§4-2-7・もう一つの2200年〜全地球規模全天打撃全面連鎖破綻への道orz(その7)_おいヒス、よかったな(^^) 話し合いによる地球とガミラス帝国との共存の道だってよ(^m^)

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 ではこの場合の2200年はこの後、どのような経過を辿るのだろうか?

 詳細や顛末てんまつなどは当然判らない。ぶっちゃけ、200年も先のことだからだ。しかし、大まかな流れは判る。それは拙文・第27話の『金融業は特別だという話〜産業革命というチキンラーメンと同じくらいに偉大なイノベーションの真実』とほぼ同じ流れを辿るだろうということだ。

 金融負債が整理され、銀行から債務が失くなれば、2200年のこの地球には技術・資源・産業・需要・エネルギーの全てがあるのだから自律的に回復基調に戻る。そうなる前に自殺者が多数出る、というだけの話しだ・・・。


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 国家の破綻であれ、金融業者の破綻であれ、結局は同じだ。政府と中央銀行が統制出来ないほど民間金融機関が債務を抱えて破綻した・・・ただそれだけだ。

 連鎖破産を食い止める為の強力な資金的な裏打ちがないことと、連鎖破綻を食い止めるための各種措置を実行する能力がないために破綻は起こった。単純に言えば、全世界的な金融不安に際して、大規模な金融緩和を行う余力が無かったということだ。


 そのため世界中の主要銀行、投資信託、保険、各種投資ファンドなどがほぼ全滅する。半官半民の国策特殊金融会社だったら、そのまま国家がデフォルトという事態にも陥る。預金者は預金を殆ど失う。民業は銀行などからの運転資金を得られず倒産する。失業者が街に溢れ、貧困層が激増する。激しいインフレが庶民生活を直撃し、多くの企業倒産により産業資本家の淘汰が進む。敗者は惨めな敗北しかなくなり、寡占化と貧富の格差が増大する。

 その結果、社会不安が高まり、各国で暴動や略奪、時に内戦にまで至る。弱体な各国政府にどこまで治安回復能力があるかは未知数だが、経済の復興と所得の増加がなければ民心の収束はないのだから、どこの国も政情不安に激しく苦しめられることだろう。


 しかしここで別の動きが見えてくる。ごく少数の生き残ることの出来た金融機関や、かろうじて生き残った政府の庇護を得た金融機関・保険債券業者や、地球連邦と結託したずる賢い金融業者などの『超運の良い』機関には、残った預金者が安全を求めて殺到する。ここで資本の再蓄積が起きる。弱い金融機関が自然淘汰され、生き残った金融機関は集まった資本の再投資先を探し始める。


 そしてこの地球には次元波動超弦跳躍機関がある。エネルギーはあるのだ。また戦後復興という『需要』も大量に存在している。資源も太陽系内にあり、これを安価に取得することも出来る。その資源量は当時の地球人にとっては『無尽蔵に近い』ほどだ。資源もあるのだ。オマケに建艦技術や文明構築の産業もまた、2199年時の次元波動超弦跳躍機関がもたらしたエネルギー革命によるプチ好景気のおかげで、ある程度復活していた。産業力さえ残っていたのだ。


 激しいインフレは庶民の生活を木端微塵に粉砕したが、と同時に、各国債務を激減させた。まるで第一次世界大戦直後のドイツのように、1兆倍ものハイパーインフレのような状態に陥っていたかもしれない。この状態になれば、理屈からいえば国債の価値はほぼ無くなる。つまり債務もほぼ無くなる。債務も自然消滅した。世界中の負債がゼロになったのだ。


 エネルギー・産業資源・技術・生産設備、なにより需要が存在する世界において、庶民にインフレと保有財産の消滅という二重の犠牲を強いたこの結果、人類は債務を徐々に解消し、再び経済再生へと逆回転し始める。


 もしも2202年に地球連邦政府という、各国政府の上位機関が存在しているとしたら、この段階になってようやく有機的に機能し始めたと考えるべきだろう。崩壊した国家や、弱体化し対処能力を喪失しかけている諸国を超然とする強い組織の必要性から、本格的な連邦制度への移行のが出てきた。最初の問題がこの経済破綻への対処であり、この辺に関しては拙文の第35話〜第37話と同じような対処方法が採られたと思われる。


 特に共通通貨の導入は重要だったはずだ。弱体化し、債務まみれの各国通貨を地球連邦統一通貨に切り替える時、事実上の通貨切り下げを行った。これにより債務を減らし、インフレを終熄させることに成功するだろう。

 信頼のおけない各国通貨に変わって、全人類のGDPと経済成長を裏打ちとし、地球統一政府という強力な政府への信頼(←当初は『期待』。戦争に敗けず、経済成長が順調であれば政府への信頼が生まれる)をバックボーンにした強力な『地球連邦統一通貨』による一元的な全人類経済圏を構築し、より単純でより効率的な金融政策に基づく力強い経済政策が実現できる。


 無論、庶民の預金や労働賃金も数千分の一、もしくは数万分の一くらいにまで下がってしまうという犠牲もあった。庶民はいつも犠牲をかぶる。弱者は常に必ず切り捨てられる。老人、戦災孤児、病弱者、身体障害者、貧困層・・・気の毒なことだ。それでも連邦政府に強力な中央銀行制度の確立が要望され、実現する。他に手はない。


 また強力な政府と強力な金融政策意思決定機関、強力な統一通貨をもつ、経済学者スティグリッツの言う『統合政府』の雛形ひながたが構築された段階で、この統合政府の実働部隊として、政治面では各国の利害調整を図る連邦財務省を始めとする各種官僚機構の整備と、暴動や騒乱・内戦の収束(特に武力弾圧など)の連邦軍が組織され、連邦宇宙艦隊の他に、後の空間騎兵隊のような緊急展開陸戦兵力などが成長していくことになる。各国のナショナリズムを超越した、新しい政治・経済・軍事力を行使するシステムが構築されたのだ。


 この結果、各国の債務のケツモチをし、武力と政治力を確保した地球連邦政府は、他の国よりも「幾分マシ」というだけで『連邦政府>各国政府』の力関係が構築され、人類初の統一政府樹立へと向かうベクトルが整理される。

 無論、連邦政府と各国政府との関係がどのような形式になるかは未知数だ。それは、各国政府の債務を連邦政府がどれだけ肩代わりし、連邦政府がどれだけ治安維持や経済政策立案能力を持つかによる。各国に対する介入力の大小が連邦政府の大小を決めるのだ。


 ただし、特に独自通貨発行のためのバックボーンとなる税制改革が必須で、それは地球人の税金を地球連邦政府に納付するという制度改革を意味していた。この税制を納得させるために地球連邦議会制度が発達するだろう。

 それは国連のような国のより集まりではなく、例えば各国代表を国ごとに一定数割り当てる上院と、納税した地球人が国や人種などを超越して選挙で支持政党を選ぶ下院とに別れ、同時に大統領を地球人全体から選挙で選ぶという連邦大統領制が取られると思われる。そして税金は各国政府の他に連邦政府にも回る。日本で言う所の『国税』と『地方税』がそれだ。全地球人から税金を収奪することが出来るようになれば、もはや連邦政府の方が各国政府より上だ。カネを押えたほうが勝つ。


 ということは2200〜2201年には地球連邦政府は、20世紀のアメリカ合衆国のような『各州(=国家)の強い自治権を有したままでの連邦政府』か、20-21世紀の(西)ドイツ連邦共和国のような『各ラント(=国家)を尊重するが連邦下院が実質権限を握る、より統一性が強い強力な連邦議会主義国家』かのいずれかの方向性で整理・統合される。両者の違いは『強い大統領制』か『象徴大統領制と議会主義』かの違いになるが、どっちかは判らない。もしくは、この途中の『21世紀のEUのような中途半端な地球連邦政府』のままかもしれないが、それでも結局、時間の経過に従って地球連邦政府が、より大きな権限を持っていくことに違いはない。18世紀から19世紀末までのアメリカ合衆国がそうだったように、だ。


 20世紀前のアメリカは連邦政府に大きな権限はなく、そもそも税制が無かった。合衆国政府の連邦予算の大部分はニューヨーク港から上がる関税収入だった時期もあったくらいだ。予算がないのだから連邦政府に大きな仕事が出来るわけがない。実際、米国連邦軍は第二次大戦前までは陸軍はマトモな自国産戦車さえなく、陸戦兵力は10万人を下回っていた。カネも権限もない政府の国軍など、こんな程度のものだ。アメリカが強力で強大な統一国家としての完成は実に第二次大戦後になってからなのだ。


 2200年時の地球連邦政府がEUのような、ワケの判らない弱組織だったとしても、時を経てアメリカ合衆国のように制度を整えていくだろう。それは地球人が銀河系へと乗り出し、星間国家としてガミラス帝国や帝星ガトランティス、ボラー連邦などの強国にして対等に渡り合っていくために必要な制度上の改革でもあった。


 この改革を促した経済破綻は、その規模のデカさから収束に数年は掛かるだろう。つまり2202年、新たなる敵として現れた帝星ガトランティスとの交戦時には、まだ地球は経済再生の途上だったはずである。インフレは収束しつつあり、文明の復興は進んでいたはずだ。各国のナショナリズムはまだ残っていたとしても、2200年以前よりは遥かにマシだった。人口も少なくなっていたし、異星人の存在が地球人の肌の色や宗教の違いをある程度克服するのに役に立ったかもしれない。


 2202年ごろはいまだ復興インフレに悩まされつつも、庶民の生活水準は徐々に向上していったはずだ。きらびやかな大都市が地球各地、もしくは太陽系の他の星に作られる一方、ファベーラのようなスラムもまだまだ残っているような混乱した世界だ。そして相当血なまぐさい、荒れた太陽系文明だ。ごく普通に犯罪集団が跋扈ばっこし、共産主義者や無政府主義者が革命騒ぎを起こしては武力鎮圧されるを繰り返す。また原理主義者や一部の過激派が自爆テロを繰り返すということもあったろう。社会の不平等は解消されてはいない。なので騒乱や労働争議なども頻発した。なにより略奪や暴行・殺人や金銭詐欺などの、政治的思想をあまりもたない犯罪が後を立たない、安全とは言えない世界だ。夜の独り歩きはヤメたほうがよいだろう。そもそも帝星ガトランティスとマトモに殺りあえるような状況でさえ無かったかもしれない。新たなる内憂外患の時期だ。


 いまだ貧民は多数存在していたし、親を無くした戦災孤児などの施設もようやく整備され始めたところだろう。ただし経済復興に従い、各種社会福祉制度も充実していったことだろう。弱者を救うという社会民主主義的福祉政策は新生地球連邦政府の基本政策のようなものだ。民心収攬みんしんしゅうらんの『アメ』みたいなものだし、社会の安定のためには必要な施策だった。

 所得の再分配に失敗すれば貧困格差から再び社会騒乱が起きる。ジニ係数が0.4を超える程の格差社会の場合、例外なく社会は統一性を欠き、分裂した不安定な社会となる。2010年代後半のアメリカ(ジニ係数0.42)や南アフリカ(ジニ係数0.62)のように、だ。老人、戦災孤児、病弱者、身体障害者、貧困層・・・切り捨てられた彼らを社会が守らなければ、結局、回り回って社会が分裂し不安定になるのだ。福祉政策は重要だ。たとえ国債を発行して足りない分を穴埋めする必要があっても、だ・・・。


 しかし結局のところ、完全な復興と安定した平和的かつ持続的な経済の安定には、ガミラス戦役の規模を考えれば一世代〜約30年くらいのスパンが必要になる。所得の再分配と生産した富が広く地球人に行き渡るのにはまだまだ時間が必要だった。貧富の格差が大きな地球の姿がココにはあった・・・。


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 ではもし、もっと速やかな経済復興を実現したいと思ったら?

 

 経済の規模を拡大し、金融の安定と貿易の利益を地球連邦政府にもたらしたいと考えた場合、まず最初に思いつくのが『ガミラス帝国との広範な通商』だ。

 つまりガミラス帝国という、圧倒的に強大な星間帝国との通商で莫大な利益を挙げるというのが最も手っ取り早い。他にもイロイロと『使い道』もありそうだ。たとえば相互防衛協定とか、技術移転とか、経済援助のお願いとかだ。


 実は他にもある。より重要なことだ。

 破綻した地球人の金融政策に対して、ガミラス帝国の金融関係政策担当者と交渉し、彼等の経済力・軍事力を背景にして、地球の脆弱な金融システムを強化することも出来るのだ。もともとアッチの方が経済規模が遥かにデカい。そうでなければ巨大帝国を支えることなど出来はしないし、強大な軍事力を支えることも出来ない。彼等の助力を得られれば、実にありがたい。


 いや、もしかしたら金融技術や金融商品に関して『だけ』はガミラス帝国よりも地球人の方が進んでいるかもしれないくらいだ。なにしろアッチは旧態依然とした植民地主義にしがみついている『発展途上国』だ。あんなの、阿呆のやり方だ。植民地主義で利益が上がった事例など、大英帝国のインド経営くらいしかない。だから地球では1960年代には植民地はほぼ無くなった。植民地経営という利益の上がりにくい『外国市場の確保の方法』よりも、投資と保険・金融商品の売買などで利益をあげる方がより効率が良いからだ。上手くいけば、これだけでガミラスと対等に渡り合えるかもしれない・・・


・・・なら、何のために連中と10年近くにも渡って戦争したのか?

 こっちは絶滅しかけたと言うのに、いまさらなぜ和平などと??


 という当然の疑問が沸いてくる。家族や友人を殺され、個人資産を失った人達には強い反感もあるだろう。『ガミラス憎し』みたいな感情論も強いはずだ。

 しかし、庶民の激しい反対があろうとも、ガミラス帝国との通商関係の確立は地球の安定に必要だ。なのでガミラスと平和条約を結ぶべきだ。つまり「平和条約」という名の「軍事同盟」を構築するということだ。昨日の敵を今日から友とする。実に美しい話しだ。

 無論、市民だけでなく、知識人や右翼・左翼も激しく反発するだろう。しかし連中の反対などお構いなしにガミラスと軍事同盟を結ぶしかない。まるで日米安保締結時の日本のようにだ。しかし吉田茂や岸信介が正しいことは歴史が証明している・・・。


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・・・なので、次章からはガミラス帝国と地球との関係をひも解きながら、2018年現在の日本と世界の債務と経済の問題について引き続き考えていこうと思う。



          【  この章、終了  】

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