§6-3・対GDP200%の国家債務を背負ったガミラス帝国の起死回生の一手とは?(その2) 〜国債使ってドーピング。しかし政府の借金が増えた。どーしよ? まるで2018年の日本みたいだよね(・_・)?

 大マゼラン星雲領域に巨大な経済圏を構築するに至った最強国家・ガミラス帝国の現代史は大体、以下のように分類される。


・だいたい100年くらい前

 〜デスラー家によるガミラス大公国の復興期(小統一期)


・だいたい30-40年ほど前

 〜エーリク・ヴァム・デスラー大公によるガミラス全域の統一事業の完了

 (大併合アンシュルス期)


・だいたい15-20年ほど前

 〜内戦勃発とアベルト・デスラー総統による大ガミラス帝国への改組・

  再編成期(帝政期)


  ※     ※     ※


 このガミラス帝国中興の祖・デスラー家による一連の経済政策の結果、国家債務がどうなったかを再確認してみる。時代的には小統一期の最後期あたりに相当する。整理したら、こうなった。


  ※     ※     ※


 帝国政府の国家債務の総額は対GDP比200%。現在も大規模な金融緩和によって成長インフレ(異次元緩和政策)絶賛実施中。

 しかしながら経済成長に蔭りが見えており、現在のところ出口戦略をとることは出来ないと判断している。

 マイナス金利を実施しており、そのため長期国債の利率も0.01〜0.1%以下と超低い。


【内訳概説】

○主な国家債務は帝国国債のみ。

○帝国国債の保有者は95%が帝国国内で保有されている。

 内訳は国内民間市中に40%。一方で帝国中央銀行が50%(すなわちGDP100%分相当)、残りの10%前後を政府系金融機関・社会保障基金などが保有。

○外国人保有者はわずか5-8%前後。


○帝国国債の国債の発行目的は、景気回復のための建設国債などが主。

 帝国歳入の半分は国債ではあるものの、政府運営予算を外債に頼っているわけではないということ。

 よって政府の規模を縮小すれば、帝国国債の発行量は減らせる。

 また帝国政府(デスラー家政府)の政府保有資産がGDP100%以上の資産を持つので、緊急時には政府臨時補正予算が組める。

 →デフォルトを回避しやすい。ただしすぐに使える現金としては、GDPのせいぜい10%程度ほど。

 →残りの多くは政府保有資産を増やすための投資に回される。また臨時補正予算は帝国議会の予算承認ナシで独断で運用出来る


○経常収支に関しては黒字。内訳は以下のよう

  貿易収支 ←大抵黒字。しかし赤字の時もまま、ある。

        赤字要因は主に資源高

       (自分で採掘投資するよりは安いということ)

  一次所得 ←大幅黒字。大マゼラン星雲国家において最大規模。

  二次所得 ←マイナス。ガミラスに服属している国に政府援助金として

        拠出しているため。

        時々、焦げ付く。しかし規模は極めて小さく無視出来る。

  サービス ←トントン。

        ガミラスマルク高の時には赤字にブレる傾向が強い。


○国内には個人資産や有価証券などが対GDP比の300%前後も保有されている。かなりの含み資産がある。

 概算では帝国総資産(帝国臣民民間+政府+国家)はおよそ帝国GDPの20倍。反面、帝国総負債はGDPの14倍。

 この差分が帝国純資産で、およそ3.300-兆ガミラスマルクほどある。


○税金は相対的に『安い』側の国に分類されている。大幅増税の余力有り。

○産業および金融力の基礎力ファンダメンタルはかなり強力。

○現在はガミラスマルクは、大規模な金融緩和のために『ガミラスマルク安』。

○帝国中央銀行の経済領域への進出が異常に強く、特に帝国株式市場に過干渉している迷惑千万な状況。年に6兆ガミラスマルクもの資金をETFによって投入したり、マイナス金利政策などを実施中。「バカめ!」だ。


  ※     ※     ※


・・・まあ、なんとなく2018-20年くらいの日本に、おっそろしいほど非常によく似ていた。多分、他人の空似そらにだろうが。


 違うところもある。ガミラス帝国は、国境紛争や経済権益の問題から、時々、異星文明と交戦状態になることもあった。憲法9条などというヌルい法はないのだ! とはいえ、戦闘は極めて限定的で財政に与える影響は少なかった。


 また帝国には一応、帝国議会も存在していた。デスラー家によるガミラス再興の功臣による『帝国貴族院ライヒスラート』と、経済力を付けてきたガミラス庶民からなる『帝国臣民院ライヒスターク』の二院制で、デスラー家の政府に対して、臣民の意見がある程度反映できるようにはなっていた。


 帝国貴族院は、帝国貴族の中の有力者による終身議員制を採る。デスラー政府の意向を強く反映する『政府の忠犬』の役割を担っていた。

 一方、帝国臣民院は経済力を付けてきた臣民が選挙によって選ぶ臣民代表議員で、公議輿論こうぎよろんを反映する使命を持つのと同時に、臣民の不満のガス抜きを図る役割も担っていた。議員資格と投票権は成人ガミラス人男女のみであり、二級臣民には投票権はなく、帰化人にもないが、ハーフは成人後の審査によってガミラス人と認定されれば選挙・被選挙権を持つことが出来た。

 ただし議会の役割は限定的で、立法権・予算審議権・決算承認権・条約承認権があったが帝国貴族院には拒否権があり、またデスラー政府宰相(←つまりデスラー家統治者)は帝国議会には一切の責任を負わなかったために、『帝国政府への諮問機関』以上のものではないことが、日本との決定的な違いだ。

 またこの帝国議会はアベルト・デスラーによる『全権委任法』通過後、一時、休会となった(事実上の廃止)。


  ※     ※     ※


 こんな状況の中、デスラー家のガミラス政府は、ある重要な問題にぶち当たって苦悩し始める。

 帝国国債の発行総量が多すぎたのだ。帝国GDPの二倍もの国債を刷ってしまった。これは帝国政府にとっては債務だ。利払いが必要で、かなりの負担になっていた。支払い出来なれば政府がデフォルトになる。これは避けたい。しかし利払いには国民から吸い上げた税金を使うしか無い。しかも、あまりに税金を上げれば帝国臣民が逆上する。それはすぐにデスラー政権を揺るがす暴動騒ぎ・革命騒ぎになるだろう。しかもデスラー政権に従わない『反体制派貴族』や、面従腹背めんじゅうふくはいしている国内の反対勢力が使嗾しそうして帝国政府転覆さえ起こしかねない。なら、増税は政権にリスクを伴う。避けたい・・・。


 こんなこともあろうかと、あらかじめ帝国議会を作って臣民どもの話しくらいは聞いてやっていたのだが、結構すっとぼけにしてるので、不満は溜まってるはずだ。実際、帝国臣民院からは『減税しろ!』の声が頻繁に聞こえる。これもしょうがない。そら、そうよ・・・。

 だって通貨膨張策リフレを採用しているので、市場に通貨が大量に出回っている。なのでインフレが起きている。いや、このインフレが経済成長の原動力なのだから、ある意味当たり前だ。しかし物価はジリジリと高騰している。生活苦の原因だ。

 悪いことに、臣民の手取り賃金の上昇率よりもインフレ率の方が少しだけ高いので、実質、給料が下がってるのと同じことになっていた。なので「減税しろ、デスラー」の声が聞こえているのだ。これじゃ、消費増税は10%にあげないほうがいい・・・(;_;)


 その一方で、市場からは帝国国債が『消えて無くなっていた』。かなりの量、中央銀行が『買い取った』からである。


 これは市場にカネをばらまくために、市場にある国債を帝国中央銀行が購入したからだ。この国債購入代金が帝国全土に流れて(→通貨の量が増えたから)、いまインフレになっているのである。そして経済はゆっくりではあるが今なお好調で成長しているし、通貨の供給量が多いので1ガミラスマルクあたりの価値も減ってしまった(拙文第10話『インフレとデフレについて100人のガミラス人の村で考えてみる』をご一読ください)。

 しかも、銀行から民間企業に少しでもカネを放出させ、民間活力のUPをはかりたくてマイナス金利という、帝国中央銀行への各銀行の預託金の金利をマイナス・・・つまり、預けた銀行が帝国中央銀行に利払いしなきゃダメというシステムまで導入している。これは『借金してるヤツに、カネを貸してるヤツが利子を払わねばならない』というほど、信じられないほどマヌケな政策だ。しかし、こうすることで銀行が「ますます民間にカネを貸しまくって、利益挙げなきゃ」と思わせる『尻叩き』なのである。イヤなスパンキングだ・・・


 ところが思ったように消費が伸びず、企業も将来不安(たとえば「国債がGDPの200%もあるから、いずれ国家破綻するんじゃねーの?」みたいな将来不安)で設備投資しないために、銀行が手堅い真面目な貸出先を見つけにくくなってしまった。収益が思うように上がらず苦しんでいる時に、『購入者にとっては資産』である『国債』が、中央銀行の買占めのせいで『消えて無くなっていた』から、銀行は資本不足に陥った。しかも中央銀行にマイナス金利まで支払わねばならない。まるでレイプしたヤツの朝飯まで作ってやるというようなメッチャクチャな状況になってしまった。銀行の不満は爆発寸前だった。もしかしたらスルガ銀行だって、こんな経営難からヤバげな『かぼちゃの馬車』に手をつっこんだのかもしれないではないか??


「デスラーん家、全員ブッ殺そうぜ!」というヤツが出てきたら、銀行家はみんな、そっちに鞍替えしそうな勢いだった・・・


・・・ヤバイよね、まぢで(~_~;)(~_~;)(~_~;) ←デスラー家の方々


 そこで、デスラー政府は、抜本的な対策を講じることにした・・・


  ※     ※     ※


 ここで国債と通貨とインフレと公開市場操作について、もう一度説明する。

 まずインフレとは『通貨の供給量が増えたことによって発生する』現象で、『通貨の価値が下落する』&『経済を成長させる』ことも可能な現象だ。拙文第10話の内容だ。


 そこで、政府が税収入以外で資金がほしいという場合、『政府の借金』として『国債』を発行し、民間の銀行や証券会社、個人に対して販売する。売れれば政府には『手許現金』が手に入る。

 なので逆に『国債』は、購入した銀行や民間人にとっては利子収入が見込める『財産』だ。複式簿記の考え方で言えば、政府の債務であり、逆に国民の債権だ。特に強調しておくが『政府の借金』ではあるが、『民間人にとっては資産』だ。財産だ! ・・・と言った。


・国債の流れ・・・ 政府(借金)→民間(財産)←国債の売却行為

 国富の流れ・・・ 政府の借金 =民間の資産 ←トータル同じ。増えてない。


・・・要するに政府は借金して現金が増えたし、国民は債権を手にして富が増えたのだ。国債の発行は『富を増やすこと』だ。借入金で資本力を増強したのだ。ただし、政府は結局、国債を全額カネ払って回収しなくてはならないハズだし、このままだと国債の利子分だけ足りなくなってしまう。でも海外貿易とかで黒字が出れば、その黒字分で足りない分は補填出来る。そう考えたなら、経済成長が必要だ。そして経済成長にはインフレが有効だ。インフレは通貨の供給量を増やせば人為的に惹き起こせる。よって、通貨を発行する中央銀行が資金をばらまく。国債を民間から購入する・・・という形でだ。


※買いオペ(中央銀行が国債を購入し、市中に通貨供給量を増やすこと)

・国債の流れ ・・・ 民間(債権)  → 中央銀行(現金)

 ※中央銀行による国債の購入行為


 国富の流れ ・・・ 民間(現金収入)= 中央銀行(国債)

 ※トータル同じ。増えてない。


・・・これで民間は現金が増えた。あとは投資に使ってくれれば良い。結果、経済成長出来る。皆が儲かるのだ。一方、中央銀行には国債という『資産』が増えた。国から利払いが望める。よって中央銀行は政策資金が増えたことになる。しかも償還すれば手元現金が増える。もっとカネが手に入る。

 そして政府は経済成長のおかげで税収入が自然増する。この増えた分は国債の利払いに当てればよく、ウンと税収入が増えれば国債の償還に必要な現金としても使える。経済成長ブラボーだ。

 よって『買いオペ』は『富を作り出すこと』だ。また通貨と国債を市場でのやり取りを通じて『交換(=現金で国債買った)』したのだから、通貨=国債だ。すると、こう考えられる。


          中央銀行

  国債という財産取得    現ナマ投入

     ↑            ↓

政府(債務者・国債発行)=民間(債権者・国債購入)



・・・あれ? 『マイナス』科目が無いじゃん?(・_・)?


 いや、中央銀行が紙幣を刷る時の経費はかかる。しかし国債の利払いの方が大きかったら、中央銀行は黒字だ。損はしなくなる。

 さらにインフレは現金の価値が(時間が経過するごとに)減っていくが、しかし、それ以上のペースで経済成長出来れば、現金の『価値減損<成長利得』となり国の総資産が増えることになる。つまり『マイナス分 < プラス分』の関係が成立させられることが判る。


 そもそも国債の流れだけ見れば『政府(借金)=民間(資産)』だから『増えてない』。此処でオワットル。閉じた関係だ。

 この関係の中に中央銀行が刷った『現金ぶっこんだ!』のだから、現金分だけ『資産が増えた』。つまり買いオペは国民経済に対するドーピングの役割があったのだ。このやり方なら『基本、富が増える一方』だ!ヽ(^o^)丿♪


 そう。地球の世界各国のGDPの推移とか国税収入(政府歳入)を見た時、特に1980年代以降、一方的に増えているのはこの『買いオペ』によって借り入れ資産が増えた『政府の借金で、国や世界が爆発的に成長する』システムの結果だったのだ。『大きく借金して、もっと大きくカネ稼ぐ』だったのだ。


  ※     ※     ※


 しかし問題もあった。政府の借金なのだから、政府は利払いしないと行けないし、国債の償還時には現金払って買い戻さなくてはならない。この原資は結局、国民の税金を当てるしかない。だから、あまりにも国債をベラボーに刷りまくると利払いや償還時の負担がデカくなりすぎてしまう。『政府の負債=国民(国家)の資産』ではあっても、利払いと買戻し金は国民の資産の中から抜き取るしか無い。そうなると、選択肢は三つくらいしかないことに気づく。


 利払い+償還費用の負担分以上に経済成長する! が一つ目だ。これはGoodだ。みんな働いて豊かになろうだからだ。しかも経済成長はインフレを伴う。だから『昔借りたカネの価値はインフレによって減損する』から、10年位前に買った国債は額面割れ起こしている。これを民間が償還すれば、ある意味、損をしてしまう。勿論そのために利払いがあるわけだが、普通は使っちゃって、とっくのとうに『無い』。だったらもう一度、国債の償還時に同じ額面の長期国債を購入したほうが(利子がつくだけ)得するはずだ。なにより、同じ額面で民間が国債を買い直してくれれば、債務者の政府としては『借金が無かったのと同じ』になるのだから、こりゃサイコーだヽ(^o^)丿


 二つ目は『政府が独自で資産運用する』だ。独立法人や特殊法人という民間企業を装った国策会社を作り、ここが資産運用するのだ。これもまあまあGoodだ。ただし、ぶっこんだ資金が焦げ付く可能性はある。焦げ付いて損出したら、政府の独自資産で穴埋するか、増税しか無い。少々リスクがあるし、なにより国家の総資産に比べれば微々たるものだ。

 この時のガミラス政府の保有資産は約600-700兆ガミラスマルク程度。これは同帝国のGDPと同じかそれ以上ではあるが、同時期の帝国総資産は1京(=10.000-兆)ガミラスマルクもあるし、総負債分を除いた帝国純資産だけでも3.300-兆ガミラスマルクもあった。こっちの方が遥かに安定した『担保』だ。


 そして三つ目は、ある意味、禁断の奥の手だ。『国債を無かったことにする』だ。債務自体を無かったことにする『徳政令』だ。

 なるほど、国債は政府の債務だが、民間や中央銀行など保有者にとっては『資産』だ。だから徳政令なんか出されたら『資産消滅』になる。「ばかめ!」だ。やったらダメだ。誰が納得するというのだ??

 しかし、もしこの奥の手が使えたら、政府は凄くラクになる。特に大規模に徳政令出せれば、政府の利払いや償還費用が全部消えて無くなるのだし、逆に言えば『減らした分の国債を、もう一度発行してもOK』とも言える。そうなれば、国富がまたまた増大する。経済成長できるのだ。


・・・(~_~;) ←悩んでみた。>ガミ公


         【 この項目、続く 】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る