§4-2-5・もう一つの2200年〜全地球規模全天打撃全面連鎖破綻への道orz(その5)_2200年から振り返る、2008年のリーマンショックの真の姿

 2200年における全地球規模での全面連鎖破綻の、もう一つの可能性が、主だった世界の金融機関の連鎖破産による金融業の全面崩壊という破綻の可能性だ。これは2008年のリーマン・ショックの時に『もしも世界が対処出来なかったら?』の思考実験に近い。

 リーマンショック自体は、よく言われているように不動産バブルの失敗例だ。一般に言われているカラクリはこんな感じだ。


  ※     ※     ※


 住宅ローンでの売上を上げたいと考えている住宅金融業者たちは、本来ならば所得が低くて家など買えない人たち(←サブ・プライムな人たち)にまで住宅販売を始めた。この時、ビンボーな彼らに対し、普通より遥かに高額の金利で住宅ローンを組ませた。というのも、返せなくなったとしても他の高金利負担者からのアガりで損失分をカバーできると考えたからだ。挙げ句、払えなくなったら購入した家を取り上げるという契約にもした。つまりビンボー人が新規購入した家を根抵当にとったということだった。ただし、ビンボー人の負担は『最悪、家を取り上げられるだけ』だったので、多くのビンボー人がこのローンを組み始めた。

 問題はこのあとだった。


 サブ・プライムな人たちの住宅ローンは(現金などないので)住宅金融会社などからローン建てさせたが、住金はこの『ローン元本+返済利子』の債務を『債券』として投資会社に売り飛ばし始めた。こうすることで住宅金融会社は手元に現金を得ることが出来た。この仕組みなら、ローンだったら何十年もかかる返済金を一瞬にして手に入れることが出来る。そしてこのカネを使って、さらなるローン事業拡大が出来た。


 一方、投資会社はこの『債券』を『證券』化して市場で売り飛ばし始めた。『借金してるヤツの身銭を引っぺがす権利』を売り飛ばしたようなものだが、そんなものが売れるのか? ・・・と思える。しかし実は『売れる』。というのも購入者は、サブ・プライムローンを組んだ時の金利分を定期的に手に入れることが出来たからだ。しかもこの金利は高めに設定してあったはずだ。なので泡銭あぶくゼニ目当てで購入者が殺到した。大抵は投資系ファンドだった。そして、さらに困った展開を迎える。


 證券とはいっても所詮、これは債券に過ぎないし、相手がビンボー人なのだからリスクもデカい。そこで複数の債権を混ぜて、『新商品』として売り出し始めた。これだと例えば『信用度10%』くらいの債券と『信用度70%』くらいの債券との抱合せ販売で、だいたい新商品が『信用度50%』として売り出せた。リスクを分散し、販売価値を上げる効率的な手法だったが、結果、悪質な債券がどれほどの規模で市場に出回っているのかが判らなくなった。実際に不渡り問題が発覚しなければ判らなくなってしまったのだ。リスクがステルスされてしまった訳だが、もともと『リスクを隠すため』に抱合せ販売を始めたのだから、これは当然のことだった。しかも配当金のデカさから、世界中に極めて大量に出回った。


 さらに激しく事態を悪化させたのがCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という金融派生商品だった。

 語弊を恐れずに言えば、CDSは『その場かぎりの払い捨ての保証金』のようなものだった。債権者と債務者との間に入り、「もし債務者が不渡り出したらオレが責任もってカネ、回収するわ。オレがヤクザの取り立てやったる。んでもって、不渡り出して債権者が損した分、オレが現金で債務者の代わりに払ったる。万一の時には全額保証してやるんだから、先に『保険金』今、現金で払えや」みたいな感じだ。貸し倒れした時に現金で補償するが、そのための担保となる『払い捨ての保険金』を現ナマで先によこせ・・・みたいなものだ。


 これだと仲介業者に労せずして現ナマが入る。後はカネをちゃんと返してくれればよいだけの話しだし、万が一、失敗しても取り立てれば良いだけの話しだ。つまり『ヤクザのケツ持ち』だ。本当の問題は、ヤクザではなく金融業者のような合法的な組織であったことと、規模が極めて大規模だったこと、なにより不渡り出たら仲介業者が身銭を切らねばならないことだった。


 しかし『労せずして現ナマが手に入る』・・・このゼニに目がくらみ、誰も彼もがCDS契約を結んだ。一つの金融業者が別の金融業者のケツ持ちをし、この時に潜在的に発生する不渡りのリスクを避けるために、さらに別の業者とCDS契約を結んで現ナマを手に入れる・・・を繰り返した。問題は『不渡り出まくったら即倒産という程度の財力しかないのに、目の前の現ナマ欲しさに契約を結びまくった』ということだった。


 勿論、このリスクがあるために、もともとはCDS契約を結ぶ際、返済義務を負う金融機関には自己資本率やキャッシュ・フローの状態に関して厳格な規制があった。もともとは、だ。金融の保全機能機能として有効な金融派生商品だったのだ。

 しかし1992年以後のクリントン民主党政権時の景気浮揚策の一環として数次に渡って行われた大規模な金融規制緩和策の中で、事実上、骨抜きにされた。『各社の自己責任で』にまで成り下がってしまったのだ。政府から『無責任』のお墨付きを得たと勘違いした金融業者は、預託者に対する配当の支払いと自己利益の追求にのみ邁進し、リスクに対する恐怖心に対して意図的に鈍感に振る舞った。


 では万が一に『證券』が紙切れになった時、その損失分を埋め合わせるだけの資金力を持ち合わせいなかったら?

 現金で保証金を支払う能力を遥かに超えるほどの契約を金融業者が結んでいたら?


 不動産価格が上昇を続けている間は良かった。しかし、いつまでもそんな夢みたいなことが続くわけもなかった。景気の悪化や対インフレ政策による金融引き締め等の影響で不動産価格が下落し、サブ・プライムローンの不渡りが次々と表面化すると、『債券』が紙くずになり莫大な負債を抱えた。冷静になればすぐ判ることだったが、スロットマシンをぶっ壊したかのように目の前に現金が転がり出てくる状況を前に、熱くなるなというのがムリだったようだ。

 しかもCDS契約に基づき、不渡り分の保証支払いが発生した。それも大量に、だ。

 あまりに野方図にCDSを結びすぎたがために、支払いが出来無くなり、AIGのような巨大な金融機関でさえ経営が傾き始めたほどだった。そんな金融機関が多数に及んだ。これがサブ・プライムローンの結果だった。債券は良くて紙切れ、普通は含み損を抱えた債務に成り果て、しかも莫大な保証金の支払い債務が残った。リーマン・ブラザーズ自体が64兆円もの債務を抱えて消滅したが、こんなのは潜在的な債務のごくごく一旦に過ぎない。

 債務がいくら残っているのかは、10年たった現在だに不明なのだが(上述の理由により)、現在のところトータルで1.5京円という話しもある。全人類のGDPの二倍くらいだ。しかもこれには複利計算のような倍々に増えていく債務や、目下のところ顕在化していない債務も多数ある。この後、いったい幾ら増えるのか、見当もつかない。


 これだけの債務を抱えているにも関らず、今日も人類が普通に生活できているのが不思議なくらいだ。理由は正直、分かりません・・・m(_ _)m

 敢えて云うなら、『騙し騙しやりくり出来る程度の負債総額』ということなのだろうとしか考えられいないということだ。債務の総額が全人類のGDPの2倍程度で済んでいるということがその理由の全てかもしれない。


  ※     ※     ※


 ではもしもリーマンショック時に、地球の総GDPの五倍〜十倍以上の巨額の債務を抱えてしまったらどうなっていたか?

 それが2200年に迎える地球の姿だ。単純に『債務の元本が大きく、しかも返済負担額が指数関数的に増加しつづける』という二つの理由でコントロール不能になったリーマン・ショック後の姿だ。


 2200年までに行っていたことは、この図式の中で、単純に不動産取引に関わる『債券』を各国の『国債』に置き換えただけだ。また各金融機関の他に、各国政府が半官半民の特殊法人を作って他国の、もしくは金融機関の担保保証をしたはずだ。各国では抱えきれなかった債務に関しては国連もしくは創生初期の地球連邦政府が『ケツ持ち』したことだろう。勿論、この他にも『国債の株式化』などの各種方策も採ったはずだ。


 この時、各国政府が考えたことは『次元波動超弦跳躍機関のもたらす恩恵のおかげで経済復興し始めているのだから、この経済再生を自律的な成長軌道に乗せるまで、債務問題を持ちこたえさせる』という、この一点だけだった。なにしろガミラスに降伏する前に経済破綻してしまえば、それこそ降伏以外の選択肢がなくなるからだった。なので、あらゆる『禁じ手』も容赦なく行ったことだろう。リーマン・ショック時のように、野放図に無責任に、しかも無制限に。


 そして、金融負債を『誤魔化ごまかす』もしくは『だまくらかす』方法がいくつもあり、国民に対する犠牲もかなり少なくて済むやり方を熟知していた。2008年のリーマン・不動産バブルの時のように、だ・・・。無論、それ以前もそれ以後も経験していたことだ。この『バブルヤリヌケ』体験を成功体験として記憶してしまったために、2200年の人類は、1945年の日本がやったような大規模債務に対する抜本的かつ唯一の正解・『債務返済と超緊縮策』を選択出来なかった。


 しかし、2200年に地球に置かれた状況を考えれば、全ての金融機関・国家・民間企業が等しく膨大な債務を抱えて酷く弱体化していたということが、過去にはないことだった。この結果、リーマンショックと同じような流れで一度、大きく破綻すれば、今度は2008年とは違い、多国籍間で金融機関が次々と倒れていき、共連れで国家も破綻していくという無限連鎖破綻へと至るのだ。誰も歯止めをかけることのできる防火壁ファイヤーウォールになり得なかった。国家や地球連邦政府でさえ大規模金融緩和によって信用創造を作り出すことができない程だった。真の世界大恐慌に至った。


 各国が発行した戦時国債・地球連邦債は尽く紙切れになり、金融業は莫大な債務を抱えて破綻し続けた。債務保証をするためのCDSが連鎖破綻の引き金となり、さらなる各種金融関係機関が連鎖破産する。国家は機能不全に陥り、庶民の預金は消えて無くなった。民業に回る資金がショートし、本来の目的であった自律的な経済成長が突然、失速する。各種産業が一気に停滞する異常事態に陥った。金持ちも貧乏人もみな、預金も仕事もなくなり、社会秩序を形作っていた国家が統治能力を失いかけるほどになった。社会騒乱や暴動が頻発し、将来への展望が見えなくなった。


 2200年、人類はガミラスとの戦いに勝ったはずだったが、債務との戦いに敗北した。地球は緑の星に戻ったが、人類は焼け野原になった。偉業を成し遂げたBBY-01ヤマトのことなど、後世の人々がスッカリ忘れ去っていた理由は、この2200年という年が全地球規模の全面連鎖破綻という大恐慌の年だったからに他ならない。それはリーマンショックのような金融恐慌、もしくは1929年の時の世界大恐慌の時、さらに事態が悪化していたら・・・その仮想シナリオの現実の姿だった。


          【  この項目、続く  】



P.S.

本文中の「債権の証券化」の手法ですが、典型的なのがこれです。2023年現在、中国がやり始めています(呆れ


アングル:中国で不良債権ABS発行が急拡大、銀行個人ローンで不履行増加

https://jp.reuters.com/markets/global-markets/MHKI4ADSZRIH7GFHO7VC53FTCQ-2023-12-20/


この本文を書いたときには想定もしていなかったことなのですが、まさに「破綻しそうな国家が債権の証券化で逃げようとしている」という図式です。ここまでドンピシャだとむしろ我ながら気持ち良いくらいです(爆死


しかしバブル崩壊を経験したワイら日本人から「先輩として」助言するならば、民間が背負った債務は政府および国民が身銭を切る犠牲を払って全額償還しないと駄目ということです。ちな日本は大体、立憲民主党が政権を取る頃くらいには完済しています。総額は1200兆円を超えていて、これはバブル崩壊時の想定債務の倍以上でした。よって中国も諦めて増税+デフレ覚悟で民間債務を引き抜くほうが良いでしょうね。この結果、中国が完全失速したとしても、まあ、やむなし…という所でしょうかね?


諦めて、地道に皆で借金返済するしかないんですよ。バブルった後は…ಠ_ಠ;

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る