§5-4-15・そして2199年までの歴史 〜事実上、日本が対ガミラス戦の最前線にいたのはナゼか? ・・・について


○2199年時、なぜ日本が対ガミラス戦の矢面に立ったのか?

 →ほぼ世界最強の経済力を持つに至ったから



 この後、人類はまさに激動の時代を迎える。日本発を含めた世界恐慌が頻発した2150-60年代の悪影響のため、2170年代はまさに2090年代の時のような『失われた10年』となってしまった。太陽系内惑星領域で経済不安から社会不安、そして各国のナショナリズムの高揚やテロなどがあり、これが原因で2180年代には第二次内惑星戦争という、今度はより大規模な戦争を起こすに至る。この流れもまた2090年代〜2110年代末までの第一次内惑星戦争の流れと、ほぼ同じであった。


 大きな違いは今度は日本もこの戦争にかなり積極的に参加するということだった。今度の戦争は、前回の第一次内惑星戦争とは規模が違った。実際、地球に対してもマスドライバー等を使った大質量弾による攻撃がなされるようになった。要するに隕石爆弾みたいなものだが、これは核兵器を超える破壊力があることから地球各国は本土に対する大規模全面攻撃と無制限報復戦の様相を呈するほど酷い有り様となってしまった。おまけに安かったので、多用された。


 日本も無縁ではありえず、太平洋や日本海などに落下した流れ弾の大質量弾よる爆風や津波などの被害が極東各国に及んだが、普段から自然災害に備えていた日本はこの被害を極限まで食い止めることが出来た。まだ戦争に参加していない様子見の日本だったが、この初期の段階で既に「今度の戦争はただごとではない」という怖い予感はしていた・・・


  ※     ※     ※


 当初は戦争から距離を置くという立場を採っていた日本だったが、戦線が内惑星領域全域に及ぶに至り、日本の宇宙領域への直接攻撃や欧米などの協調などもあり、憲法9条を弄ること無く速やかに自衛権の適用ということで参戦することになった。

 このために日本本土に対しても自由落下大質量弾攻撃があり、これが地下都市建設(大きな防空壕)を促したが、後に対ガミラス戦役でも活用され、両戦争で日本人に比較的犠牲が少ないことの理由の一つともなった。


 第二次内惑星戦争自体は、衛星軌道の軌道力学上の限界を超える程の高機動運動・『敵前大回頭』という驚くべき戦術を駆使して大勝利を挙げ、『内惑星戦争の英雄』と賞賛された沖田十三提督のような将官を輩出したが、これも2170年代に日本がいち早く国家債務から抜け出し、経済力を回復させ、金融力を高めた国家だったからこそ可能だった強大な国力の賜物と言えた。


 そしてこの戦争で勝者の側に立ったことが日本を世界的な強国へと再び持ち上げることになった。

 日本はこの時の各国の戦費や軍民資材の一大生産国となり、まるで第二次大戦時のアメリカのような役割を果たした。戦闘艦艇では、前述の『敵前大回頭』を可能にする核融合推進器型最新鋭・国連宇宙軍汎用護衛艦艇ムラサメ型・コンゴウ型の開発・戦力増強に寄与したし、自由落下大質量弾攻撃に対する世界の地下都市建設や防波堤・インフラ整備事業でも大きな役割を果たした。地震・津波などの自然災害に対する技術的蓄積が、ここで十分に生かされた。特に金融力の強化の恩恵は素晴らしく、各国外債の引き受け手として活躍した。

 

 2180年代の終わりには莫大な富が日本に集まり、他方、戦費負債を抱え込むこともなかった純債務国となっていた。莫大な富を背景に、この戦争で国力を回復したアメリカや欧州などと共に再び世界的にも有力な支配国家へと成長していた。そのため宇宙防衛を担うことも多くなった。


 2190年代にガミラスと最初に交戦したのが日本艦隊であったことや、地球本土爆撃という大被害の中、2199年に遣イスカンダル使節団にBBY-01ヤマトを莫大な費用を負担して建艦しえたのも日本であったのは、この2150年代から始まる一連の『通貨危機→国家破綻→債務消滅→国民の犠牲による国家再生→第二次内惑星戦争の結果の純債権国化』・・・という流れがあったからだった。それも速やかに成し遂げられ、第二次内惑星戦争前にほぼ強靱な国力を回復した唯一の先進国となったからだった。


 勿論、『もともと災害に強い』国であったことも世界最強国の一翼を担うことが出来た理由ではあるし、高度な生産産業技術力をずっと保持し続けていた『ものづくり大国日本』も、まんざらではなかったこともあるだろう。

 しかし通貨危機という破滅を経て不死鳥のように蘇った事・・・これを、特にこともなげにやってのけた日本人のメンタリティと、国家として最後の強化ポイントであった金融・投資分野における規制緩和と機能強化・国民の富の増進策が最も有効であったことを忘れるべきではないのだ。特に株式や債券などの資産からの収益(インカムゲイン)が非課税になったのは大きかった。

 唯一のマイナス点は国債の外国人保有率が上がったことだろう。円・株・国債がダダ下がりした時に投機目的で外国人が買い込んだ分がかなりあった。とはいえ、第二次内惑星戦争での日本への富の集積もあり、やはり数%にまで割合は減るのだ・・・


 23世紀、BBY-01ヤマトの事を記憶している人達は、少ないかもしれない。ガミラス戦役後の2200年から始まる大規模な経済破綻が余りにも強烈なインパクトがあったのだから、彼らの事を忘れていてもしょうがないだろう。しかし、BBY-01ヤマトの偉業は日本国官民あげての総力があったからこそ出来たことだ。それは金融力の勝利でもあったのだ。なにしろ技術力はイスカンダル製のものばかりだったのだから・・・。


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 2199年、やたらと日本人だらけで異星人ガミラスと戦うことになったのも、こうした金融・負債整理と再生があったからこそのことだったのだ。正直、良いのか悪いのかよくわからない結末だったかもしれない。ガミ公のせいでボコボコになったのも事実なのだし・・・。

 そしてガミラス戦役で結局は財産のかなりの部分を消失してしまうのは、これまた仕方のないことだった。わずか10年足らずで『一からやり直し』になってしまった。こう考えると、あまり幸せではなかったかもしれない・・・。


 まあ、戦争なんて、所詮はこんなものだ。諦めよう・・・

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