§5-4-9・【本編とは無関係】日本国債の最大外国籍保有者がなぜ中国系なのかを考えてみる(前編)【バレたアル(`ハ´ ;)】

 この一話分は『長い割には、あまり関係ない』話なので、特に読んでほしい内容ではありません。飛ばしても結構です。

なぜ日本国債の最大保有者が中国人なのかを考えてみるという話数です。

m(_ _)m


   ※     ※     ※


○日本国債の外国人最大保有者は何故か中国


 2010年代の日本国債を語る上で、ある一つの奇妙な状態があることは、意外と知られていない。

 国債の消費割合で外国人が締める割合は5-6%くらい、短期国債を合わせても10%少々と極端に低いのだが、この外国人保有者の半分以上が中国人もしくは在米中華ファンドだという『極端な偏り』があることだ。ということは、その理由について考えてみねばならない。


 というのもある意味、全く『旨味のない』日本国債を外国籍が大量に購入する意味は、本来無いからだ。

 外国人からみる日本国債は『超低金利で、しかも全く動かないので(自分の国の為替差損の所為で)メリットが出てこないから買うメリットが少ない』と映る。逆に日本人の場合、為替差損の問題がなく、しかも国債は日本国が永久絶対に価値を保証してくれるという『安全資産』なので購入する。金利が低いということは逆に国債の価値が下がっていないということであり、当然、利子もついてくる。雀の涙ほどではあるが。


 このため外国人が日本国債を買わない理由は判る。韓国のように政策金利自体が高い(2018年次で大体1.5%。発展途上国としては低いが、先進国としてはかなり高い)わけでもないし、アメリカのような成長インフレも無い国なのだから、なお一層だ。要は『動かなければ、それまで』だ。カネは氷とは違う。溶かしたら損する。また債券は生き物なのだから、動かないということは『すでに死んでいる』のとほぼ同じという事だし、使役動物つかいものにはならない。


 逆に言えば東証は上下する。こっちは『動く』のだ。特に日本には世界的な優良企業が沢山あり、これらは世界に対して売上を計上できるから、為替との連動性が高い。つまり円高になれば株価は下がる傾向が出てくるということだ。しかも日本のGDPに対する対外貿易の比率は、実は世界的に見ても『一番低い』くらいだ。日本よりも対外依存度が低いのはアメリカくらいのもので、実は日本は国内需要が大変強い国なのだ。挙げ句、良い年も悪い年もGDPは似たような値。だから対外貿易で赤字が出ても国がコケることはないし、円高になっても国は関係もない。ただ単に企業一社の株価『だけ』の問題に収斂できる。


 円安ならば輸出が増えて株価は上がるし、逆なら下がる。国内景気が良ければ買いだし、悪ければ売りだ。なにより上がれば儲かるし、下がれば『空売り』で儲けるだけのこと。単純な論法で勝負出来、土俵自体は安全で見通しが立てやすい。なら、カネを突っ込んだ企業の業績見通しを、関連条件との兼ね合いで見ていけばいいだけで、あとは高速取引のアルゴリズムの優れている方だけが勝つ。特に動かすポイント数の桁外れの多さからクレディ・スイスが撹乱要因だ。少なくとも金融庁はそう見ている。



○中国人が気づいた日本国債の価値


 動けば『儲かる』時、動かない市場に何の魅力があるのか?

 ここでもう一度、日本国債の外国人保有者とされるターゲットについて精査してみる。


 2010年代の一時期、日本国債の最大の外国人購入者は中国人だった。これは当然、中国国策会社系のファンドだ。これには重要な意味がある。拙文第49話で述べたように、当時の中国は『管理通貨バスケット制』に限りなく近い為替政策を採っている。市場の自由にまかせるわけではなく、中国の金融政策担当者が任意に決めるものであり、主に世界の主要通貨の動きを見ながら決定する。


 ならば中国人にとっては、ドル・ユーロ・ポンド・円の四つの基軸通貨の特徴が重要になってくる。

 ドルは世界で最も価値があり、透明性が高く、健全な通貨だ。なにより米国という国家の生産力それ自体が担保だ。なので他を圧倒する強さがある。しかしドルは供給量が多く、また米国の強い経済力もあって値動きが激しくなる時が周期的に発生する。特にFRBの金利政策の影響も大きい。なのでリスクヘッジが必要となる。

 これに対し円は真逆で、大抵は『円高』でしかも値動きが相対的に小さい。基本的にはデフレ下にありインフレになりにくい。つまり通貨や国債の価値が減衰しにくい。『安定している』のである。米ドルが先進国であるにも関らず金利3%もの高値になる一方で、日本の長期国債の金利は0.01%だったこともあるくらいだ。日本国債は、ほぼ『死んでいる』。


 だからこそ、円の使い方が出てくる。

 投資には米国債やポンド等を使うが、もし万が一に穴を開けた場合、日本円を売却してこの穴埋をしようと試みる、という動きだ。というのも、日本円や日本国債は安定していて『価値が下がりにくい』。なので予め(出来るだけ安い時に)購入しておいて、もし(大抵は日本以外の投機先で)どこかで『火だるま』になった時、投資家たちに対する利払いに対処するために、この円を売却して一時的に手許現金を増やす・・・というやり方だ。


 投資ファンドの原資は一般人から集めたカネだ。勿論、国からの投入金もあるだろう。これの利払いは毎日、なにがしかの形でやってくるから、万が一に相場で大損したら、この時の償還に円→現金化して支払うのだ。そして円は(インフレがないので)価値が毀損しにくい。なので長く保有していても目減りがない。きんなど現物資産よりも乱高下しにくく、非常に安定しているというメリットがある。デフレならなお一層だ。よって『万が一の取崩用の保険』として使う。勿論、相場が落ち着いてカネが貯ったら、もう一度、円を買い直す。


 加えて、日本円を保有することで、自国通貨の発行時の裏打ちとできる。世界最強通貨でなくても、最安定通貨であれば持っていて損がないからだ。その日本円でさえ、日本政府が100兆円ものドルを保有していることを裏打ちにして発行しているのだから、つまり『変動幅の大きい米ドルを、円でロンダリングした』とさえ言える。価値が減損しないドルだ。


 特に中国のように経済成長しなければ死ぬ・・・という厄介な政府の場合、経済規模拡張のために人民元を増やしたいならば、その裏打ちとなるドル増加が必要だ。その分、米ドルを購入しなければならない。しかしそれは人民元安・ドル高を招く。国際問題になりかねない。また米ドル一極集中は前述のようにFRB次第で『不安定』になりかねないし、万が一に米国との紛争にでもなったら、最悪、米国が米国債の利払いを仮停止する『準戦時体制』を採りかねない。普通はここまでしないが、それでも安定資産が別途必要になる。これが円の使いみちだ。




○謎の円安の動きと中国との関連について


 ここで大変興味深いが、いまなおよく判っていない『謎の円安』の動きを考えてみる。これは尖閣列島問題→第二次安倍政権への政権交代時に起こった、大変不可解な動きだ。詳述する。


 ことの始まりは石原慎太郎が尖閣列島を東京都に組み込むといい出したことに発する。この後の動きを見てみると、意外なことに一ヶ月程度の間、実は中共側に動きは無かった。彼らの政府声明は要するに「事態の推移を見守る」だった。中共政府は激しい反発さえしていない。つまり中共は内々、『事態を穏便に済ませたい』という意思があったと思われる。

 しかしその後、野田政権が尖閣列島国有化を宣言した後で、状況が変わる。少なくとも中共はこの動きを見て、民主党を見限ったようである。


 この時、中国でよく言われていた事は「日本円を政府が意図的に購入して人為的に円高をつくれば、日本の輸出力は低下する」という国家戦略だった。これは中国人の多くが口にしていたことだ。当時、日本は円高で苦しんでいた。大体、1$=¥80だったので、為替攻撃を行えば戦争ナシに日本を跪かせることが出来ると、頻繁に語られていた。


 では実際にどうなったか? 

 動きはこの逆になった。何故か??


 安倍政権が復活して最初にやり始めたことは大規模金融緩和だった。この直前、中国は意外にも安倍政権に擦り寄るような発言を繰り返していた。尖閣列島に関する発言の要旨は「日中共同で諸問題に対処すべき」という言い方の、融和への期待感を強く泌ませる内容の連発だった。実際、第一次安倍政権の時には、最初の外遊先に中国を選んだくらいだったから、ある程度の期待を持っていたのだろう。

 特に安倍晋三は『自主独立・独自外交』という、むしろ反米・日本復古主義的な人物と見られていたから、憲法9条の完全削除や対米自立を目指す可能性が高い(と、当時は思われていた)ので、対外世論の取り込みの意味からも、対中宥和政策を採用するのが当然と思われていた。


 しかし尖閣問題では(当時は誰にとっても意外だったが)対中強行策を打ち出し、親米政権の色彩を強めた。それどころか対米従属の、従来の自民党寄りの政策を色濃く出してきたのだった。これは自民党が下野し、塗炭の苦しみを味わうなかで学んだ『現実主義』の結果だった。


 この動きがハッキリ見えてきた年末頃、一気に円安が進んだ。今に続く円安基調の始まりである。

 この時の動きを更に見てみると、実に興味深い推察が出来る。一連の金融緩和策により、日銀の円放出量は、とりあえずは大体数10兆円以上だったと推定されていて、これで10-15円くらいの円安を招いたのではないかと推察している。しかし下落は更に続き、数年後は120円近辺まで下がってしまった。ということは、日銀以外にも大量に日本国債を売り払った連中がいるということだった。誰が売り払ったかを見てみると、アメリカの投資ファンド系企業10数社が突然、表に現れた。しかしこのファンド、登記はアメリカだがやたらと華系資本が注入されている、例の『謎組織』だった・・・。



○人民元が抱える本質的な脆弱性


 この動きは、こう考えることが出来る。

 安倍政権が中国との関係改善を余り望んでいないと判った中国は、次に重要な関心事は『損しない』ということだった可能性が高い。

 安倍政権の金融政策は日本国債の下落を招く。ならば大量にもってる日本国債を出来るだけ素早く売却しなければ含み損が出る。なにより、中国は当時から他の高金利債務が沢山ある。これの利払い金は常に必要で、日本円を現金化しても使いみちには困らない。ならば含み損を出さない方が良い。


 また円高なら人民元の裏打ちとして円を保有する意味はあるが、下がれば共連れで下落する。なるほど、通貨バスケット制に似たような制度をとる中国からすれば、人民元が下落するから、一見、たしかに良い流れにも思える。しかしここに外債があれば話しは別だ。外国向けの利払いの実際の支払金額が爆増するからだ。為替リスクのためだ。実質レートを無視して考えてみる。


 1$=5人民元だったとする(実際は6-7人民元くらい。計算が面倒なので5人民元とする)。この時、100ドル借りた中国人がいたとする。金利は10%とする。この場合、償還期日の利払い含めた支払総額は550人民元だ。

 これが1$=10人民元まで人民元安が進んだとする。同じ条件ならば、1,100人民元にまで負担が膨れる。利払いだけなら50人民元増(それでも倍に膨れ上がるが)だが、償還するとなると大変な負担増だ。なにより中国が借り込んでいる金額は10ドル・100ドルのレベルではない。


 そして万が一にも支払不能になれば、中国はイッパツで即デフォルトとなる(ただし即国家破滅という訳ではないのだが…)。その段階になると、いままで隠し通してきた中国国内のあらゆる債務問題が噴出する。なぜなら『もう返してくれるアテがなくなる』という市場心理不安が出てくるからである。

 しかし人民元高になれば対米輸出力が低下する。貿易黒字もまた人民元安定のための一つの指針であるなら元高はあまり望ましくもない。為替に関しては、何故か上下の幅が狭いと思えば良い。輸出で黒字を出し、それを原資としているのなら元安はありがたかったはずなのに?


 ということはつまり、中国は高金利の外債を多数抱えているのではないか? ・・・という恐るべき結論が導き出せる。

 これが、日本を円高にして攻撃する云々うんぬん以前の、人民元が抱える本質的な脆弱性なのだ。


 このため円安による損失を出来るだけ回避するために、出来るだけ円高の時に売り飛ばしにかかったと考えられるのだ。安倍政権発足時からの40円以上の円下落の意外と多くの部分が、中共による『損切り』の可能性が高いと考える理由だ。


           【 後編へ続く 】

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