§5-4-14・【これまた朗報】ところが意外とアッサリ回復するんだよね、コレが( ˘ω˘)ノ【ここは読んでほしいな!】

○2160年代からの飛躍 ・・・通貨危機の敗戦を迎えた日本の『戦後』


 2150年代の末から始まった日本円大暴落という円通貨危機は、全世界に衝撃を与えた。まさに無敵艦隊の敗北に近い衝撃といえた。日本はこれまで何度となく「GDP200%もの国債を抱えた破綻国家」でありながら、破綻すること無く平然と生き残ってきた国家だった。また高い頻度で発生する大地震・大津波・火山噴火・大規模豪雨災害・・・国土面積が全世界の1/360しかない領域に、全地球のおよそ5-8%ものエネルギー量が解放される土地にあっても死滅することなく生き残る無類のタフさは、2199年からの無敵星間国家ガミラス帝国領域への単独進攻とその成功というBBY-01の無限のタフさを暗示させる程の強靭ぶりだった。

 

 ところが、2160年代に突然、日本が破滅した。通貨危機だった。外国人からは、少なくとも突然、日本が破綻したように見えた。

 全世界は「あーあ。日本でさえダメだったか・・・」という、ある種の絶望感があった。そして、この時の日本円暴落が、弱っていた世界経済に打撃を与えた。日本発の世界恐慌の発生だった。


 確かに日本は外国に対して債務を負ってはいなかったが、日本からの投資を受け入れていた国は沢山あった。これらの国において『日本が資金を引き上げる』という不安から通貨危機が発生した。特に新興国はこの打撃を受ける。また米国・欧州などの主要先進国に対する投資量も多かったことから、これらの国々でも信用不安や景気減速の原因となった。


 なにより『円』は世界の基軸通貨の一翼を担っていた。これが大暴落したのだから通貨スワップを結んでいた米・欧・中国などの通貨に対する不安が引き起こされた。ドル・ユーロ・元とて、繰り返される経済危機と通貨膨張策の繰り返しで危機を内在させていたのだし、通貨スワップが無限スワップであったこともあり、世界は日本発の恐慌に共同で対処することになった。イヤイヤでも。

 これらの観点から見れば、円通貨危機は世界に波及した。しかし当時の日本人には、世界のことなどもはや、どーでも良かった・・・


  ※     ※     ※


 失業率は急上昇し、企業倒産が激増した。国民は生活が酷く苦しくなったことを思い知った。多くが低所得に喘ぎ、生活保護受給者や年金生活者は一層苦しんだ。日本円は暴落し、ブレトンウッズ体制以降、もっとも低い価値まで下がった。感覚的いうなら、今まで1$=110円台だったものが、1$=190〜220円くらいにまで下がったような大暴落だった。値段から言えば『半値』だが、実際には価値はその数分の一以下に下がった。大暴落だった。


 海外からの輸入物品は高くなった。特に原材料資源の高騰は痛かった。国際決済における円の信用が劇的に低下したために、為替取引に必要な各種保証金も爆上がりし、金融商品に対する信頼度の低下から収益性が著しく悪化もした。なにより急激なインフレが発生した。このため金融資産だけでなく不動産などの資産まで目減りする異常事態となった。

 国内企業の倒産・失業はうなぎ登りに悪化し続け、社会全体の不安を激化させた。社会不安から犯罪が激増し、自殺者も相次いだ。低所得者が多くいたから生活は困窮した。しかし今回は所得の多い富裕層も打撃を受けた。特に預貯金の価値が激減したからだ。このため、皆が苦しんだ。


 結果、戦後、もっとも酷い時期となってしまった。政権支持率が一ケタ台に下がり、総選挙が行われたが、政権に返り咲いた自民党も決して嬉しくなかったろう。この尻拭いをするしかなく、そのためにはやはり増税しか無かった。結局、激しい反感の中、増税は強行され、国民はますます貧しさを実感した。


 増税に際し、一部預金封鎖が行われた。ある一定額以上は引き出すことが出来ず、この後で増税が強行された。企業増税が行われたのも当然だったし、行われるべきだった。国民からの反発が強かったこともあり、海外に資産を逃していた企業や人物にも、当然のように追徴課税・重加算税が掛かった。また、民間人だけが犠牲を出すことへの不満から、国有資産の売却も進められた。


 一例をあげれば、土星の小惑星タイタンの日本領がそうで、ここはIMFの監理下の元、資産売却の一貫として国連拠出の財団が『租借地』として差し押さえたものだった。支払いは99年賦とされ、国連はこの土地を国連安保理下の宇宙組織に貸借した。資源開発などによる収入が借金のカタに持っていかれることになったが、あまりにも遠く、また資金不足などが重なり、長いこと放置に近かった。実際、ガミラス戦役時でさえ無人の監視施設と、放置されていた日の丸の旗が一個立ってるだけの僻地で、実際に活用されることになるのはガミラス戦後の、新生地球防衛軍宇宙基地になってからである。ということは、2200年以降も、ここの債務は残っているということだった。そういう契約だから、仕方がなかった・・・。


 この大恐慌は日本においては大体、2160年代中ごろまで数年の間、続いた・・・


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 ところが、経済というのは『見えざる手』によって自然とバランスが保たれる『不思議な秩序』を内在もしていた。つまり『良いこと』もあったのだ。

 発生したインフレによって国家債務が減少していった。円が下落し、国債の価値が下落したのだから当然だった。

 さらに日銀は通貨暴落によって発生した悪性のインフレに対処するため、段階的に政策金利を上げて行った。このことでますます債務は減少する一方、政府に対しては国債の増発抑制を促すもの(←国債の利子が高いから政府の負担が重くなる。よって日銀が政府に対して「必要以上に刷るな! 殺すぞ!」と言ったようなもの)だったから、将来的な財政再建の可能性が見えてきた。勿論、カネを借りる側の企業からすれば大変困ったことだったし、ローンを組んでいた人たちの多くが困窮するという『大変良くない』状況連発と引き換えに、ではあった・・・。


 同時期、暴落した国債を保有していた(主に国内の)金融投資家・・・とはいえ大抵は銀行であったために、彼らを救済するために大規模な公的資金が投入された。これには増税分が当てられた。結果としてこれは『価値の下がった国債の乗り換え』という形での、国債消滅を意味していた。

 とはいえ、公的資金投入は激しい国民の反発があった。そのため、強行されると同時に金融再編も強力に進められ、弱い銀行の淘汰が進んだ。また金融規制の大幅な緩和が実施され、これが日本を金融国家へと飛躍させる原動力になった。


 実際、金融整理と淘汰、強化が財務省などを中心に推し進められ、2000年代の三大メガバンク+ゆうちょのような、世界的に見ても優良で強力な金融機関が、今度は地銀や信金統合によって次々と生まれ始めた。また金融規制緩和から世界的な投資ファンドが日本にも出来るようになっていった。勿論、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のような独立行政法人なども再び息を吹き返した。


 特に国債償還に合わせて日本国が購入者を救済するという方法をとったことから、国家債務が大きく減少したのと時を同じくして長期金利が徐々に安定していった。またこれは財政均衡にも寄与したことから、政策金利上昇・金融改革の効果と相まって政府財政が安定していった。


 そして暴落を続けていた『円安』の効果が急激に現れ始めた。

 まずは日本の輸出力を飛躍的に高めた。と同時に対外的にドコを見ても『円安』だったことから、海外にある資産からのリターンが復活した。

 こうした経済状況の好転が日本国への信頼を回復させ、経済活動自体が急速に復活していった。輸出の持続的な増加から国内景気が回復し、失業率も改善した。円が安くなったために労働賃金自体も相対的に下落し、上昇期にはそれなりの可処分所得の増加をもたらしたのだ。また資産減衰は結果として、国内の貧富の格差を縮小した。金持ちはより損をしたことになる。円が下がったからだ。


 しかも輸出力が回復し、国内景気が急回復していくにつれて株式市場が活況を呈し始めて来た。庶民の所得の増加と、「カネを沢山持っててもインフレと通貨安で資産としての意味がないから、何かモノを買おう」という、よくある行動が日本でも見られたために、国内市場では家計部門の耐久消費財支出の伸張が見られた。海外からの輸入品は『高い』ので、国内において製造業も復活していった。ここでは『モノづくり大国日本』の面目躍如といったところだった。


 その一方で対外資産は各国の経済が回復していくと同時に増えてもいった。それでも基本的には『円安』だったので、1$=100円の時よりも、1$=200円の時の方が手取りが増える(←換金しないなら含み資産が増える)の理屈から対外収支が改善していった。円安は海外からの旅行客の爆増を意味し、これがサービス収支の黒字をもたらした。


 通貨危機の結果として、債務激減と政府の財政規律の確立・円安・産業力の回復と対外投資からの莫大な収入という、成長インフレを加速させる要因がそろった段階で、暴落を続けていた円の底値感が出てきた。

 それまで頃合いを見計らっていた投資家たちが『日本買い』にシフトし始めた。特に海外投資家は円を売って利益を出しつつも、日本の基礎力ファンダメンタルズの高さは十分に判っていたから『下がりきったところで買い直す』という当然の行動に出た。お宝をジャンクの時に拾っておけば、あとは勝手に日本人が頑張って国債や通貨、株式の価値を高めてくれる。日本人を飼いならしているのと同じことだ。


 しかも円は基軸通貨であったこともあり、世界各国とも有形・無形の支援をせざるを得なかった。IMFなどは支援したし、その原資は欧米など各国から拠出された。これも日本円の上昇と安定に寄与した。イロイロと小煩こうるさい制約つけたり、高めの金利を設定して日本に貸したカネを熨斗のしつけて回収したから、こちらから礼など言う必要もなかっが、まあ、日本は礼儀の国といわれているので、一応「ども、ありがとさん・・・m(_ _)m」だ。

 

 後もう一つ。この時、日本が保有していた米ドルを殆ど手放さなかったことは世界から評価された。カネが無い時に取り崩し預金に手をつけなかったということだが、これが無限スワップ締結先の米国を中心とした世界金融秩序の維持保全に役立ったし、このカネを元ガネとして再び円を発行させることも出来た。政府と日銀に市場が信頼感を寄せたということでもあった。


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 これらは変動相場制による自律的な調整機能と、日本独自の金融政策を採用出来るという柔軟性、資本の自由な移動が保証されているということによる損得のトレードオフの成立という、現代資本主義の柔軟性の実例と言えた。


 このため2160年代の終わりになると、世界のドコよりも最初に経済的な回復基調を見せ始め、同時に世界的に見ても債務再編と金融力増強がいち早く計れた国家となった。かなりの資産を減らすことになったが、同時に債務も減らすことが出来た。貧富の格差は『みんながより貧しくなる』方向で縮まり、産業・金融力は回復した。国内外の不動産などの価値も円高へと推移する間に上昇したし、財政均衡と債務減少から国内市場の活性化に成功した。下がりきった労働賃金は、あとは上昇しかなく、景気回復に従って国民所得が増大した。正確には『元に戻った』だけだが、昨日より今日のほうが銀行口座の預金額が増えていれば、それだけで嬉しいものだ。


 こうして日本は莫大な債務を外国人投資家の投機攻撃によって、プチデフォルトの形で消滅させた。ただし国民の大きな犠牲を伴った。円は急激に価値を減じたし、国内外の保有資産も長いこと損のままだった。もともとが高すぎたからだ。とはいえ、真っ黒けだった事は言うまでもない。黒字幅が縮小しただけのことだ。勿論、それだけでも損したから悔しい事には違いないが・・・。


 あと最後に、国民心理の面から「国債という国の借金(←実は間違いで正しくは『政府の借金』だ)が、事実上、無くなった」というプレッシャーからの解放は大きかった。理屈から言えば、GDPの二倍までは国債の増発が可能ということでもあったし、実のところ、日本が強靱だったのは国債という『借金』が、民間の資本となり資本増強され、これを原資としたカネが日本国の富を形作っていたからであり、政府の借金もまた公共事業や社会福祉に充当されていた『Win-Win』の関係にあった。国債は増やせば増やすほど国富が増大する。特に自国内に流通しているのであれば。実際、日本は1970年代からこうして国富を増やしていったのだ。


 唯一の心配は利払いが出来ないことだ。だから利払いが可能な方法を考える必要がある。例えば高インフレの抑圧とか、税収入のUP。国内市場増強策。大きな経済力を保持した上での経常収支の黒字化と、持続的な成長を見込んだ上でのプライマリーバランスへの配慮(←やれとは言ってない。高インフレをもたらすような投資や国際の増発はやめるべきということ)が必要だろう。そして国内成長が他国にも及び、全世界的な持続的な成長があれば、世界各国全ての国で国債の発行量が増え続けても、大きな心配はないとさえ言える。経済破綻した国の多くが、その後立ち直り、いまなお生き残っていることを考えればいい。後は増やした国債が、自国民および全人類の富の増加に使われればそれでいいだけのことだ。

 国債の発行による国民の富の増進→成長インフレの創造が出来れば、今度は持続的な成長インフレが、結局、債務を自然消滅させる。増やして豊かになり債務も減る・・・という、誠に結構な流れが、これまでの人類の歴史でもあったのだ。時にハデにバブって死にかける時もあるのだが・・・


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 結局のところ、この形が日本の債務を減らすという現実的な方法だった。円安とインフレ、国債の暴落という国民の負担で国家債務を減らしたということだった。そして日本は再び経済の持続的な成長を続ける。債務がなくなれば、戦後日本や21世紀初頭の中国と同じことが起こっても不思議ではなかった。またこの経済成長がさらなる国家債務の減少をもたらした。


 強大な経済力・成長力を秘めている金融・産業国家は、大きな破局によっても再生する・・・というのも、1992年の英国ポンド危機の時に証明されていた。産業力・金融力を回復し、実力よりも低い『円安』基調がしばらく続くことになり、国家債務は減った。ということは、国債増発力が回復したということでもある。少なくともGDPの二倍くらいまでは増発できるはずであるし、それだけ流通量を増やせるのなら爆発的な経済成長だって(やろうと思えば)可能だったはずである・・・。


 これらが可能だったのは、やはり元々日本が強大な経済大国だったことも一因だ。資産を保有している国は大損害を受けても回復出来るという、歴史的に見てもよくある普遍的な事実が踏襲されたに過ぎなかった。その意味からして、この時の日本円の通貨暴落は世界史的に見ても『フットノートの通貨危機』としてしかかかれないほど扱いは小さい。逆に言えば、この結論しかないのだ。何も真新しいことは、無い・・・



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