§4-2-6・もう一つの2200年〜全地球規模全天打撃全面連鎖破綻への道orz(その6)_人類、破滅した勝者。次元波動爆縮放射機とCAS-707ムラサメから考える『戦争の最適化』について

【 無責任な政府の失態と戦争を避けるという知恵の欠如 】


 2200年の地球、それは有り得そうな二つの可能性・・・一つは他国の債務保証からくる国家の連鎖破綻、もう一つが民間金融機関の多国籍連鎖破産による大規模破綻を考えてみた。これらが発生した理由は単純に『債務の規模がデカすぎてコントロールできなくなったから』だった。

 残念ながら、管理できないほどの債務を抱えてしまった場合、国家や国民は破綻するしかない。出来ることは破綻した時に必要となる金融的な解決方法を間違えないこと・・・たとえば敗戦後の日本のように、何も生み出すものが残っておらず、しかも天文学的な債務を抱えてしまった場合には、非常に残念で苦しいが預金税と金融救済の公的資金投入という、死人から金歯を抜き取るような厳しいツールしか選択できなくなる。

 ではせめて、破綻する・しないの境目はどのあたりなのだろう??


 この上限に関しては、我々はこれまで長々と見てきたなかで『大体、対GDP比で400%の債務』あたりが一つの目安となるということを見てきた(拙文の第38話の内容)。


 しかしいままで筆者が敢えて言わなかったことがある。それは実のところ、国家債務が対GDP比で何%の債務があるかなど、国家破綻に際しては『無関係』だ、ということだ。つまり『政府と中央銀行が機能を喪失すれは、たとえ債務ゼロ%の国家でさえ経済破綻する』が真実だ。今まで黙っていて、すみませんでした。。。m(_ _)m


 1945年時の日本は、さすがにあまりにも(戦時国債という)国家債務がデカすぎたために、国民から徹底的に収奪し金融債務の整理を行うしかなかった。インフレと超緊縮策という激痛を伴って、だ。成功したので日本は戦後70年以上に渡って世界での強国の立場を維持し続けている。

 債務が対GDP比400%の事例として、第二次大戦後の債権国・アメリカと債務国・英国の例を引いた。アメリカは自由主義の盾として世界を支配するドル体制を確立し、英国は長きに渡って経済不況に苦しんだ。

 現在の日本は対GDP比200%もの債務を抱えているが、必死になって自然災害と戦いつつ国家と民族が生き残る術を探している。また他の国々は、実は日本とは比較にならないほどの悪質な債務を抱えている可能性が高く、今後、破綻するリスクが大いにある・・・ということも判った。


 しかし、これらの国は全て『自国民と世界に対し、国家としての責任をとる政府』における破綻事例の場合の事例なのだ。

 破綻すまいと必死になっている責任感のある国家(=政府)・破綻した後、復興しようと懸命にあがく信頼できる国家(=政府)の場合、大体、対GDP比で400%前後の国家債務を抱えるあたりが限界っぽい・・・と言いたかっただけで、頑張る政府の限界点を見極めたに過ぎない。


 なので、そのような強力な政府が存在していない(つまり頑張らないダメ政府)の場合、そもそも負債のあるなしに関らず破滅する。例えば、21世紀のイエメンのような失敗国家がそうだ。

 2018年の日本が破滅しないのも、リーマンショックで1.5京円もの債務を抱えた世界が崩壊しないのも、実は政府が責任をもって運営している証だった。債務があっても、祖国や世界経済を破滅させないという意思と責任を持つ政府が機能していることが文明の終末を食い止めているに過ぎない。現在の日本が経済破綻しないのは、実は政府(主に自民党。あと、それなりに公明党)と金融政策決定集団(主に日銀と財務省の主流派)が『なんとしても破綻を阻止する』という強烈な意思をもっているから・・・と言える。

 無論、たかだか1,000兆円程度の国債で大規模全面国家破産を招くような無能な集団なら、そもそも官僚やってる資質さえない。アルゼンチン人か韓国人で十分だ。


 なので、今回のもう一つの2200年のパターンは「強力な政府不在の事例」が辿るパターンだった。


 債務と戦争により各国政府が極端に弱体化し、世界をまとめる強力な国家が存在しない世界であり、これにとって代わる全人類統合の地球連邦政府もまたクソの役にも立たない程度だった場合に陥る結果だ。そしてこの場合、リーマンショック程度の債務でも恐らく世界は破滅したことだろう。ガミラス戦ならば、なお一層破滅する。『強力な政府と強力な中央銀行』、この二つがなければエネルギーがあっても債務がなくても破滅するのが現代社会の真実だ。全地球規模全面連鎖破綻は『弱体化した旧態依然とした政治体制』の結果だ・・・と言っただけのことだった。各国のエゴと歴史が、全人類を支えるべき金融面の強さを阻害したのだ。


  ※     ※     ※


 ガミラス戦役というのは、人類にとっては不幸なことだった。ガミラスは強敵すぎた。結果として人類は生き残ったとしても経済破綻は免れなかった。あれだけ地球をボコられてはハッピーエンドは有り得ない。どのみち、経済的には破滅するのだ。

 そう考えると、どうすべきだったかも見えてくる。要するに『何故、ガミラスと戦端を開いたのか?』という政府への疑問だ。


 もしガミラスに人類を奴隷化もしくは絶滅させる意図があったのなら、ガミラスを返り討ちにして焼き払う必要が出てくる。絶滅戦だからだ。敗北は滅亡を意味する。もはや経済原則うんぬんのレベルの話しではない。どのような汚い手を使ってでもガミラスを死滅させるしかなく、無論、『愛』などドコにも居場所はない。邪魔なだけだ。

 生き残った我らは、一つの異星文明を滅亡させた後で、朝日新聞のように自虐的な戦争犯罪論でも展開したり、妄想のようなLove&Peaceにしがみついて、ウッドストックあたりで大麻でも吸いながらチンドン屋以下のヘッタクソな反戦歌でも勝手に歌っていればいいだろう。バカ騒ぎも、生き残ってこそ出来る贅沢だ(ただしバカ共が生き残っていたことを喜んでいるワケでは決して無い)。


 しかしそうでなく、ガミラスが人類と通商と交易を望んでいただけならば・・・交渉によって国交を開き、相互依存の関係を構築できる可能性があり、しかも我々の判断ミスでその可能性を放棄していたとしたら、それは地球人と時の政府が責任を負うべき失態だ。そもそも戦争すべきではなかったのだ。これは左翼の反戦論とは全く意味が異なる。


 進んだ文明社会は金融とエネルギーによって成り立つ。この二つは安定して持続的に存在し続ける必要がある。リスクは避けるべきで、最大のリスクとは戦争だ(もう一つはパンデミックと呼ばれる大規模な疫病災害)。また戦争では儲からないと何度も言った。現代は、もうそんな時代ではない。敢えて言えば、勝った国に投資した金融業者くらいのものだ。


  ※     ※     ※


 なにより重要な事は、『戦争は経済力相応の規模にとどめ、必ず勝つ』ことだ。いずれ別の機会に詳述するつもりだが、現代においては『GDP>戦費』の形が一般的になっている。たとえば2000年代の米国は対テロ戦争に毎年およそ10-15兆円の出費を強要されていたが、同時期の米国のGDPは1,500-兆円を越えていた。戦費はわずか1%に過ぎない(ちなみに主要国の平時における国防予算は平均で対GDP費2.2%-2.7%程度)。仮に国防費を含めてもMax50兆円前後で、最悪期には国家予算の4割にも及んでいたが、それでも対GDP費で3-4%程度だった。


 第二次大戦時にGDPの300%もの出費を強いられた米国が、それから100年と経たずして地球全域における全天打撃力の展開に必要な出費が、この程度で済むようになったのだ。兵器単価の高騰や人件費・傷痍軍人医療費・軍人恩給等の高騰を考えた時、これは驚くべきことだ。現代戦は強大な経済力の下支えによって相対的な戦費が極めて低く済むのだ。またそうするべき性質のものなのだ。


 そしてこれこそが金融の力によるものだ。国家を支える金融資本の充実と拡充があって始めて出来ることであり、『銃後の守り』とはすなわち国家のGDPを支える金融産業力のことだった。あとは戦費がGDPを遥かに下回る事・・・特に歳出(毎年の政府支出)における戦費割合との兼ね合いだけの問題であり、如何に費用負担を圧縮できるかが『戦争経済』のカギになる。


 ガミラス戦役はこのコスト管理に失敗したのだ。よって、敗けなかったとしても結果は絶望的に厳しい。

 逆にいえば、戦後の地球防衛軍がやたらと次元波動爆縮放射機にこだわるのはコストパフォーマンスが高いからに他ならない。たった一隻の次元波動爆縮放射機搭載艦で、艦隊規模の敵を瞬時に殲滅出来るのなら『安い』。運用上、様々な不便さが付きまとうにしてもこの『安さ』は、国力が相対的に小さい地球連邦政府にとっては魅力的に映っているのは間違いない。


 実際、ガミラス帝国や帝政ガトランティスなどが次元波動爆縮放射機搭載艦に偏った戦力構成になっていないのは、地球連邦より国力が強大だからであり、航空機から大型戦闘艦〜小型汎用艦・次元潜航艇などの多種多様なバランスの取れた戦力を潤沢に整備するという正しい国防戦略を採用していることは、地球連邦の国防戦略とは対照的だ。まさに次元波動爆縮放射機は『貧者の核兵器』そのものであり、財政力で劣る政府の軍隊が、より優勢な国家に対して戦術的な優位性を確保するための唯一の手段と言える。

 

 繰り返すが、あくまでも『戦術的な優位性』のみの兵器・・・これが次元波動爆縮放射機の本質だ。

 決して忘れてはならない。『GDPで劣る国が、勝る国に総力戦で勝った事は一度もない』ということを。


 事実、BBY-01ヤマトは『ガミラスに勝った訳ではない』。ただ単にイスカンダルに行って帰ってきただけであり、行き掛けの駄賃に帝都バレラスを軽く焼き払ってきただけのことだ。だからこそガミラス帝国と国家間での条約締結という事態になったのだから。たとえばガミラス本星の海底火山脈に火をつけて、星ごと火だるまにして連中を焼殺していれば、戦後の条約締結みたいな手間は必要なかっただろう。


 地球人の対異星文明間戦争遂行能力は低く、限界がある。戦争は次元波動爆縮放射機搭載艦の有無ではなく、根底となる国家の総生産力の大小によって決まる。これは宇宙の真理だ。これに気づかなかったのが2199年までの人類であり、また2200年以降も、あらゆる対外戦争で敗けまくっている事から知られるように、まだなお気づいていないという知性の欠如だ。国家の総合的な経済力を充実させることが重要で、それが駄目なら戦術上の勝利によって、外交上の勝利を条約締結や賠償支払い等の形で目論む以外に道はない。では、そんな事が可能なのか? 可能だ。


 それは大日本帝国が超大国・清国に対して行ったことと同じだった。大日本帝国は清国に対して戦術的な勝利しか挙げていない。事実、清国は孫文の辛亥革命によって瓦解したのであって、大日本帝国に敗北した訳ではない。しかし日清戦争は日本の勝利に間違いないのだ。

 これは帝国の外交戦略によって、戦術的な勝利を『国家の勝利』に昇華させた結果だ。逆に言えば、大日本帝国は最後まで中国の完全征服と支配には失敗している。殆どの戦闘で勝っていたにも関らずだ。この理由は簡単で『大日本帝国は清国およびその末裔の中華民国に対し、一度たりともGDPで勝ったことがない』・・・ただそれだけの理由からで、だ。


 ガミラス戦役の時、こうした対異星文明への大局的な戦略眼がなかったことが、『勝った』のに事実上の敗北と同じ結果を招いた。こちらもまるで日露戦争の後の日本のように、だ。国家の総生産力において『ガミラス帝国>地球人』であることが明白である場合、戦争を避けるか戦術上の勝利を外交上の勝利に結びつける努力が必要だったということだ。


  ※     ※     ※


 では戦争に対する冷徹でシニカルな国家観が無いとどうなるか? 次の話を述べる。

 近年、驚くような話しが、突如出てきた。『ガミラスに対して先制攻撃を加えたのは人類の方』という歴史論争だ。これは地球連邦政府とガミラス帝国が平和条約を結ぶに当たって論争になった事案で、地球側が遊星爆弾に対する戦時補償を求め「非戦闘地域に対する攻撃は戦争犯罪」と騒ぎ立てた事に対する、ガミラス側の反撃論文として提出されたものだった。


 2191年4月1日に太陽系に侵入するガミラス帝国艦艇を捉えたため、直後に人類史上初の地球外宇宙文明に対する防衛行動を発令したのは事実であり、最初に接触した日本艦隊巡洋艦CAS-707ムラサメが一方的に攻撃を受け撃破されたことがガミラス戦役の直接の契機として認識されていた。

 しかしガミラス側の提出した資料によると、同巡洋艦がガミラス艦艇に対して無警告発砲してきたことを示すデータが多数存在していた。これは地球側を狼狽させた。地球人は「ガミラスが一方的に攻撃を仕掛けてきた『侵略』に対する聖戦」と喧伝けんでんしていたからだった。政治的宣伝デマゴーグだったということだ。


 この時、CAS-707ムラサメを隷下に従えた計27隻の日本艦隊の指揮を採っていたのが、後にBBY-01ヤマト艦長として遣イスカンダル使節団の全権を委任されながらも、地球帰還直前に病死した沖田十三提督だったために、「証拠隠滅のために地球連邦政府が沖田を薬殺した」という、まことしやかな陰謀論の根拠にもなっていた。

 これを補強する話として、BBY-01ヤマトの中で発生した反乱騒ぎがあった。いまだに首魁しゅかいや反乱の目的が不明で、調査も満足に行われていない『闇の部分』だが、直接の武力行動としては二・二六事件以後、最大の反乱と言われているほどのものだったし、CAS-707艦長(←サブマリン707の速水艦長にソックリな人。アポロノームとは直接関係ない)の息子がBBY-01ヤマトに乗組員として乗艦していたこともあって、この都市伝説はいまなおかなりの迫真性をもってインターネット上で語られている。


 真相は不明だが、地球側が結局、戦時補償の殆どを取り下げたことを考えると、少なくともこの歴史論争は地球側に分が悪いように思える。だとすると、外交上の敗北と言える。この敗北こそが、自国を真の敗戦国に変えてしまう・・・。


  ※     ※     ※


 2200年は、どのみち人類は経済破綻し、地球人は塗炭の苦しみを味わう。それは無制限全面戦争の結果による必然だった。大規模な債務は戦争によって生まれる。なので2018年の日本で、仮に経済破綻があったとしても『比較的軽くて済む』のは、戦後日本の抱え込んだ債務が戦争の結果ではないからだ。多くの国家債務が国土のインフラ整備や金融業の健全化、社会保障制度などの形で国民に還元されているからだ。しかし2200年は違う。戦争によって破滅しかけたのだから、その後の道のりも、大変辛く苦しいものでしかなく、回避することも出来ないのだ・・・。

 戦争は諸悪のタネという、ごく当たり前の結果だった。2200年は悪のタネから育った国家債務という毒草を刈り取る秋に過ぎなかっただけだ。よって冬を迎える。ただし、その先には春がくるのも事実だが・・・。


          【  この項目、続く  】



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