ←可処分所得は6万円

 所得0万×所得税率0.5-租税免除額6万 → -6万(国からの補助金が4万円減)

○山本さん←可処分所得は9万円

 所得6万×所得税率0.5-租税免除額6万 → -3万(同上)

○加藤君 ←可処分所得は11万円

 所得10万×所得税率0.5-租税免除額6万 → -1万(同上)

○斎藤君 ←可処分所得は24万円

 所得20万×所得税率0.5-租税免除額6万 → 月に4万円の課税(4万円負担増)

○藤堂早希さん ←可処分所得は21万円

 所得30万×所得税率0.5-租税免除額6万 → 月に9万円の課税(同上)

○古代家 →世帯可処分所得は47万円

 所得70万×所得税率0.5-租税免除額6万 → 29万円の世帯課税

 →ここから子供一人分の負の所得税分(-6万円)を差し引いた計23万円の課税

 →税金負担は一人あたり4万円増税×古代進と雪さんの二人分の8万円の増税

○土方家 ←可処分所得は156万円

 所得300万×所得税率0.5-租税免除額6万 → 144万円の課税(4万円増税)

 


…このことから租税免除額を引き下げた場合、全所得世帯において引き下げ分=増税分となることが判る。なので租税免除額を引き上げた場合、貧乏人には国からの補助金が沢山貰える=事実上の負の所得税減税となり、金持ちにも減税になる…ということだった。



  ※     ※     ※

  



とはいえ「貧乏人や、心を痛めているニートからむしり取るのは社会福祉の観点から問題がある」という反対意見が出た時には、今度は速やかに助成策が…たとえば(負の)所得税率をUPして負担軽減を図る、とかも可能なのだ。そこで前回のメンツと状況を踏まえて、ヤマトの諸君の税率を今までの50%から一気に80%に税率を上げたとする。やってみる。


【税率を80%に引き上げた場合】

○南部君 ←可処分所得は10万円

 所得0万×所得税率0.8-租税免除額10万 → -10万(控除総額は変わらず)

○山本さん←可処分所得は11.2万円

 所得6万×所得税率0.8-租税免除額10万 → -5.2万(補助金は-1.8万円減)

○加藤君 ←可処分所得は12万円

 所得10万×所得税率0.8-租税免除額10万 → -2万(-3万円減)


----【 ↑↓以下は課税対象↓↑ 】----


○斎藤君 ←可処分所得は14万円

 所得20万×所得税率0.8-租税免除額10万 → 6万円の課税(可処分所得-6万円減)

○藤堂早希さん ←可処分所得は21万円

 所得30万×所得税率0.8-租税免除額10万 → 14万円の課税(月9万円の増税)

○古代家 →世帯可処分所得は34万円

 所得70万×所得税率0.8-租税免除額10万 → 46万円の世帯課税

 →ここから子供一人分の負の所得税分を差し引いた計36万円の課税(21万円の増税)

○土方家 ←可処分所得は70万円

 所得300万×所得税率0.8-租税免除額10万 → 230万円の課税(90万円増税)



…となる(爆)。これを解釈すると、(負の)所得税率を50%→80%に爆増させたために全世帯、特に高所得層が圧倒的に税負担が増えたということだ。また課税対象枠が増える。より貧乏人からも徴税できるのだ。ただし生活保護相当の「10万円以下の所得層」だけは「助かる」のが良い点だ。ニートの南部君は税制改正前と比較して補助金総額は減らなかった反面、古代さん家は月約21万円の増税、土方さん家に至っては月に約230万円の負担増となることからも判る。要するに税率が一律だったとしても(累進課税制度でなくても)金持ちから相当ふんだくれるし、貧乏人の負担は少なくて済むのである。


ということは、


・租税免除額(=社会福祉の割合と政府歳入支出のコントロール)

 →上限を下げれば全世帯一律増税。所得の低い層への政府支出が減らせる。

 →上限を上げれば全世帯一律減税。より手厚く低所得層への福祉が行き届くが直近の租税収入は減るので政府負担は増える。


・所得税率(=累進課税機能のコントロールが可能)

 →税率をDownすれば庶民の税負担が減り、所得が増える。

  ただし直近の税収入は減る。

 →税率をUPすれば、より高所得層の負担が増える。

  ただし政府は財源確保が出来る。


…単純にこんな感じだ。

ということは、景気対策や税制改革によって国民の生活を救済したいor経済成長政策を行いたいという場合でも『租税免除額』『所得税率』の二つのパラメーターをいじるだけで済むのだ( ̄ー ̄)bグッ!


  ※     ※     ※


たとえばテロンのヤマッテの国のように、過去20年に渡って悲惨なデフレが続いていた時、どうするか?

もし景気回復策を実施するというのなら、まずは国債の増発と公開市場操作によって市場に大量に通貨を供給する。これはリフレ的金融政策であり、全ての政策は『金融政策→財政政策』の手順を踏んで行う。この逆の手順だと金融財政政策自体が失敗することを経験上、判っているからだ。まずは金融政策だ。これは鉄則だ。


その後で『財政政策』の一貫として公共投資を行いつつ、同時にこの『租税免除額』をUPし、逆に『(負の)所得税率』を下げるのだ。こうすることで国民全世帯対象に減税効果が現れ、広く投資と消費にカネが行き渡る。そもそも貧乏人は「ハデにカネ使うから貧乏になる」のであって、奴らにカネを流し込めばバンバン派手に使ってくれて、それが誰かのメシのタネになるはずだ(←これはケインジアンの言う所の『乗数効果』)。



もし逆に、好景気でバブルっていたらどうするか?

逆に景気が過熱したり、不動産バブルなどで金融負債や国民経済が混乱したら、この逆の手順を行う。政策金利を上げたり、公開市場操作によって中央銀行が資産(=国債等)を市場に売り払うことによって市場から円を回収するのと同時に『租税免除額』を下げ(=一律増税)、『(負の)所得税』を上げる(特に高所得層負担激増)。特にバブルってる時…つまりインフレが長続きしている時には「インフレの粘着性」が問題となる。これは一旦、高インフレが続くとインフレはなかなか終熄しないという経験則だ。この理由はいくつかあるが、かなりの部分で高所得層のインフレヘッジ行動が原因となっている。


インフレとはカネの価値が摩滅していくことだった。つまり「物価高」である。ということは昨日より今日、今日より明日の方が物価が上がり、同じ金額で買える量が少なくなるということだ。だったら今すぐカネを使ったほうがいい。明日になったら物価高で買えなくなってるかも知れないからだ。明日買うならば今日買うほうがよく、夕方買うなら朝買ったほうがいいくらいだ(爆)。この「勝手に価値が減じていくのだから、後生大事にカネを持っていてもしょうがない」ということから生じる「カネ→モノ」という物品購入行動のために消費がますます旺盛になり、インフレ(成長)が長く続くのである。

しかも高額なものの購入の方が何かと都合が良い。というのも高額物品は転売が効くものが多く、しかも物の値段があがるのであれば、いま多少の背伸びをして購入しても転売時にむしろ高値で売買できる。さらに言えば借金(ローン)を組んで買ってもよいくらいだ。なぜなら借金もまた借りた「カネ」であり、インフレは「カネの価値が減少する」事だから「借金の価値もインフレで減少する」のである。


このため高額な物の取引がなかなか終熄せず、このカネの動きによってインフレが持続するのである。大抵は不動産である。単価が高く、販売戸数が多いために延々とインフレが持続する要因となるのだ。なお、インフレに大きな影響を与えるのは「燃料代」「食品」「人件費(労働賃金)」と「不動産」であり、特に不動産には個々人が購入する住宅の他に、家賃収入…特にテナントなどの賃貸料と商業不動産投資の二つの要素が含まれる。前者の賃貸料は個人や商店などが賃貸料を更新する場合、インフレに合わせて家賃料がバカ高になっている。この価格上昇分がインフレ要因となり、同時に賃貸契約は時期が個々バラバラなため、これまた延々と先々までインフレ込みの家賃価格設定→インフレ要因となり続ける。また後者の商業不動産投資とは、金持ちがカネを持っていてもしょうがないので証券会社などの金融商品の一貫として商業不動産を購入し、これを賃貸することで家賃収入→その一部を配当金としてもらう…というのが基本で、前述のようにインフレ時には特に賃貸不動産価格は上昇し続けるので「投資の旨味」があり、これまたインフレ要因となる。要は金持ちのせいでインフレが止まらないということだ。これは2022年以後の米国や一部のヨーロッパで見られる動きであり、こうした国は貧富の格差が大きく、金持ちがやたらとカネを持っているためにインフレが粘着しているのであった。


ならば負の所得税の税率を上げて、金持ちからカネを回収するのが正解なのだ。

累進課税制度だったら金持ちだけが負担増になるから激しい反発を受けるだろう。しかし負の所得税は基本的には全員一律課税だ。貧乏人にも同じ割合を負担してもらうことで公平性が担保される一方で、実際には金持ちからはゴッソリとカネが抜き取られる(爆笑)。


インフレとは市場におけるカネの総量がモノに対して多すぎることなので、金持ちに増税すればインフレヘッジ行動の元ガネが消滅し、インフレ抑圧が出来ると同時に国家は租税収入が増える。国債の増発を抑えることが出来、それはデフレ化なので速やかに悪性のインフレも退治できるようになるはずだ。特にバブルのときには貧乏人から超金持ちまで全員が成金になっていて、やたらと無駄にカネを使いまくるのだから、この際「カネ足りなくなって生活苦しい」にしてやれば無用な不動産投資などが抑制出来るし、政府に対しては国債の増発による公共投資などの無駄金使いを強制的にやめさせることも出来る。超低所得者は迷惑な話ではあるが…(^_^;)



景気がよくなって低所得層の数が減り、代わりに中間層・高所得層をより強化したいという状況だってありえる。特に総選挙などが近いと言うなら、ますますもってそうだろう。そんな時は『租税免除額』を下げ、同時に『(負の)所得税』も下げればいい。これで中間層・高所得層が潤う。貧乏人切り捨て政策となる。あまり良いとは言えないのだろうけど、「貧乏人への負担をもっと減らせ(# ゚Д゚)!」というポピュリズム的な流れに押された時には、こういう動きになるのかもしれない。金持ちなどへの甘い飴みたいなものだ。高所得者におもねる事で政治家はパーティを開いた時の集金力が上がることだろう。ただ実質、中間〜上級層減税を行う事で、そのカネを投資などに回すための各種政策を実施しているというのなら金融資産を国富増強に回るはずだ(ただし貧困層は少しカネが足りなくなる。気の毒だけど…(T_T)。


とはいえ富裕層なんかが、長年に渡る過酷な増税で苦しんでいるというのならば、これまた彼らをも救済すべきなのはやむを得ない。特に金持ちたちに「その代わりに国債、買って」みたいなお願いでもしてみるのがいいだろう。いわゆるMMFという投資信託商品のことであり、日本では中期国債ファンドなどというの名で流行ったものである(現在は超低金利のため、やる意味ないので消滅した)。金持ちはカネを溜め込みやすい。なのでトリクルダウンはあまり期待できない。しかし大規模な金融産業に対する規制緩和などで、株式や国債などの証券債権に対する自由化などで、より金融資本を強化したいのならば、金持ちに投資させるという政策は間違いではない。よって政策として「金持ちに沢山、カネ使わせる」という政策を実施し、その結果として国富が増やせると判断したのなら、この手を打ってみるのも一つだ。



また、21世紀のアメリカのように主に金融資産で財を成し、全国の富の半分を僅か上位10%の金持ちが溜め込んでいるという酷い所得格差がある場合、貧乏人を助け、金持ちを黙らせるしかない。これには『租税免除額』『(負の)所得税』ともに上げれば良い。これは一律で減税の後、所得のある人たちの負担は増え、しかも高所得であればあるほど実際の金額ベースで多額のカネが税金として持っていかれる。これは貧乏人…特に租税控除対象者≒生活保護受給対象層がより助かる政策だ。国が支給することになる『負の所得税』が増える事は貧乏人救済策となり、逆に金持ちからはより多額の課税があるのだから政府は実質、増税になり事実上の累進課税が執行されたことになる。中間所得層にそれほど打撃を与えず、高所得層に強烈なパンチをくれてやることが出来る。高額の課税が可能だからだ。つまり政府は、金持ちからタップリ頂いて貧乏人にばらまくというポピュリズム財政を施策でき、貧乏人が多数いるのならば次の選挙での勝率も上がるだろう…。


ちなみにそのアメリカであるが、2023年のデータによれば富裕層の実際の連邦政府への税負担率は大体35-36%くらい。中間層も30%くらいとされ、下層階級も支払いが出来る人たちは大体三割となっている。要するに、実は皆、既に一律で30%くらいの税金負担の国ということである。金持ちは様々な脱税の手段を駆使し、貧乏人は租税控除対象となってるので税金の負担額は意外と少ない。とはいえ、それでも米国は租税収入が530兆円もあるというのだから驚きで、これもアメリカの伝統である「減税=事実上の景気刺激策」+「FRBの長期国債金利2.5-3%維持」政策によるインフレ成長の結果であり、減税しても好景気の結果、租税収入が爆増する…という、まことに正しい政策の賜物だ。ちなみに福祉予算が少ないと言われているが、オバマケアは大体100兆円以上の予算があり、これは日本の保険制度の二倍の額に相当する。ただしアメリカの人口は日本の三倍であり、その意味からすれば「確かに少ない」とは言われそうだ。とはいえ、アメリカの公的福祉制度は日本に比べて圧倒的に効率が悪いことが真の問題ではあるのだが、一例として「税率が一律30%でも、国はバンバン豊かになる」という実例とは言える。あとは貧富の格差の是正にもう少し力を注ぐべきというのがアメリカの問題で、カネは腐るほどあり、カネを生み出す国力も桁外れに強いということだった。なら「負の所得税」を導入しても「いまのアメリカよりもフェアで、しかも成功する」と言えるのだ。




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これがシンプルで効率のよい『負の所得税』のメリットだ。

速やかに効率のよい政策を実現することが可能なのだ。しかも目的をハッキリさせられる。金持ちだけを狙い撃ちにすることも、貧困層を救済することも「すぐに出来る」。逆もまた可能だ。

またこの二つのパラメーターだけしか存在しないのだから、煩雑な行政手続きが不要で、しかも透明性も高い。誰かが税逃れをしてるかどうかは、その人物の『所得総額』を調べ、その後で『租税免除額』『所得税率』を確認するだけで済むのだ。より公正な社会と、金持ちや金融知識に長けた悪党を撲滅するのに貢献する。


単純な操作だからこそ、より効率的でより効果的そして柔軟でスピーディな結果をもたらすことが出来、これが政府の歳出・歳入に高度な柔軟性と効用を与えるのだ。それは国富の増加および国民経済の向上に有効かつ速効性のある政策実現を可能にする『夢のツール』だ、ということなのだ ( ̄ー ̄)bグッ!


では次に国民の受益、公的扶助に関してのメリットの話に進もうと思う。



            【 次回に続く 】

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