§8-2-2・負の所得税その2 〜累進課税制度の有用性について(後編)。日本は昔から格差社会?! でもベーシックインカムなんて使っちゃダメよ インセキオトシタロカヽ(`Д´)ノプンプン

○貧富の格差指標・ジニ係数で日本を調べてみると…



前編では格差社会アメリカを見てきた。では累進課税制度が比較的整備されているはずの日本はどうだったのだろうか?

実は意外な事に「1980年代からジニ係数はほとんど変わっていない」のである。それも「平均値は0.32と、先進国の中でも高い」のである。大体0.31-0.33の間だ。これは大変意外に思うかもしれない。


特に最近、メディアなど左派が「安倍政権の失策のせいで貧困層が増えた」という話をよく耳にするが、ジニ係数からはそのようなことはうかがい知れない。またこの逆も真なりであって、民主党政権の時も大体ジニ係数は0.31-0.32の間だった。つまり「民主党政権は地獄(←安倍首相談)」という訳でもないのだ。安倍首相の認識は『間違い』で、実のところ、なんら変わってはいないのだ。それどころから、アベノミクスが始まる前まで抱いていた「日本はデフレで苦しいかもしれないが、貧富の格差の少ない国」という幻想も「全く間違っていた」ということがジニ係数から判る。


日本は前世紀のバブル期の頃から「一貫して不平等な社会」だったのである。

どお? 驚いた(☉_☉)?


ではなぜアベノミクスが始まるまで「実は不平等」ということに気づかなかったのだろうか? 理由は二つある。一つめは円高とデフレだ。

グローバル化のせいでデフレ圧力が高まり労働賃金は上がらなかったが、円高のおかげで海外からの輸入物品がより安く手に入った。庶民には恩恵があった。このため「実は所得が減り続けていた」という事が実感として気づきにくかったのである。

そしてアベノミクスが始まると、今度はこの逆のことが起こり始めた。通貨膨張策によってインフレが発生し、同時に円安に振れた。カネの総量が増えたのだから当然の結果だが、このインフレ分以上に可処分所得の増加がなかった事、そして円安のために海外からの物品輸入が高くなったために庶民生活に打撃を与えた。反面、国家や企業は潤っている。日本国の富は過去最高を更新している。既に述べたことだが…。


ちなみに、日本の可処分所得の問題に関しては「もはや政府の仕事ではなく、雇用主に賃金を上げさせる」という、まさに企業雇用側のデフレ意識の脱却が必要で、それには労組の再結集などの『非常手段』を含めて広範囲な国民合意形成が必要なので、また別章を儲けて論議することにしたい。なにより今はより重要なことがある。不平等さを感じさせない政策が存在していたということの方だ。

それが二つ目の理由・『累進課税制度』の存在だ。

所得の大きい個人には、より多くの課税負担をお願いするという制度のことだ。日本は比較的徹底している(此処暫くは規制緩和が進んで、特に高所得者が得をする傾向が強いが…)。


たとえば日本はジニ係数0.31-0.33の『格差の大きい社会』とされているが、実は「もし所得の再分配〜つまり現行の累進課税制度や健康保険・公的医療制度・生活保護などがなかったら?」…日本はジニ係数が0.5を超える程の格差があるとされているのだ。


特に日本の場合、金額の絶対値の差よりも、「所得が伸びない」という意味での貧困に喘いでいるという事実がある。日本で年収1,000-万円を超えるのは1/20とされ、この中には芸能人やプロスポーツ選手など「ある一時期、ウンと稼ぐ人たち」も当然含まれる。超高額所得者は意外と少ないのだ。その一方で、日本の格差は「手取りが少ない」…この一点に集約されている。勤労所得がグローバル化によって伸び悩んでいるということだ。上層階級と貧困層との格差がデカいというよりも、全員が下層階級の方へとジリジリ下がっているという貧困だ。


なら日本の場合、貧困を解消する根本的な方法は『経済成長』しかないことが判る。経済成長によって国富自体を増強し、その余力分を累進課税によって補正しつつ国民全体に富を行き渡らせるしか無い。このプロセスにおいては、大抵はまずは成長インフレによる物価上昇があり、このために国民は貧乏感が増すのだが、生産活動の拡大によって徐々に可処分所得自体も増えていく…という理屈だ。


このために『国債』が必要という話を延々と繰り返してきたつもりだ。

国債増発によるマネタリーベースの拡大が成長インフレを誘引し、国民の富の増大に繋がる。しかしながら前回のアメリカの例を見るまでもなく、資本主義経済は成長すればするほど格差が開いていく社会であったのだ。ならどうするか?

積極的な格差是正策を国家の政策として剛毅果断に実行して富を再分配して貧者を無くしつつ、国民全体の消費力をUPさせ(=カネを使わせる)国内の金融・産業力・市場規模を拡大させる。またこのタイミングを逃さず、さらなる所得増加策(=経済成長戦略)を実行して国富を増加させる。こうして拡大再生産された富を、これまた格差是正策で国民に広くバラ撒き…を繰り返すしか無い。そのかなめの戦略が『国債の発行と管理』であり、また『累進課税制度』であるべきなのだ。


国債の発行と管理は国富の増大をもたらすのみならず、成長に伴うインフレを適切に管理するのに必須のツールだ。もし経済が過熱してインフレが進んだのであれば公開市場操作などの金融政策によって金融引き締めを行い、金利上昇によって政府に対しては、これ以上の国債増発を辞めさせることも出来る。『国債』は『単なる債務』などではない。人類文明を滅亡させる不可避的な『インフレ』をコントロールする人類の英知だ。そして国債発行量の増減と市場放出量の管理が国家の政策ならば、成長にともなう不平等をコントロールする『個人に対する政策』が『可処分所得の再分配』すなわち累進課税制度だったのだ。


なので重要なことは、『税の目的を明確にする』ことだ。特に多額の負担を強要され、不満が溜まりやすく、なおかつ社会の指導層でもある富裕層にちゃんと課税の意義を説明する必要が出てくる。要するに『成長インフレ促進によるGDPの強化と国富の増強』ということと、貧乏人にバラまいて使わせるという意味での『通貨の再循環』を促す作業だということをだ。世界の富裕層7人と同じくらいの富と生活を、いずれは80億人の全人類が達成可能…という方向性を打ち出し、実行するのが政府の役割だ。出来ないのなら政治家辞めることだ。


特に累進課税という制度が『金持ちへの報復的課税』に成り下がってはいけない。ましてや階級闘争など、金持ちから貧乏人まで全員を内戦へと引きずり込む愚策だ。人間はイデオロギーや国家に隷属すべきではない。右も左も間違いなのだ。自分の生活・生き様を法律の範囲内で追求するためにある。その意味では個人主義・リバタリアンであって良い。また一般人にとっても「一所懸命働いたカネを他人にバラ撒くのはイヤだ!」とか「せっかく稼いでも、必要以上に持っていかれる」というたぐいの「やる気を削ぐ」ような累進課税制度にしないことだ。(←これ、大切なこと!)


そこで、いま話題になっている大衆迎合的な愚策である『ベーシックインカム』について強く反論しておく。

これが最も悪い。皆の労働と努力の結果である税金を無駄にバラ撒いて、みんなのやる気を削ぐだけでなく、国家財政と福祉を破滅させる悪手についてだ。




○ベーシックインカムは最悪の政策 〜絶対にやってはいけない、最悪の手法


これに対し、20世紀ごろから珍妙な説が唱え始められた。ベーシックインカムという制度だ。ベーシックインカム(略称をベーカムとする)とは、貧困層にある一定額を毎月支給するという所得再分配制度だ。たとえば日本で一ヶ月に最低必要となる資金が10万円だったとすると、毎月、貧困層一人あたり10万円を国がくれてやるという程度の愚策だ。いや、良いことも確かにある。


『ヒト一人が生きるのに最低限のカネを、政府が責任をもって保証する』


…なるほど、これは良い。確かに( ˶ ̇ᴗ ̇˶ )!

どんなに厳しい生活環境でも最低限のカネがあれば路頭に迷わなくて済むかもしれないからだ。しかし、他にもメリットがあるとされる一方で、現行の生活保護の方がより良いという意見もある。なぜならベーカムには重大な問題が含まれているからだ。『支給すべき財源をどうするのか?』の課題が永久に解決出来ないからだ。本質的に『永続性がない』制度に過ぎないのだ。


現在、ベーカムを大々的に取り入れている国はないが、似たような事をしている国や地方自治体はある。しかしそれらは『資源国』が普通だ。大量の天然資源を安価に採取でき、(地方)政府財源が豊かなために実施できるのである。なら、資源が枯渇したらどうするのか? その段階でThe Endだ。そして無くならない資源はない。また枯渇しなくても、資源安になった時(たとえば大量に中国などの産業国に輸出していた資源が、中国経済の減速で在庫あまりになったような場合)、ベーカムは破綻する。ということは資源国共通の弱みでもある『安定した財源を確保しにくい』状況に陥りやすいのだ。そして、まさにコレが大々的に採用しない理由の一つだ。


勿論、産業振興策を同時に行い、資源にのみ頼らないという経済主体を運営していれば資源の枯渇に対処できる。ならば、最初からそうした方がいいし、そのためのテコとして資源採掘による利益を社会に還元した方がよりよい。そのため一部産油国はベーカムではなく『無税』の方を選んでいるのだ。税金ナシ…だったら、稼いだ分だけ自分のモノ。やる気も出てくるし金持ちにもなれる。皆が稼いで使えば国内市場の強化につながり、それが新たな仕事と雇用を生む。


ということは、これが次の問題だ。『ベーカムが雇用を生み出すわけでもない』ということだ。ベーカムでは失業の問題を解決できないのだ。だから「最低限でも生きていける」と判断した人間が多数出てきたら誰も働かず、政府の負担ばかりが大きくなってしまい、終局、財政破綻を起こす。此処まで悪化すると「真面目に働くのが馬鹿らしい」という極論さえ出てきかねない。産業力の劣った段階でこうなったら最悪、打つ手がなくなる。破綻国家の誕生だ。


たとえば日本のニートはかなりの部分、「仕事がしたくない」のではなく「職場での人間関係に苦しめられてきた」もしくは「過酷な労働環境から逃れたかった」という人たちだ。ということは決して『怠け者』ではないのだ。これは重要なことだ。自分にあった職種に就業していないだけの人たちに過ぎない。ならば『一人ひとりにあった職種を作り出す』=殖産興業政策が必要だ。ベーカムはこの『君たち一人ひとりが、やりたいことをやる』国造りに何の貢献もしないのだ。


働かなくても生きていける  ←あまり良くない制度。

好きな仕事で大金持ちになる ←とても良い制度。


アニメのエロ絵を描いて生きていきたいが、ブラック企業のバイト先で心身ともに疲弊して引きこもりになったというのなら、悪いのはブラック企業やバイト先の人間(関係)であり、これを改善するかエロ絵で食っていける『新たな産業』システムを構築すれば良いだけの話。そのほうがカネを生み出すし、個人のやる気も発揮できる活力ある社会になれる。エロが違法でなければ何の問題もない。そしてベーカムはこの『社会の活性化』に役立つのか? 勃たない!!


無論、「甘ったれるな!」と言われそうだが、逆の真実を述べたい。死ぬほど仕事する哀れな種族はヒトだけ…ということだ。ヒト以外の全ての生物は『喰うため以外には狩り(=仕事)なんかしない』のである。

ライオンを見ればいい。ライオンはシマウマ食い殺した後、半日以上、横になったままの怠け者だ。生肉は消化に悪いからだ。そして狩りの成功率は10%以下だ。しかし、燻製や冷凍保存のような知恵を一向に生み出す気配がない。しかし奴らはそれでも『百獣の王』なのだ。他の動物よりも優位なのだ。何より、いまなおこんな知恵のない生き方をしても絶滅していない。ということは、ライオンのような、いきあたりばったりの阿呆な怠け者でも、本来は十分生きていけるのだ。将来設計とか蓄財とか、いろいろな余剰生産物と財産の事を考え始めたために、ヒトは『カネの奴隷』になったのである。


「なぜヒトだけ、命削ってまで働かねばならないのか?」

…この問いに対する合理的な正解は存在しない。なぜなら「そんなことする必要ない」が正解だからだ。誰も言わないだけで。他の動物は「喰うのに必死」だが、そもそも喰うために必要な時間と労力が莫大にかかるだけで、連中は好きで仕事をしまくっているわけではない。挙げ句、喰う食われるの関係は、三度の飯の一回々々が命がけだ。草食動物は毎食が死刑宣告。しかし肉食動物とて『命がけの反撃』で毎食ごとに危機に見舞われる。ライオンは怪我をしても入院できないし、この為体ていたらくでは、そもそも医療費も払えないだろう。


しかしヒトは違う。進んだ文明を持てば、食事は容易にありつける。しかもふんだんに、だ。なのに過労死するまで働きまくっている。喰うだけなら、ソコまでしなくても済むはずなのに、だ?? ホモ・サピエンスは全く『賢くない』エテ公なのである。自ら奴隷に成り下がった愚か者だからだ。ライオンごときのバカ猫に百獣の王と後塵を拝したのには理由があったのだ。『自らの決めたルールに従って死ぬまで働く』…という、ある意味、真面目な種族だと言ってもいい。ならせめて働くことに意義と報酬がある社会を構築すべきではないのか!?


そしてさらなる重大な問題点は『政府による詐欺』の危険性があることだ。

「貧乏人にカネをくれてやるので、その分の財源を削りたい」…まさにこれだ。

そしてそのターゲットになるのが通常は社会保障費なのだ。貧乏人にカネをくれてやるから、医療費なんかはその分でまかなえ…という理屈である。


実際、ベーカムを言い出した政府の主眼は『歳出削減』の方であり、多額の費用を必要とする公的扶助費の大幅削減を狙っていることが多いのだ。なぜなら金持ちは自腹(=高額の民間医療保険に加入)で対処できるからだ。糖尿病患者に「月に10万やるから、人工透析費、もうやらない」というのに等しい。これでは身体の頑丈な怠け者しか恩恵がない。不公平で不平等な制度だ。辞めるべきだ。


しかもバラ撒き型の政府支出は多分に悪用されやすい。政治的にも人気取り・選挙目当てでカネをバラ撒くという大衆迎合主義的ポピュリズムの悪い例に使われる危険もあり、究極、チャベスやマドゥロ政権下のベネズエラのように、自分の支持者にだけカネやら食い物やらをタダでバラ撒く腐敗国家に成り下がるリスクさえある。ベーカムは良いことが何もないのだ。唯一の例外…


『生きるのに最低限必要な金額を、国民全員に支給する』 ←これを除けば。


なら、これを累進課税制度に組み込めたら最強だろう。

そういう制度があれば良い ( ̄ー ̄)bグッ!

結論から言えば『負の所得税』はコレを可能にしている。よって良い制度と言える…。


  ※     ※     ※


格差解消の問題を解決するツールとして『収奪』に関しては累進課税制度を有効とし、これに最低限のカネを(特に貧乏人に)キックバック出来たらベスト…という結論に至った。次にこの、ふんだくった税金をより有効に使う『配分』について考えてみる。これは主に『国民健康皆保険』と『生活保護』に関する話だ。

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