§4-2-4・もう一つの2200年〜全地球規模全天打撃全面連鎖破綻への道orz(その4)_2200年から振り返る、2009年のギリシア危機の真の姿

 2200年の全地球規模での全面破綻に至る、かなり高い可能性が二つある。

 一つ目はドコかの国がデフォルトし、その国の債務保証をしていた国々が連鎖倒産するパターンだ。まずはこの話しを進めてみる。


  ※     ※     ※


 これは2009年のギリシア危機に似ている。この事例は詳細が全く明らかにされていない事案で、10年たったいまでもウヤムヤになっている、実に不誠実で困った事案だ。データなどが一部開示されているが、真相とは程遠い内容にしか思えない。なぜなら、解決の為の明確な指針・・・たとえば高金利負債や多重債務などが総額いくらで、何年後にはどのくらいになり、そのためにどのような対処を何年後までに行う、みたいな内容が開示されているわけではないからだ。まあ、ヤバくて出せないのだろう。以下に筆者の見解を示そうと思う。


 ギリシア危機は、事象としては、財政赤字が公表数字よりも大幅に巨額だったことが突如、明らかになったことに端を初する一連の経済危機だった。実はドイツが40兆円相当もの債務保証をしていた・・・という話しは第29話『戦争は全く関係ない(その2)〜』で述べた。逆に債務は40兆円だとされているが、もっと桁外れに大きいだろう。

 資料により、一部、情報が開示されている。


 元々、ギリシア危機はギリシアがEU加盟申請時に端を発する。ギリシアがEUに加盟することは長年の悲願だったようである。一体化されたヨーロッパ・キリスト教文明諸国同盟の中に、古代ギリシア文明の直系の子孫たちが参加したがったとしても違和感はない。特に隣国トルコとは長年の犬猿の仲であり、オスマントルコ帝国時には征服されてもいた。トルコに対する独立戦争はイスラムvsキリスト教の構図でもあったし、ギリシア独立運動は、現代的な意味のナショナリズムの萌芽とされるほどだ。ヨーロッパの中に入り込むことは彼等の悲願だったようだ。経済的な恩恵も多々ある。関税は無税だし、域内の移動の自由も保証される。要するにドイツに出稼ぎに行って、週末には帰ってきて家族と過ごす・・・そんな甘い考えでも持っていたのかもしれない。


 しかしギリシアには問題があった。国家の経済力が弱いこと、つまり政府の基礎財政力が低いのである。よってギリシア程の劣弱な国家を抱え込むことにEU内部では強い反対があった。『お荷物』過ぎるからである。何かがあってギリシアの財政が悪化した時、EUが資金的に救済しなくてはならない事態が生じることに強い危惧があった。コジキの面倒をみたがるセレブはいないし、それでいてギリシアは加盟してしまえば、ドイツやフランスと同じくらいに偉そうな権利主張する資格を有するのだから、これは厄介なことだった。


 しかもEUには不可思議で愚かな規約があった。『単年度の政府赤字額がGDPの3%を越えてはならず、債務残高が対GDP比60%を超えてはならない』という規約がそれだった。

 しかし現実問題としては『こんなのありえない』。我々はいままで『国債は単なる債務ではなく、国富を増大させるための金融的手段』だという事を知っている。なのでこのような規約自体が『意味がない』のである。金融財政の柔軟性・即応性を阻害し、しかも現実的でさえ無い(ちなみに日本の単年度の政府赤字額は大体GDPの10%くらい)。


 おまけにこれらの規約違反に関しては、財政赤字削減目標を遵守できない場合には、GDPの0.2%もの罰金を科すことができる・・・という、まさに『バカなコドモの考えそうな』規約さえ持っている。カネが無いから赤字なのに、罰金を科してどう回収するつもりなのだろうか? カネがないのでコンビニ強盗しようとしたがアッサリ捕まって罰金刑になった・・・みたいなコントのようなオチだ。

 実際、この規約を守ることの出来る国家があるのならば、それはそれで大変結構なことだ。ドイツやフランスがあるとは思えないが、少なくとも連中は『出来ている』ことにしているらしい。日本では国家債務に計上される、たとえば公共事業などを帳外会計にしている・・・とかのやり方で、だ。無論、『隠れ借金』だ。ドイツやフランスが破綻すれば、だ・・・。


 そしてギリシアはこの財政規約をそもそも守ることが出来なかった。つまりEU加盟のための経済力など始めから無いのである。もっと言えば『誤魔化す程のカネさえない』のだ。ギリシアには。

 だからこそギリシアはEUに加盟したがった。EUに加盟すれば、自国通貨ドラクマよりも遥かに『価値のある』ユーロが使える。これはEU域外からの輸入・・・たとえば石油等の輸入代金が安くなるということだった。また労働賃金がEUレベルになり、経済力のあるドイツなどで出稼ぎすれば、高い賃金を『違法に換金することもなく』また『関税で目減りすることもなく』手に入れられる。単純な話、ギリシア人の生活水準が向上するのだ。ロクに働かなくても、だ。保養地は国内に腐るほどある。遊びには困らない。その生活水準が欲しくてEUに加盟したいのだ。『カネ持ってるからセレブパーティに入れてよ』ではなく、『カネ持ってないからセレブにならせてよ』だった。


  ※     ※     ※


 では2009年に至るまでのギリシアはどうしたか?

 まず自国国債を大量に発行した。これを売却すれば政府の財政が豊かになる。つまり政府の基礎財政力が強化された(ように見える)のだ。これでギリシアの国力は強化され、数字の上では『お荷物扱い』されないはずだった。一方で政府の債務は増えた。国債を大量に発行したのだから当然だ。これは『単年度の政府赤字額がGDPの3%を越えてはならず、債務残高が対GDP比60%を超えてはならない』のどちらにも引っかかりそうだった。しかも弱小国家ギリシアの国債を引き受けるバカなど、この世にいそうもなかった。引き受けてもらうには、かなりの金利を設定しなければ購入するものはいないだろうし、そんな金利設定をすればギリシアが返済しきれずにデフォルト起こす。これも当然だ。そもそもEUに入るための基礎体力がないのだから、欲をかいて背伸びせず、地道に基礎体力をつける方から始めるべきだからだ。


 しかしこの時、とんでもない入れ知恵をする悪党が出てきた。後にリーマン・ショックを引き起こして、この世から消えて失くなるリーマン・ブラザーズを始めとした有力金融業者だった。ヤツらはこんなことを言い出した。


「自分たちが大量の国債を購入して引き受けてやる。んで、高い金利設定のままだとギリシアが破滅するから、最初の数年間は超低金利にして返してくれればよい。何年か後に高金利に付け替える金利変動型債務にし、その時に『色つけて』ドカッと返してくれればよい。なーに、心配することない。債務の付替えにも応じるし、なによりEUがケツモチしてくれる。EUに加盟するんでしょ? それでいいじゃん。そしたら、金利だけ払ってくれるだけでもいいよ。ちょっと高いけどね」・・・まさに、国家相手のリボ払いのようなあくどさだ。


 ギリシアはこれに乗った。ギリシアは近視眼的にEU加盟という悲願を達成した。一方で金融業者はギリシアを『カネのる家畜』として飼いならすことに成功した。金融業者にとっては、相手の弱みに漬け込んでバカを騙した詐欺と同じだ。もともとギリシアの国債は高金利で旨味が大きい。一時的に低金利に下げたとしても、追年で遥かに高額な金利設定になっている。元は十分取れるし、トータルで言えば遥かに高額の利払が期待できた。


 ではもしギリシアが利払い出来なくなったら? その時には債務の付け替えを行えばよい。『元本+利子』を一纏ひとまとめとして『新たな元本』とし、これに対して更に高金利の利子をつけるのだ。『元本+利子』は毎年増える。つまり『新たな元本』が増え続ける。勿論、最初の数年だけは超低金利の『金利変動型』にするのだ。目先の数年のことだけ乗り切れば、あとは後の政府担当者がどうにかするだろう・・・政治家はそんな生き物であることを、金融業者はよく知っていた。

 これは元本が指数関数的に増大し、利子がまさに複利計算で増えていく悪質な債務だ。カネを貸し込んでいる連中からすれば、さしあたり利払だけは続けてくれればいいのだ。高額なので、これだけで十分モトがとれるからだ。


 また万が一、ダメになってもEUが面倒を見てくれるはずだ。もしEUがこの債務を放棄すれば、たしかにギリシアに貸し込んでいた金融業者が吹っ飛ぶだろうが、それは世界恐慌を意味する。全人類が連鎖倒産するのだ。そんなこと、各国政府がさせるハズがない。

 なにしろアメリカを中心とした世界金融のメインプレーヤーが嚼んでいるのだ。これらが次々と『死亡』すれば、全地球規模の全面連鎖破綻という、過去に存在したことのない大世界恐慌に陥る。そうなればアメリカだって黙っていないだろうし、各国政府も驚愕するだろう。人類文明崩壊の危機さえ生じかねない。『ならきっと誰かが助けてくれる』・・・そう、甘い考えを持っていたようである。


 盗人の方が、ここまで相手の足元を見て計算高く織り込んでいたら、もはやEUには選択肢はない。EUは一つの連邦政府として責任ある対応を(ある程度は)取るしかないのだ。世界大恐慌になればEUとて沈没するのだから。きっと救済するに決まってる、と単純に考えたのかもしれない。

 つまりギリシアの首を押えたことで、EUの首に鈴をつけることに成功したのだ。あとはチキンレースだ。最後まで生き残る金融業者になればいいだけのことだ・・・。


 ではなぜこの仕組みが破綻したか?

 まさにリーマンショックという、別の金融恐慌の結果だった。


 ギリシアに貸し込んでいたリーマン・ブラザーズが消滅した。この時、リーマンの債務を整理した彼等の債権者たちは、リーマンがギリシア相手に、途轍もない詐欺のような事を仕出かしていたことを、この時に知ったのだ。しかもリーマンの債務は莫大で、これの肩代わりをせねばならなくなった者たちは、少しでも回収しなければ自分たちが破産しかねないほどの負債を負っていたから、ギリシア相手に強力に「カネ返せ! 額面通り返せ!」と騒ぎ立てた。リーマンとは違い彼等はギリシア国債を売り飛ばしてでも損失分を埋めたかったから、ギリシアも観念して、「実はボク、とても返せない規模の国家債務、あるの。さしあたり40兆円くらい・・・」と突然言い出したのだ。


 そしてギリシアに各種の債務保証をしていたドイツはこの時になってようやく「なんでアイツらが『カネカネカネカネ・・・』って年がら年中カネに困っていたのか、やっとわかった・・・」と愕然となった、というワケだった。なにしろ債権者が今度はドイツにすっ飛んできたからだ。しかも今度の債権者は自分のケツに火がついているから情け容赦が全然なかった。メルケルが逆上して、「絶対に債務の減額には応じない!」と火を噴いていたのは、実のところ、ギリシアが実に不誠実だったからに過ぎない。


 大まかにいえばこんな感じだ。

 なのでリーマンショックが2008年、ギリシア危機が2009年というのは、意味のある当然の流れだった。リーマンショックの債務整理をしていたら、ギリシア危機がヒョッコリ登場した・・・という流れだ。

 この事案は現在進行系だ。なので真相の全ては判らない。しかし断片的に判っていることをつなぎ合わせると、上述のようになる。

 では「なぜ2018年の地球は大破綻をしないのか?」・・・と言えば、やはりEUという存在が大きい。ギリシアの債務の総額がギリシア一国にしてみれば吹っ飛ぶくらいの莫大な額であったとしても、EUのGDPからすれば『対処可能』な程度の金額だったということなのだろう。いや、まだ全容が明らかになってないのでなんとも言えないが、それでもEUのGDP・約1,800兆円の八倍〜十倍のような巨額の債務ではなさそうだということだ。


  ※     ※     ※


 逆に、EU総体としても支えきれないほどの巨額な負債だったら?

 2200年の地球が、たぶんそれだ。


 ドコかの国の債務破綻を契機にして、債務保証をしていた国が次々と連鎖破産していく大恐慌を迎える。金融的に支えることの出来る国家はもう存在していない。また責任ある地球連邦(中央)政府も存在していないのだから、食い止めようがない。この結果、殆どの金融・債券・投資家が破滅する。各国の国民生活もそうだ。経済の回復は突然、終了する。全世界規模での信用収縮が起こり、結果、大破綻する。株価は大暴落し、ほぼ全てジャンクになる。同時に各国通貨も紙切れになる。これはすなわち各国の戦時国債も紙切れになる・・・つまり債務も暴落し、ある意味『失くなる』ということでもある。同時に銀行も金融機関も、預金も年金も会社も日々の生活も、全てが一瞬で消えて無くなった。全人類の日々の生活全てが失われたのだ。


 結果、ガミラスとの戦い以上の大損害を全人類が被った。気違い沙汰なインフレが押し寄せ、人々を押し流す。その悲惨さは2009年〜のギリシア国民の悲惨さの、何百倍もの惨めさになってしまった。大混乱と騒乱、あらゆる犯罪がはびこる暗黒の無秩序の時を迎える・・・ただそれだけの2200年となった。BBY-01ヤマトのことなど、もう誰も覚えていないほどの世界大恐慌の年になった・・・。


          【  この項目、続く  】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る