「なぜ日本経済は絶対に破滅しないのか?」について宇宙戦艦ヤマトの世界観を使って、イヤになるほど説明する!
§5-4-8・2150年代、日本は再びGDP比200%の債務を抱えることになった・・・不動産バブルが一番アカンなバブルなのですよ
§5-4-8・2150年代、日本は再びGDP比200%の債務を抱えることになった・・・不動産バブルが一番アカンなバブルなのですよ
○2120年〜2150年代、日本は再びGDP比200%の債務を抱えることになった・・・
緩慢に続いた第一次内惑星戦争が終結し、一応の平和が保たれると、今度は太陽系規模の戦後復興特需が起こった。2120年代のことだ。
このバブルには世界が乗っかった。まるで第一次世界大戦の後、アメリカを中心とした好景気に沸いた10年が続き、その後、破滅が待っていたことを忘れたかのように、だった。
このバブルは特に太陽系内規模での不動産バブルと言っても良かった。大規模局地戦により地球の内外で国境線が書き換わり、戦争と環境破壊のダブルパンチで居住可能地域もかなり変更があった。これは大抵の人間にとって悲劇であり、投資家にとってはビックチャンスであった。産業・生活領域の再開発事業は実に旨味のある投資案件だった。
目を太陽系に向ければ、難民や移民の他、獲得領土への移住などの比較的大きな人口移動が継続して起こったために、こちらのバブルの規模も大きく、しかも太陽系内惑星領域全域で大々的に繰り広げられた。
この結果、怪しげな高金利債務が世界各国および金融機関で爆増していった。しかも10年近くにに渡って続いたから、債務の額はあっという間に天文学的な数字に到達した。当時は「太陽系は(事実上、無限大の大きさを持つほど)広いから不動産バブルは永久に続く」と単純に思われていたらしい。しかし高金利負担に耐えられなくなった金融機関が続出する事態に至り、バブルは弾け、まさに22世紀版のリーマン・ショックのような地獄絵図となった。
合わせて、内惑星戦争によって疲弊した国や地域も沢山あった。これらの国に対して、多国籍金融機関や機関投資家は高金利で多額のカネを貸し付けた。国債を購入したり、公共事業などへの投資の原資を融通した。このおかげで太陽系内では徐々に活況を呈するようになってきたが、2010年代のギリシアやイタリア・アルゼンチンやブラジル・韓国・トルコといった外債だらけの『危なかっかしい中規模経済国家』が多数乱立するようになった。こちらもまさに22世紀版のギリシア危機・トルコ危機のような悪夢となった。
世界は金融緩和策でなんとかやり抜けようと努力したが、これらの国も債務が増大し続け、数年に一度、太陽系の何処かの国もしくは植民地においてデフォルト危機が発生した。世界は再び莫大な借金漬けの時代を迎えてしまった。
※ ※ ※
実に愚かなことに、この時、日本もまたバブル景気に浮かれていたのだった。
バブルは必ず破綻する。そして破綻したらどうなるか? ・・・は1980年のバブル景気とその後20年以上続いたデフレと、国家債務の対GDP比200%超という結末を知っていたはずだった。しかし2100年代には、もはやバブル世代・デフレ不況の世代は全員が既に死んでいた。知恵と経験は過去の書物の中の知識に過ぎず、バブルの苦しかった記憶は日本には無かった。しかも腰を落ち着けて、書かれた文字を精読しようなどという
日本のバブルで特徴的なのは、世界各国がのめり込んでいた太陽系規模の復興バブルとは違う『日本国内のみの不動産バブル』であったということだ。顛末はこうだ。
第一次内惑星戦争によって、主に海外債券からの膨大なリターン収入があった。この資金は日本経済の活況と需要を生み出したが、相当量がだぶついていた。国内に還元したカネは激しい円高を招き、海外からの輸入には恩恵があったが、経済収支を悪化させる要因となった。なんとかして『余り金を吐き出したい』・・・そう思うようになっていた矢先、第一次内惑星戦争の惨禍を教訓とした国連と世界各国は、新たな太陽系領土の管理方法を案出した。
それは国連の承認の元、宇宙天体領域を、『責任ある国家(←先進国)』が購入するというやり方だった。
この方法ならば、もう戦争することナシに領有問題を解決できそうだった。宇宙領土を強奪できる強国は、当然、戦争も出来る裕福な国家に限られていたから、ならば始めからカネで解決する方法はむしろ賢明な方法だったとさえ言える。
特に国連がお墨付きを与えることで、購入国家に応分の責任と負担を担わせることも出来たし、宇宙領土領域の購入に支払われた莫大な資金は、国連の難民への支援や地球環境保全事業などの国連の運営資金のバックボーンになった。
要は、第一次世界大戦後のドイツ南洋諸島の領域を日本が委任統治の形で手に入れた+カネ支払った版、もしくは1867年にアラスカをロシアから購入したアメリカのような感じで、お手軽に領土を増やせるということだった。
無論、カネは「難民支援」とか「地球環境〜」へったくれみたいな綺麗事とは別に、『国連マフィア』のような悪どい詐欺師や多国籍企業、国連役員につるんでいた『特別な関係の企業体』に流れることになるのだが、かなりのカネを溜め込んでいた日本にとっては、戦争ナシで宇宙領土・領空が手に入るだけでなく、円高を解消し、なおかつ天然資源を確保しえたことは好都合な事だった。
なにより地球上での話し合いだけで『行ったこともない』資源衛星や有重力天体の広大な領域を、手間暇かけることなくおさえることもできたことから、もはや国連改革要求や、制度上の不備に対する道徳的観点などすっぽり抜け落ちてアッサリ飛びついてしまった。
※ ※ ※
この太陽系内の『資源天体・天体領土を購入する』という新たな投資先が見つかったことから、宇宙空間日本領土が一気に増え、この新領域への開発および開拓バブルも始まった。たとえば、これを契機に購入した土星の衛星タイタンの一領域は、後に地球防衛軍宇宙基地などに転用されることになるのだ。
タイタンの一角を購入した時、たしかに反発は強かった。こんな土地、当時は資源開発するにも遠すぎるし、住むのはますます難しかった。購入金額は
後には国連宇宙軍の99年租借地となったが、ガミラス戦役勃発時でさえ無人の小さな観測所と日の丸が立ってるだけの超ド田舎で、この旗は2202年までにはガミラスから返還されたほどだった。
似たような事例には、軍民共用宇宙港である富士宇宙港が上げられよう。
ここは21世紀中頃に起こった富士山爆発の後、地権者はいたものの、荒れ地として放置されていた広大な地域だった。そしてこのバブルの時代にヤクザ絡みの不動産会社に『地上げ』された地域だった。
結論から言えば、この業者は破産した。ここに融資していた銀行が多額の債務を抱え込んでしまったために、この土地を日本のバブル対策用の国策株式会社である『株式会社整理回収機構』が購入、日本国が国民の税金を使ってさらに購入し、そのカネを銀行救済にアテたほどだ。
宇宙港になったのは「
特に近くには昔から演習場もあったので、ほとんど反対もなく基地化できた。しかも元からしてヤクザ絡みの案件で、銀行のエラいさんが刺殺された事件も発生したこともあり、要するに『事故物件』だった。
この悪状態連発ではイメージが悪く、民間相手の大規模住宅商業地開発は難しかった。しかも宇宙港としての採算は、あと100年くらいは元がとれないので、もうしばらくは宇宙港として使われる可能性がある場所だ。アニメも映らぬ僻地の静岡・・・とは静岡県民がよく言うことだが、そんな静岡の最大のランドマークはこうして出来たものだった。
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2120年代はこんな時代だった。富士の裾の荒れ地でさえも高値で売買されるような投機ブームが沸き起こり、国内外から購入者が殺到していた。日本国内には潤沢なカネがあり、使いみちに困るほどだった。第一次内惑星戦争での利益がジャブジャブ残っていたのだ。しかも世界的にもバブルっていた。復興需要の特需は投資力・技術力・産業力のある日本にとっては黒字要因だった。国内外・太陽系内全域に輸出と投資が可能でリターンも大きかったからカネはいくらでも有り、主に安全資産である国内投資へと向かった。海外企業の買収や株・債券・土地なども買いまくった。もはや消極的になる理由がどこにもなかった。
この時代、地球規模の環境破壊の悪影響は日本にも及んでいた。地震や津波、巨大暴風雨、台風や豪雪などの自然災害に対する備えも必要だった。全世界的なバブルの上げ潮ムードの中で、日本でも本土の再整備と投資が積極的に行われた。この再開発・再投資の動きのなかで長期におよぶ派手な地上げや投機ブームが起き、しかもノンバンク経由の犯罪スレスレのカネが市場に溢れた。そしてこれが、22世紀の始めごろに本土で起こった不動産バブルの阿呆な姿だった。
地球上の日本領でさえこの有り様だったから、高い金額で購入した宇宙の新領土は、なお一層、激しい投機と投資の対象となった。月や火星の一部も含まれていたから、かなり本格的に活用するため、官民あげてのインフラ整備を行い、整備後は高値で民間に売り飛ばしにかかった。資源欲しさに購入希望企業や投資ファンドが出資したし、さながら昔の北海道のような開拓移民が日本火星領に押し寄せた。ここはまた外国人移民の受け入れ地でもあり、大胆な規制緩和による経済特区化して、更なる経済バブルの牽引力になった。
火星領域における不動産投資熱は、同時に様々な不正を引き起こした。一般人相手に、強引かつ無謀なオーナー投資をさせ、サブリース契約の破綻から多重債務者が多数発生したズルガ銀行の『かぼちゃの荷馬車轢き逃げ事件』とか、『Kokeru』などの不動産不祥事が続発したのもこの頃だし、粗製濫造建築を繰り返し、壁が一枚の板っ切れという『オレパレス』のような大規模不良施工事件などを引き起こしては、多くの個人資産家を苦しめた時代でもあった。
そして日経平均株価が最高値をつけた数日後、このバブルは突然弾けた。
契機は火星での局地紛争だった。
日本領から比較的近い場所で複数の国が領有権を巡って紛争を始めた。このため日本の火星領が巻き込まれないにしても、不動産の価値は激減した。なにしろ半透明のドームと地下居住区しかないのだ。破壊されれば、地球で言えば高度三万メートル以上の場所に放り出される。しかも酸素もない。人々はようやく『所詮は不毛の土地』ということに気づき始めたのだった。しかし遅すぎた。この時までに多額の負債を負った者が多数出たために、連鎖的に日本国内でもバブルが弾けた。
肝心なことは、紛争以前に限界を越えていたということだった。他人の戦闘など、実は関係なかった。高金利負債と闇金による利払い負担に耐えられなくなり、それが不安心理の際に顕在化し、破局しただけのことだった。折悪く、世界もバブル崩壊し始めていた頃だったから、資産の流れは急激に縮小していった。2199年時のBBY-01ヤマトのような助け舟は、ドコにも無かった。
このバブル崩壊は日本の金融業を中心に当時のGDPの2倍以上の債務をもたらし、この後、日本は20年以上に及ぶ超長期デフレ時代を再び迎えてしまった。この20年は、厳しい債務整理の時期であり金融業等が随分整理統合された。企業マインドも縮小し続け、労働環境は悪化。労働者は所得が上がらず生活が苦しかった。まるで1990年代から2010年前後のリバイバルのようだった・・・
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ここで22世紀中庸の日本の国家債務について検証してみる。整理したら、こうなった。
・2150年を迎える頃の日本の国家債務の総額は対GDP比200%。ただし経済力の停滞から超長期デフレ真っ最中であり、そのため長期国債の利率も0.01〜0.1%以下と超低い。
・主な国家債務は国債のみ。
⇒不動産バブルの損失分が国債の形で返還されたといっても寡言ではない。そのため国家が高金利債務を抱えている可能性はなくなった。あったとしても極めて少ない。ただし『政府の負債』としては莫大な規模。
⇒国債は増発中。国債を発行しないとデフレ経済さえ支えられないほど、バブルのダメージを被ったため。
⇒公共事業や教育・福祉などの目的別債務が主。
・国債の保有者は95%が日本国内で保有されている。さらにその半分は日銀と政府系金融機関。
・国債の発行目的は、景気回復のための建設国債などが主。
⇒韓国のように歳入を外債に頼るわけではないので、政府の規模を縮小すれば、国債の発行量は減らせる状況。
・経常収支に関しては黒字。内訳は以下のよう
貿易収支 ←大抵黒字。しかし赤字の時もある。赤字要因は主に資源高。
一次所得 ←大幅黒字。世界最大の規模。
二次所得 ←マイナス。他の国に政府援助資金として拠出しているため。
時々、焦げ付く。しかし規模は極めて小さく無視出来る。
サービス ←トントン。円高の時には赤字にブレる傾向が強い。
・国内には個人資産や有価証券などが対GDP比の300%前後も保有されている。
かなりの含み資産がある。
また計算にもよるが政府保有資産がGDP120%分もあるが、全額を簡単に取り崩して債務弁済に使う性質のものではない(ので単純資産とはいい難い)。
・税金は相対的に『安い』側の国に分類されている。大幅増税の余力有り。
・産業および金融力はかなり強力。それぞれの分野において世界No.1でなくても10位くらいまでには数社が食い込むほど。
・現在は円高。
・最大の国家的損失は自然災害。
※ ※ ※
・・・図らずして、まさに2020年ごろの日本そっくりの状況になった。
ただし、当時と違うこともいくつかある。特に大きく違うのは『日本国債の外国人保有者内訳』だ。意外と重要なのに述べられる事が少ないのだが、長くなるので次話で『閑話休題』ということで語るに留めようと思う。
ただし本編には全く関係ない内容なので話数番号は付けるものの、本編には含めない。主に中国の話しになり、また(申し訳ないが長くなってしまったために分割した)二話を挟んで次からは、いよいよ「日本がデフォルトした」という、最悪の事態がどうなるかを考えてみる。。。m(_ _)m
【 この項目、続く 】
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