§4-2-3・もう一つの2200年〜全地球規模全天打撃全面連鎖破綻への道orz(その3)_「手ぬるい!敵は債務だ。刷って刷って刷りまくれ!テロンの頭上を火の海にしろ!」←ぎぇえ?!(@_@)!?

 拙文・§1-6から§1-8のように、世界各国は独自の政治体制・独自の金融政策を維持したまま『地下都市の環境整備と自国復興』『貧民や戦災窮民への社会保障の拡充』『太陽系資源の再開発』『地球環境の保全と整備』『弱小他国の救済』『民間企業の救国事業への救済』『対ガミラス戦力の大幅増強のための軍拡』を行った。当然、莫大な財政力が必要とされ、その財源は『増税』と『戦時国債の発行』が主だった。


 これらは多国籍間で執り行われ、民間金融機関や機関投資家・投資ファンドなどが資金を集めて国債を引き受けたり、他国の財政支援のために半官半民の特殊金融法人が他国債務を購入したりもした。時に21世紀のドイツ銀行のように(←拙文・第29話の内容)、民間銀行なのにあたかも『国策銀行』のように振る舞うことを半ば強要された事例もあったろう。有力な国家が弱小国に『異星人戦闘を一緒に乗り切るため』に資金技術援助することもあれば、債務保証をすることもあったろうし、民間企業や民間銀行・金融機関への保証も国家がある程度は責任を持ったと思われる。


 この時、有力な国家が弱小国の『ケツモチ』をしすぎて『連鎖倒産』しないようにSDR通貨制度のようなセーフガード機構が国連にも置かれた事は間違いない。各国が供託金を供出し、国連として金融不安や国家破産に対しての債務問題の保証もしくは調整役を果たして、全人類で負債を分担するように心がけた。とはいえ、到底担保しきれないほどの負債を抱えていたのだが・・・。

 特に軍事費は莫大で、今後とも青天井で必要とされた。そして天文学的な債務が発生したとしても、人類絶滅よりはマシだと考えたために、財政再建は事実上後回しになったはずだ。


 2192年頃より続いた莫大な戦費、地下都市の再開発、また太陽系資源の採掘事業や各種社会保障、なにより対ガミラス戦用の新世代宇宙艦の開発建造など、あらゆることをやってみて、その結果、莫大な債務を抱え込んでしまったのだ。前回述べたように、『通貨と金融』において致命的にテキトーで脆弱な21世紀のEUのような組織に成り下がった地球で・・・である。


 ただし幸いな事にエネルギー資源は次元波動超弦跳躍機関のおかげで安価に大量に、しかもあらゆる分野に行き渡った。経済の発展の余地が十分にあった。人類は生き残ることが出来る・・・そんな希望の光が天空から差し込んでいたのも事実だ。正確には約17万光年先からの光だ。ただし、波動砲には良い顔してないみたいだが・・・。

 このような状況で、全ての『弱体化した国家』群に対し、途轍もない大きさの戦時債務が顕在化したわけである。希望はある。ただし、債務はもっと沢山ある・・・。


 2200年の人類にとっての国家債務の本質は、主に資金調達先であった『各国金融機関』と国債を乱発した『国家』そのものの二つが激しく毀損きそんしているということだった。そして国家債務の根本的な解決方法はただ一つ・・・『国民の税金で毀損した金融機関を救済し、結果、国家の危機を乗り越える』・・・これしかない。つまり全地球人に負担を強いることしかないのだ。この債務は国家や企業が作り出したものだが、相手が異星人ではガミラスに請求書を突きつけるわけにもいかず、結局、金融機関への途方もない負担となって延々と残り続けた。

 

 そこで平和になった2200年、各国政府(もしくは既に出来上がっていた地球連邦政府)は、この戦時国債の債務解消の方法を模索する。その時に貴重なデータとなったのは1945年-50年代の戦後日本の復興の歩みだった。


 しかし、すぐに『これはムリ』という結論に達した。


 日本の戦後復興の歩みを調べてみると、GDP比8.5倍という膨大な国家債務を、預金税という情け容赦の無い手段を使って、国民から強引に盗み取るという『徹底した超緊縮財政』の結果だったからだ。そしてそれは日本が敗戦により占領軍という外国軍の支配下にあったからこそ出来たことであって、2200年の民主的な国家群もしくは地球連邦においては、庶民が許さないだろうことは明白だった。なにしろ当時の日本は累進課税率が14段階もあり、最高税率90%・最低税率でさえ25%という『有り得ない』課税がかかっていたのだ。こんなの出来る課税率ではない。自国民の反発や暴動が怖いのだ。こんな税率、かけられる勇気のある政治家などいない。


 そもそも2199年以後、人類は緩やかに復興を続けていた。つまり豊かな人たちも出てきたのである。金融投資家だったり産業資本家だったり、復興特需に湧いた人たちだった。彼ら「小金持ち」がこんな課税を呑むわけはないし、貧乏人はますますそうだった。なるほど、貧富の格差が広がった。反面、徐々に全ての人に金銭的恩恵が出ていたのも事実なのだ。つまり皆が少しづつ『余裕のある』生活が可能になりかけていたのだ。同じことは民業にも言えた。産業は復調傾向を見せていたのだ。次元波動超弦跳躍機関の生み出す、安価で圧倒的なエネルギー資源のおかげで、だ。


 なので、極めて異常な高税率は地球復興計画にさえ支障が出かねなかった。つまり企業に重課税をすれば、企業の活力が損なわれるし、税収入も下がる。GDPの多くを支える個人消費にも大打撃を与えるだろう。これが不景気を招いて高インフレとなる危険性があった。逆の不安もある。過酷な増税は緊縮財政に等しい。つまりデフレを招くことにつながりかねない。そしてデフレ環境下では、国家債務は絶対に減らない。インフレの逆だ。


  ※     ※     ※


 以前、筆者は個人的な見解と前置きした上で、拙文の第4話『次元波動エンジンこそ真の核心』の中で、エネルギーと金融システムの崩壊の二つが発生すると、インフレ下でデフレが発生するというスタグフレーションという、取り返しのつかない異常な全面経済崩壊になる・・・と述べた。その例として1973年のオイルショックの話しをした。実はこの説は通説ではあっても、異論もあるらしい。


 筆者は「僕も同じ意見σ(^^)」という信念があったので§1-4で披瀝ひれきしたのだが、実は筆者としてはもう一つ、『金融関係が全面崩壊しただけでスタグフレーションは十分に起きる』とも考えている。たとえば、前回話しをしたEUのように、本来『資本移動の自由』『金融政策の独自性』『固定相場制』の三つは両立しないにも関らず、なんか中途半端で全部が玉虫色で生き残っちゃってる・・・みたいな『おかしなことやっとる(c.v.どんでん)』みたいな致命的な場合には、だ。


 つまりエネルギーがあっても金融で破滅すれば、コインの表と裏が一緒に出てくるような異常事態になり得ると考えている。現象としてインフレにより物価が異常に高騰する反面、資金不足を主な原因とした企業倒産と失業により経済力の推進力をも喪失する、という怖い状態だ。こうなると2010年代後半のブザマな破滅国家ベネズエラのような、石油産出国であるにも関らず100万倍ものインフレで国外難民続出というような事態に転げ落ちるということだ。


 2200年時には、こうならないとは断言出来ない。地球連邦政府が金融面で整備されていない場合や、かつてのドルやポンドのように、圧倒的な強さを持つ基軸通貨が存在していなければ、だ。国家破綻というのは単に通貨の問題だ。だから正しい金融ツールと解決法が必要なのだ。

 もし間違えているというのなら、今後訪れる人類破滅の状態が『過去にないほど』の規模であったとしても、おかしくない。なにしろ異星人の攻撃により人類絶滅の危機などということ事態、前例が無かったのだから。


 最悪、景気収縮と信用収縮が劇的な経済減速を招き、1929年の世界大恐慌とは比較にならないほどの大恐慌さえ起こりかねず、人類文明の復興自体が頓挫とんざしかねない。本来、超大規模国家破綻のときには戦後日本のような地獄を見る以外の選択肢はない。これが残念ながら正しい金融ツールだ。

 しかし幸か不幸か、2200年の地球人は民主主義的政体を維持できるくらいの経済力は取り戻していた。民主国家において増税は国民の激しい反発を生む。税金上げるを喜ぶ庶民は一人もいないからだ。


 この、ようやく経済力を回復させつつあった2200年の地球に、しかも戦争が無くなった今この瞬間に、死地から脱した重病患者から人工呼吸器を奪い去るが如く、気違い沙汰な重税と超緊縮財政政策を採るつもりなのか?

 到底出来ない相談だった。


 だが、ガミラス戦後の地球人の総負債は過去に類を見ないほどの規模に膨れ上がっている。おそらく全地球総生産力(=GNPみたいなもの)の数十倍以上の債務となったはずだ。本来なら、たとえ尋常ではない規模の負債であったとしても、これを返済したほうがいい。国家を一人の人間に例えるなら、苦しくても頑張って借金を返済し、身ぎれいになった方が自己破産するよりも『信頼』出来る社会人になれるだろう。しかし国家は個人ではない。白人と黒人は互いに嫌い合っているし、アジア人はアジア人同士で嫌っている。キリスト教とイスラム教徒は延々と仲違いをしているし、富貴は貧者を軽蔑している。誰もがいがみ合う、長く続いた人類の歴史は、『ガミラス帝国』という未知の敵がいた僅か数年の間だけ消えて無くなっていたに過ぎない。つまり、『元に戻った』のだ。元に戻った途端、地球人はエゴ丸出しで騒ぎ始めた。しかしこの『エゴ丸出しで騒ぐ』ということこそ『国民の民意』なのだ。

 これが民主主義国家の唯一の問題点だった。国民の意見を聞かねばならない政治政体は、『結局、国民が正しいリテラシーを持っている』という仮定に依存している。


 ではもしリテラシーなど無かったら・・・?

 ただの衆愚政治と成り下がった民主主義は、高いガケの先へと続く破滅という名の地獄道へとひた走るしかない。金融的に間違えたツールにしがみついたまま、だ。


 結局、各国政治家および地球連邦政府(もしくは国連各機関)は、従来通りのやり方を踏襲することにした。『債務繰り延べ』である。これには既に多くの経験事例があった。しかも大抵は成功していたのだ。たとえば2008年のリーマン・ショックだ。全世界的な不動産バブルの崩壊に伴い、各国は金融緩和による信用創造で、この難事を乗り切った。これと同じ手を使った。根本的な解決策が取れず、要するに先送りにしたのだ。

 実際、先送りも出来そうな気がしていた。


 国家の債務はインフレによってしか失くならない。なぜならば『国家債務=国債=通貨』なのだし、インフレとは通貨の価値が下落することだ。だからインフレになれば国家債務も減額する。そしてインフレは同時に経済成長ももたらす。

 よって古くから言われている真実・『持続的な成長インフレによって国家債務を消滅させる』ことが、2200年でも可能だと思われた。特にこれから大規模な復興事業が待っている。地球は元の蒼い星に戻った。タタでだ。しかもエネルギー源たる次元波動超弦跳躍機関は安価に大量のエネルギー資源を供給できた。住環境は整備され、此所に新たな社会基盤を整備する必要があった。これを技術的に支えるエネルギー資源も安価に大量にあるのだ。なら、持続的な経済成長は可能なはずだ・・・と。

 

 そこで、なんとか誤魔化してやり抜ける方法を模索した。

 大規模金融緩和は当然行われただろう。大規模な金融緩和は経済恐慌になった時によくやる手段だ。市場がパニックになり信用収縮が起きると経済が急激に沈滞して、破滅する。この信用不安を避けるために市場に大量に資金を流す。これが金融緩和による信用創造だ。


 とはいえ、全ての国が大規模な債務を抱えている2200年時に『莫大な債務を持つ国家が大規模な金融緩和を行うとどうなるか?』・・・については多分、『破綻する』だった。2010年代の日本がコレをやった。その後、世界中の国家が日本のマネをした。その時、中国などは確かに破滅し政治体制の変革をもたらしたが、中華民族系国家としては復活したわけだし、2200年でも生き残っていた。日本もそうだった。結局、プチ・デフォルトをやってのけ、華麗に生き返った。なにしろ2199年、多額の費用を使ってイスカンダルまで行って帰ってきたのは日本人の作ったフネだったのだから。他の国は丸儲けだ。

 

 今回もそうだ。やるしかないだろう。この時に、生まれたばかりの地球連邦政府なるモノが『地球連邦債』という債券の形で、市場に資金を流すというやり方を取るのが妥当だ。これならば、全地球のGDPを担保に債務を構築することが(理論上)出来る。


 次に各国の抱え込んだ債務。この債務は多国籍に及んでいた。自国だけでなく他国の金融投資家や銀行などが購入してくれた『外債』も多分に含まれていた。これらは特に高金利負担なモノが多く、小国ではもはや債務保証が出来無くなる程だったが、さりとて超大国でさえ担保することは難しい場合も出てきた。

 可能な限り国家単位で債務保証をするものの、ダメならば国連を改組した地球連邦政府がとりあえず債務保証することとした。融資に関しても同様で、各国政府や連邦政府が責任を負うことにした。同時に債務整理機構を乱造し、金融機関から債務を引き抜くと共に債券の取り立てを行い、また高額高金利債務の弁済・減殺を強行することもしばしばだった。


 大規模な金融緩和政策を各国協調で行い信用収縮を避けながら、各国の法律を改正し、銀行間での融資や補償などの面での規制緩和を行い、金融機関の民業への投資の促進を図った。これらは民間の戦後復興事業に必要な資金の流れを止めないための措置だった。と同時に各国債務や連邦が担った債務を債券化し、特別な市場を作ってバラ撒いた。債務元本を減らすことで帳簿上の収支を改善し、さらに株式として売買することで自己資本を得ることも狙った。


  ※     ※     ※


 これらが全て上手くいけばバラ色ハッピーだったが、行くはずはなかった。

 対ガミラス戦役の戦時債務の額はデカすぎ、負担金利が高すぎた。なにより、どのくらいの債務があるのか不明瞭だったことも痛かった。金融機関に一体いくらの債務が出てくるのか極めて不透明で、挙げ句、銀行自体でさえ認識できないような『隠れ債務』『ノンバンク系高金利債務』が彼方此方あちこちに隠れている『地雷原』の様相を呈しているのでは、健全な民業への融資もままならない。銀行間の取引でも同様で短期金利は些細なことで急上昇する不安定さを持つ。各国通貨(外国為替制度が生きていれば)もまた乱高下を繰り返しながらのテクニカルな動きが広がる。なにしろ全ての国が負債を抱え、ドコに何があるか正確には誰も判らない状況なのだから・・・。


 金融緩和は更なる国家債務・連邦債の増加を招き、それが市場の不信感を招いただろう。預金準備率はジリジリと引き下げざるを得なかったろうし、国債の売買はあきないが成立しないことも多くなったはずだ。国債の発行体である『国』に対してデフォルトの不安が常につきまとい、不信感を産んだ。債務保証をする地球連邦政府の財政能力とて莫大な債務を償還できるほどの財力を持つとも思えなかった。これもまた心的圧力になった。


 同様に、国債を仮に株式化したとしても、経済成長にかげりがせば一気に不安要因になる。国債を株式化した『株式発行体(おそらく半官半民の国策特殊銀行もしくは連邦政府の特殊整理機構体だろうが)』が企業体であれば、その業績悪化で株価は下がるし、金融投資系ファンドであれば運用先の業績不振で信用不安が生じる。それは株に化けた国債の暴落だけでは留まらず、債務の不履行と同じ意味を持つ。特に国や地方自治体が絡んでいる特殊企業体は、一度でもデフォルト起こせば、その国もくしは地方自治体が即デフォルトとなるからだ。


 否、そもそも不健全な銀行・金融機関・投資機関ばかりであったなら、新たに発行した国債や連邦債を購入する余力さえ生まれない。新発国債市場は不成立が続発し、その理由が判っているだけに株式・債券・先物などの各市場に不安と恐怖が広がるだろう。すぐに金融以外の全企業・民業へと不安が広がる。エネルギーも潜在需要もあるというのに、生産が出来なくなるのだ。金融不安というリスクのために・・・。


 こういう場合には、政策として財政規律の立て直しを提示し実行することで市場の信頼と、目に見える財政健全化の実数が必要だったが、負債が限界を越えている場合、大増税と超緊縮策くらいしか手が無い。壮大なレベルになる前に『プチ・デフォルト』などの『超非常手段』によって、ガス抜きをしておくべきだった。そしてそれらが政治的・経済的リスクのために出来ない・しないのであれば、もう打つ手はない。2200年の地球人は、預金税のような巨大な国家による収奪に我慢しなかったろうし、特に勃興してきた富裕層が政治的に邪魔をしたはずだ。彼等は政治家がカネに弱いことをよくご存知なのだから。それが政治不信をも招いた。


 目に見えない不信感が広がりつつある中で、何か契機があれば、それを機に大暴落となる下準備は十分に整ってしまった。そして何か・・・これは1929年の世界大恐慌の時のように『結局、理由不明だが』、何かを契機として突然、超大規模経済破綻は始まる。負債の額が莫大だからだ。


 結局、極端な大規模債務を抱えたならば1945年の日本のような、抜本的かつ徹底的な対策が取れなければ、どう誤魔化してもいずれ必ず信用不安に陥る事を、思い知ることになるのだ。間違えた金融ツールを使っての外科手術など、死を招くのみだ。生保だってカネを払いたくもないだろう。


  ※     ※     ※


 大まかに言えば破綻の理由は二つある。一つは他国の債務保証からくる国家の連鎖破綻。もう一つが民間金融機関の多国籍連鎖破産による大規模破綻だ。前者を仮に『2009年のギリシア危機型』、後者を『2008年のリーマン・ショック型』と呼ぶことにする。この二つのパターンで救済に失敗したら・・・

 それが2200年に起こる破綻の、最も有り得べきパターンということだ。


          【  この項目、続く  】

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