§7-5・なぜテロン人はガミラス人と手を組んだのか(その4) 〜超大国の国債ゲットのメリットを日英同盟から考えてみる

 こうして、日清戦争の賠償金を当時最強帝国の大英帝国のポンドに変換することで自国通貨の金融制度の安定と確立を図った大日本帝国。しかしあと一つ、途轍もないメリットがあった。

 それは日本が英国国債の一大保有者になったということだった。

 つまり『英国に対する投資家』となったのである。


 これが非常に大きかった。大日本帝国は英国国債を大量に保有し、これを容易に売り飛ばすことはしなかった。『信頼できる大口顧客』ということだった。

 実際、一部は万が一に備え日本国内に円として回収したのだが、残金5%の内の2/3程度の150-160万ポンド相当の国債は在外正貨幣として英国に留置き、国際決済の元ガネとして運用しつつ、溜め込み続けたのである。


 そもそも日本が近代化のために諸外国から製品等を購入した等の時の決済にポンドを使うのは、信頼性の低い発展途上国の大日本帝国の円を使うより遥かに信頼がおけたし、日本と絡んだ英国企業にとっても仕事が増えて潤った。それは日本にとってもメリットになる。『日本国内に外国投資が入ってきた』と同じ結果になるのだ。ポンドを円に変えれば国内に流通するし、ポンドのまま溜め込んでもOKだ。しかも利払いなどの負担が一切不要だ。


 結局、日本国内で使われればそれは日本円となるのだから、日本国内の円の保有量が増えることを意味した。金本位制のもとでは、地金のきんが国内に増えたのと同じ効果があるのだ。

 前回述べたとおり、兌換であったとしても、日本円全てを突如いきなり全額、「きんに換えてくれー」と言い出すことはなく(←そんなときは帝国がオワットル)、ある程度の担保金として国内に残っていればよいだけだ。そして英国債ならば安全で安定しているし、これを元手に対外貿易資金にも活用出来た。なによりも英国にとって『お得意様』になれた。一晩で貧乏人から貴族になったようなものだった。大英帝国にとっても、帝国運営資金の元ガネとなる英国国債を大量に保有してくださる大日本帝国は上得意様だ。


 これが英国をして、日本に対して極めて友好的な外交戦略を採用させる理由となったのだ。

 なぜ1902年に『栄光ある孤立』を捨て、日英同盟を結んだのか? 

 理由は簡単で『日本が英国国債の大量保有者だったから』だ。しかも独仏に比べて遥かに友好的な保有者だった。対立する地理的・政治的案件が無かったからである。


 金持ちの貴族を嫌う白人はいない。この段階ですでに日本人は『名誉白人』だったのだ。

 この金融面での良好な関係があったからこそ日英同盟が可能になったのだし、「海を制するものは世界を制する」というシーパワー全盛期のこの時期、戦艦三笠などの新型戦艦などを大量に供給してくれた。それどころか海軍史における大革命とされる革新的戦艦ドレッドノート級が1906年に就航するとすぐに帝国海軍に後の超弩級戦艦(←弩はドレッドノートの弩!)『金剛』の発注・建艦に応じてくれた。しかも技術供与を含めた広範な協力があり、特別の便宜を図ってくれたのも、そもそもこうした経済的なつながりがあったからに他ならない。


 それだけではない。日露戦争の前後の話しを含め、英国は有形・無形の政治的援助をしてくれた。江戸末期に結んだ対外不平等条約の解消にも応じたし、日本国の国際的な威信を高めるのに英国は力を尽くしてくれた。夏目漱石を始め、留学生の受け入れも進めてくれた。政治経済文化科学技術において、英国は学ぶべき事の多い超大国だった。そして彼らが他のアジアの『二級国家』とは違って日本の求めに応じてくれたのも全て『国債、大量ゲットだぜ!』の結果なのだ。


 なお金剛は英国に発注された最後の戦艦であり、第二次大戦に参戦した唯一の外国艦だ。しかも英米相手にハデに火を噴いた殊勲艦で、現在のソロモンアイランズ・ホニアラ空港を火だるまにしたのもこのフネだ。ビッカースもさぞ鼻が高かったことだろう。


 こう考えると、なぜ日英同盟が無くなったのかの理由もわかる。

 日英同盟は1921年のワシントン海軍軍縮会議によって成立した『四カ国条約』をもって発展解消ということになったが、これも『英国国債の最大保有者がアメリカになったから』で説明がつく。第一次大戦によって、アメリカが英国の戦時国債を大量に引き受け、英国を助けた。戦後、中国の利権を巡って日本とアメリカが対立するようになった。太平洋領域での利権争いだった。

 勿論、アメリカも中国人を日本から助ける・・・みたいな善意など毛頭なかった。それどころか大日本帝国の満州地域での鉄道権益(鉄道路線周辺の広大な地域が日本領とされていた)を前々から狙っており、


米国「やい、糞chinkども! オレも混ぜろ」

日本「ワタシたち中国人は日本人と一緒がいいアルヨ(`ハ´)」


米国「うそつけ!(# ゚Д゚)!」


・・・みたいな感じだった。要するに、現在で言う所の市場開放要求である。英国は、旧来の日本との友誼ゆうぎと、国債の最大保有者にして第一次大戦の恩人である米国との間で板挟みとなってしまった。実際、最後まで日本との良好な関係の維持に奔走したが、英国の懐を抑えたアメリカの反対を恐れて結局、発展解消の形で消滅させるしかなかった。当時の英国外相バルフォアも、


「ホンマ残念。日本、ごめんちゃいな(爆死)☆(・ω<)」

・・・みたいなコメントを残しているほどだ。


 ただし、誤解なきよう言っておかねばならないことだが、大英帝国は多額のカネを借り込んではいたものの、それ以上の他国債を引き受ける借款供与の側にも立っていたということだった。つまり第一次大戦で全財産を韜晦とうかいし『真っ赤っ赤』になって落ちぶれたワケではない。

 真の問題は、莫大な戦費支出を強要された挙げ句、ボロボロの同盟国の債権を多数抱えていたという不安定さのほうだった。これは多額の不良債権を抱えたのに似ている。なにしろカネ貸していたロシアは社会主義革命まで起こして『持ち逃げ』したのだから・・・(T_T)


  ※     ※     ※


 こうして日清戦争による賠償金は、散々使い倒したら日本国内に資本と産業が増えていて、しかも5%くらいが『円の預託金』として使われた。特にポンドという、当時の世界でもっとも安定した資産を担保としたことで日本円が安定資産となり、結果、金本位制が確立した。1897年のことだ。江戸時代からの長年の懸案であった『自国通貨の価値の保全』にようやく成功したのだ。そして、自国通貨の価値保全とは金本位制の時代であっても『きん』だけでなく英国ポンドという『基軸通貨国さいきょうこっかの国債』というバックボーンが必要だったのだ。


 現代では同じことを戦争という手段を採らずして、更に洗練されたやり方を行う。つまり黒字を出して基軸通貨を購入し、これを政府なり中央銀行なりが保全するというやり方だ。これは政策運用資金になるし、溜め込めば自国通貨の担保金となる。まずはこれをベースに自国通貨量を増やし、経済経営が軌道に乗せ、国債決済で自国通貨の流通量が増やしていき、最後は基軸通貨もしくは準基軸通貨として世界で通用するまで育てたら、今度はこの多国籍貿易での流通量と自国を担保に通貨供給量を増やしていくのだ。


 そのために、通貨スワップなども用いられる。日・米・欧州が無限スワップ提携しているのも、これらの国がデフォるリスクを考えているのではなく、この『基軸通貨』の価値を相互に保管しあって、より強固に守りあっているからだ。理屈から言ったら、日本円の価値は円資産+ドルベース資産+ユーロベース資産(含む総国力)だから、ほぼ無限の価値を持てる・・・ということだ。理屈から言えば、だが(^_^;)


 ならば、2200年のガミラス戦役後の地球においても同じことをすればよいのだヽ(^o^)丿


 ただし問題もあった。ガミラス国債を購入する元ガネがないのだ。BBY-01ヤマトがガミラスを叩いたのだから、この時の戦時賠償をゲットするというのも一つの手ではあった。実際、ローマ帝国が蛮族に「カネ払って帰ってもらった」ということだってあったのだから、まあ、ありえない話しではないだろう。しかし、地球のボロり方を見れば、勝ったとは到底思われない。しかもガミラスが逆上して「本気で戦う!」みたいな話しになったら、今度こそ全滅の予感さえする。逆にガミラスを木端微塵に粉砕し、滅亡させていたという別のストーリーがあるのなら「お財布を焼き払っちゃった(T_T)」みたいな結果だ。


芹沢虎鉄「沖田君! 賠償金をせしめてこいと言ったのに、なぜ勝手に滅亡させたカー (# ゚Д゚)!!」


・・・そんな感じ。

 なので戦闘によって、という選択肢は無理だった。しかし、黒字を溜め込んで・・・というのも、出来ない相談だった。そもそも産業振興のための原資がないのだから、どうやって黒字を作るための輸出力を回復させれば良いというのだ?? このジレンマは対ガミラス交渉では地球側の弱点となる。ガミラスはもともと地球に譲る理由に乏しいが、足元を見透かされれば、実のところ「やっぱガミラスの植民地のほうがいいでしょ?」みたいな話しになりかねない。ローマ帝国とカルタゴのような関係に似ているかもしれない。ではどうするか?


 前述のように、2200年の地球では日本人以外の外国人は、結構頼りない可能性が高い。ということは我々が面倒みなきゃいけないということだ。

 しかし日本は戦後、一貫して「タフなネゴシエイター」と言われる程、外交交渉に長けていた。アメリカが鍛えたと言ってもいい。日本は「総論大賛成。各論は反対」という立場で、一度や二度、不平等条約を結んでもユルユルと条約改正させるロングスパンの戦略を持っていた。粘り強いが信条だった。主に官僚の力によるのだが・・・。


 なにより、そのためにカネの使い方を知っていた。対外援助やODAなど、日本の庶民からしたら「なんでカネ、ガイジンにバラまいてんの??」みたいな憤りもあるかもしれないが、実はちゃんと国益になっていた。

 たとえばアメリカ軍が日本に駐留しているが、犯罪者引き渡し協定などの条項は、実は英国に対してを除けば、ここまでアメリカが譲歩した国はない。これも「コッソリと在日米軍に、年に一兆円も払っているからだYO-(^o^)/」の結果だ。しかし日本にとってもメリットはあった。アメリカが血であがなった戦闘経験を彼らから無血で学ぶことが出来るのだ。これが大きい。その意味で日米安保はどちらにとっても大変有意義な安全保障条約だ。


 ガミラスとの間でも、こんな感じになれば外交政策としてベストだろう。

 では、そのための戦略を考えてみよう。困難を覚悟の上で、だ。。。m(_ _)m

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