§5-4-10・【本編とは無関係】日本国債の最大外国籍保有者がなぜ中国系なのかを考えてみる(後編)【もう共産主義、やめたらいいよ】

○中国人債権者はジョージ・ソロスと同じように考える、ごく普通の『悪どい投資家』


 そこでもう少し別の話しをする。日本国債の保有者割合の推移だが、2004年頃は全国債保有者(含む短期国債)の4%程度だったものが『何故か』急激に上がり始め2013年には8.4%にまで増えた。この割合だけを単純計算すると大体40兆円前後。勿論、この全てが中華系であるはずはないものの、かなりの割合だと考えてみる。そして中国の日本国債保有の特徴の一つに『短期国債が非常に多い』という、他の国には殆ど無い際立った特徴もある。短期は利率が安いから、普通は長期国債の方を購入するものだ。

 なぜ短期債の方を三倍以上も購入しているのかの理由は(申し訳ないが)筆者には判らない。例えば中国が人民元安などの為替介入をする場合には資金が必要となるが、この原資は通常は短期国債を使い、外為市場で人民元を売り飛ばし他国通貨を購入して人民元を誘導したり、その後のインフレ撲滅用金融政策である『不胎化』の過程でこの逆の操作を行ったりするので、この結果なのかもしれないし、もっと別の何か中国特有の理由があるのかもしれない・・・。


 この後、2013年4月4日の金融政策決定会合後の推移を見ると、翌年2014年度3月期では約4%にまで下がっている。大規模な国債発行と放出があり、そのために分母が増えたということもあるので単純な計算は出来ないが、大体、『ガイジン枠』で数10兆円前後が売りに出されたのではなかろうか?


 そしてこの間の円ドルレートの推移を見てみる。2013年度は1$=79.8円(約80円)、しかし2014年は1$=97.6円(約98円)。大体20円引きだ。この下落傾向は更に続き、2014年は1$=106円に、2015年には1$=121円まで暴落する。此処で一段落だ。この後は上昇(持ち直し)に転じる。


 逆に言えば、安倍政権下のわずか三年で40円も下落した。理屈から言ったら30兆円前後は円が売り飛ばされない限りここまで減らない。しかも下落は単純に一直線ではない。そもそも日銀が一日で10兆も買い込むわけもなく、同じように中華系ファンドが一挙に何十兆円も放出することもない。日銀や売買主は時間をかけて行うだろうし、その間には『空売り』や『押し目買い』があり、下がったら買う→買ったらまた売る・・・の動きも当然ある。そのほうが儲けが出るからだ。そもそも一瞬で放出したところで買い手など(たとえ日銀でも追い)付かない。


 実際、円が80円〜90円台の時、たとえば10兆円ほど売却すると円が13-15円程度は下がるのではないかと考えられるので、日銀がまずはこの程度の円放出を行ったと考え、残りの金額を考えると、なんとなく外国人系含めてファンドさんたちが20兆円前後もしくはそれ以上の売却というのがありえそうな数字で、時間的経過のズレを織り込むと、金額がなんとなくビミョーに似てくる。中国以外の他の国も売り飛ばしにかかったかもしれないし、2004年から2013年の国債保有増加分の全てが中国系ではなく、金融緩和時の売却の全てが中華系でもないとしても、数字としてはまんざらでも無くなるはずだ。事実、この後短期国債の保有者割合で中国は三位もしくは更に下位にまで後退しており、2018年度では欧米系がトップになっている。もうあまり買い込んではいないのだ。


 この事から言えるのは、『中華系ファンド及び中国の投資傾向は、損するのを激しく嫌う』という、まさに『ごく普通の外国人投資家』と同じということだった。国策に従うのではなく、市場原理に従うのである。これはある意味、驚くべきことだ。連中は共産主義国の人間のはずだからだ。

 否、ここにあるのは我々が良く知っている中国人の姿そのものだ。共産主義だの社会主義だのなんだのではなく、『利に叶うことは、理にかなう』という超現実主義的かつ極めて合理的な、まさに『望ましい資本主義者』の姿、そして利にアザトい攻撃的かつ積極的な(しかし知恵はあるアタマのよい)中国人の姿そのものだ。




○なぜ中国は日本円を大量購入したのか?


 ではなぜ中国は、もともと大量の日本国債を購入していたのか? についてだが、一般的には『対日輸出の時、円高ならば大量に売れる』もしくは『円高誘導すれば日本からの黒字を減らせる』とは言えるだろう。もしくは対日黒字の結果だとも思える。しかし筆者は全く違う意見だ。

 そもそも拙文・第14話で話しをしたように、中国と日本との貿易は香港を含めた三国関係で考えるべきで、中国は日本に対して莫大な黒字を出しているわけでもないからだ。つまり、より正当な理由がある。


 一つは『人民元の通貨供給量の増加に合わせて日本円を増強したから』と考えている。

 中国の人民元を見る時に、大変重要な事がある。

 それは『米国の通貨供給量の増加と、人民元の通貨供給量の増加がほぼ一致している』という『謎』である。たとえば2009年から2013年(安倍政権成立前)の米国の通貨供給量の増加はおよそ300兆円だったが、同時期の人民元の通貨供給量もほぼ同じなのだ。なにより上昇率がほぼ同じで、グラフにしてみるとピッタリ重なるほど一致する右上がりだった。異常に強い相関性がある。

 

 これは中国国債を米ドルで購入したことによって、市場に人民元が放出されたと考えるべきであり、逆に中国中央銀行が購入した米ドル(米国債)は日本と同じおよそ100兆円相当しかないことを考えると『誰かが200兆円分、買いましした』と考えるしか無い。


 勿論、中国国内金融機関の可能性はある。しかし金融機関が高債務負債を大量に抱えていたとしたら、国債購入力は限られる。すると200兆円分まるまるではないにしろ、かなりの部分は外資に頼ることになる。これが『在米中華系ファンド』であっておかしくない。しかも彼らは事実上、中国共産党政府の『国策会社』だ。在米の中華ファンドが中国国債を購入するということは、中国政府が裏で糸を引いているということだ。

 しかもこのやり方には『良いこと』もある。人民元の高騰をおさえることが出来るのだ。


 前述のように人民元高は海外からの高金利債務を抱えている場合には大変ありがたい。海外への投資・買収の時の負担もより軽くて済む。また原材料含めて海外からの輸入に頼る場合もだ。そしてこれらは近年の中国の傾向でもある。

 逆に人民元安は輸出企業にとってメリットとなり、対外投資からのリターン増が見込める場合には望ましい。輸出での黒字がその国の通貨の価値を守るのに貢献するのであれば通貨安は特に意味がある。

 このどちらの利得がより望ましいかは一概には言えず、国の財政・経済パターン・市場規模と傾向によって決定される。


  ※     ※     ※


 ここからは一つの『夢想』のようなもので、なんの根拠もない。全てを例え話として、こんな話しをしてみる。

 中国が米国への輸出で黒字を出した場合、これを人民元に換金すれば(=中国に持ってきたら)人民元高の要因になる。すると輸出力が落ちる。高すぎるのは困ることだ。もし人民元の価値を守るのに「中国は輸出で黒字があるから、債務を抱えても大丈夫」と言いたいのなら、輸出力が低下するのは避けたい。それ以上に、中国国内の輸出企業や輸出業者からの反発を食らうのは避けたいだろう。なにしろ反政府抗議運動は一瞬にして国家破滅の内戦になりかねない独裁国家だからだ。外国からカネ借りる時には、自国通貨が高いと手元にゲットできるカネの総量が増えるし、利払い負担が減るからありがたいのだが、こうした条件があるのなら人民元高過ぎるのは困りものだ。


 だとしたら、たとえば中国企業(←かなりの割合で国営企業もしくは中央・地方政府系企業)に対し、製品輸出の決済にこの中華ファンドを使うよう命じたとする。すると米国内決済であるので、通貨はドルのままだ。ここに溜まった米ドルを、そのまま中国国債の購入に当てるとしたら?


 形の上では米国による中国国債保有率が上昇したことになる一方、人民元高は抑制される。少なくとも購入分は(理屈から言ったら米国が人民元を買うことになるのだから当然)下がる。輸出競争力は落ちない。しかも帳簿だけみると米国からの資金の流入ということにしかならない。『隠す』事が出来るはずだ。

 無論、この場合、決済には米国の銀行を使う必要がある。銀行開業には州の規則があり、新規開設の審査はどの州であっても、そうラクではない(厳格ではない州もあるにしろ)。中国人が闇金でも開かない限り、銀行を開設するのは敷居が高い。なら一旦、米国国内銀行へ入金後、投資という形で中華系ファンドでの運用に回す・・・というやり方にすれば良く、十分考えられる。全てドルで行われることも言うまでもない。


  ※     ※     ※


 実際にやっているかどうかを確認する証拠を引きずり出す事が出来なかったことを読者の皆さんにお詫びする。結局のところ、全証拠を確実におさえるためには『ファンドの株主になって株主代表者訴訟なり株主総会なりで資料請求する』か『米国の司法介入』の二つくらいしかないからだ。

 しかし、中共のこのやり方自体は可能だとは思われる。そもそも米国で外国系ファンドを運用している国は沢山あるのだから。ただし、自分の国への直接投資に使う国は殆ど無い。大抵は第三国〜特に政策金利の高い新興工業国への投資目的か、逆にアメリカでの運用が主だ。なによりこの中国のやり方はハイリスクでもある。問題点は三点ある。


 一つは『為替リスクが大きくなり、しかも人民元安は致命傷になりかねない』という債務リスクの増大である。『米ドルを直接、中国にぶっこんだ』ということに他ならないこのやり方だが、中国政府にとっては、如何に国策会社であろうとも『外債』に他ならない。なので人民元が高いなら良いものの、人民元安・米ドル高になると利払いの金額が飛躍的に増加してしまう。払いきれなかったら、即デフォルトだ。


 たぶんこの場合、在米中華ファンドに「弁済をお願いする」という形になるだろう。そしてそれは所詮、国策会社なのだから可能だろう。しかし「不正取引」に限りなく近い。ここでもう一つの問題が出てくる。 

 つまりもう一つの大問題とは『在米企業は、米国の法律に従う』しかないということだ。金融決済が不明瞭であると米国関係機関に判断された場合、米国の法に従って裁かれるということだ。中国政府の保護が及ばないのである。ここで真実が明らかになる日が、いずれくるかもしれない・・・。


 そして真実が明らかになる直前には、第三の問題、『中国がデフォルトを起こし、米国などから流れ込んでいた途轍もない金額のドルが一緒にこの世から消えて無くなってしまった』という世界大恐慌の引き金になりかねないのだ・・・。


 仮にこんな風なやり方を実践しているとしたら、中国が自国での経済成長のために通貨膨張策リフレーションに頼りすぎていることに端を発する。そしてリフレのために米国の通貨供給量よりも更に増やしたいのであれば、円を購入する必要が出てくる。というのも米国中央銀行(=連邦準備制度)+日銀の資金市場供給増加量まで人民元を増加させても『担保金』は持っていることになるからだ。


 これが一時期、中国が日本国債(=日本円)を購入しまくった主な理由だろう。経済成長を支える資金的バックボーンの一つとして、安定している日本円を購入し、その購入分を担保として人民元の通貨供給量の増加を図った・・・ということだろう、と。そして『万が一の取崩用の保険』としても使うというワケだ。逆に、中国中央銀行は何も考えずに輪転機を回しているわけではないと考えられる。これが日本円を中国政府や国策ファンドなどが購入した理由の一つ目だ。


 もう一つは『中国国内に日本からの投資を誘致したかった』だと考えている。

 円が高ければ、人民元は安い。日本人が、中国や中国人を買うコストが安いのだ。日本の技術と生産拠点を中国国内に誘致し、国内市場の活性化に役立てるつもりなら、自国通貨安によって招き入れるか、さもなれば人民元の利率(この場合、政策金利に相当)をあげるしかない。

 自国市場が脆弱だったり、インフレ率が大きい場合は、後者より前者の方が中国人民に対する痛手は少ない。いやインフレ率が高いならば、そもそも政策金利は『高止まり』のはずだ。ここに更に金利をあげれば、当時の反日大暴動が大規模反政府暴動に至る可能性が高い。事態がそこまで悪化したら、火の手を消すにはもはや戦車の履帯で踏み潰すしか無く、それはもはや非常にハイリスク過ぎて選択できないだろう。なら始めから避けたほうがよい。

 なにより中国国内への投資なら、全て中国の国内市場の増強ひいては中国GDPの増加と税収入のUPに使える。ポケットにコッソリ仕舞い込んで日本に持ち帰る訳にはいかないからだ。人質といってもいい。

 この『自国通貨の発行量の保証』と『投資の誘致』の二つの要素がデカいと思うのだ。


 筆者の考え方は『金融の意味をより大きく考える』であり、逆に為替・・・たとえば円安になると日本が有利とか、人民元安は中国の輸出にとって有利だからきっと人民元安を誘導するだろう・・・みたいな考え方にはかなり否定的で、しかも現実的でもないと考える。


 ある程度の資本と金融力を蓄えた強国になれば、単純な自国通貨安は利益にならない。特に対外輸出力が頭打ちになっている(=増加できない)日本のような国や、対外債務が大きい中国のような国なら自国通貨高の方がメリットが出てくる。アメリカが本来、ドル高で推移しているのはそういうことだ。

 しかし現在の中国のように経常収支で赤字を出し始めたような場合・・・特にサービス収支の大赤字という、いわゆる日本などでの『爆買い』の結果等のような場合には、対外債務が高金利負担となっている国では、この赤字はマイナス要因にしかならない。中国国内の国富の増加に繋がらないからである。そして、ピンチになれば、外国の何処からか突然、引き抜きを始めるようになってもおかしくないのだ・・・


  ※     ※     ※

 

 つまり、万が一に日本がデフォルトなどを起こした時、日本円(や株・国債)は暴落する可能性があるが、この時、暴落させる主要因は外国人投資家による売りで、この多くが中国人の可能性が高い、ということになる。それは彼らをして「損するのは絶対困る」からであり、また連中には日本人と心中する必要もなく、投資家の本能をもって行動するだろうと予想できることから、日本は最悪、1992年に英国がJ・ソロスの浴びせ売りでデフォルト寸前まで追い込まれたのと同じ状況になる可能性があるということだ。

 筆者の私見でもあるが、実は中国人はなかなか合理的でアタマが良いのだ。しかも手強い・・・と。


  ※     ※     ※


 ただし、一言だけ付け加えておくが、為替において変動相場制を採っている国は理論上、デフォルトはしないor極めてしにくい。逆にいえば、固定相場制(←ペッグ制・通貨バスケット制を含む)を採用する国は財政破綻もしくは国家破綻にまで至る可能性がある。

 筆者は日本人で、(中国人にパテントを支払うこともなく)漢字を使わせてもらっているものの、上記の内容を中国語で何とかいたら良いのかわからないので、もうやめる・・・



          【 後編終了 】

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