§4-2・エネルギー、資源、産業、需要があっても結局破綻する2200年〜2つめの破綻の経過

§4-2-1・もう一つの2200年〜全地球規模全天打撃全面連鎖破綻への道orz(その1)_ヤマトか? 何もかも懐かしいネー(*´・д・)(・д・`*)ネー

 これから述べようと思う2200年の地球の姿は、以下の前提に依拠する。


・次元波動超弦跳躍機関を量産し、エネルギー問題を解消した

・太陽系内での資源採掘が可能になっていた

・ガミラスとの和平が可能な政治状況の変化が生じていた

・遣イスカンダル使節団であるBBY-01ヤマトが困難を経て地球環境回復装置を手に入れて戻ってきた。

・2202年時には国連は解体し、より上位の地球連邦政府が成立していた


・・・この前提下で、ガミラス戦役時に発生した莫大な戦時負債(主に戦時国債)による累積債務問題が発生しようとしていた、という状況だ。そこで2200年、BBY-01ヤマトが地球環境回復装置を17万光年彼方のイスカンダルからもらってきた(それも『タダで』だ)&ガミラスと和平交渉が可能な政治状況になったという『外患』が消えて無くなったということを踏まえて、もう一つの2200年について考察しようと思う。


  ※     ※     ※


 2200年、BBY-01ヤマトがイスカンダルから帰ってきた。

 それはズタズタに破壊された地球環境を元に戻すことが出来るという、信じられないオーバーテクノロジーを手に入れたということだった。この技術は当時の地球人は無かった。火星の一部や太陽系内の一部をテラ・フォーミングすることは出来たかもしれないが、崩壊した地球環境を、まるで時計の針を元に戻すかのように綺麗に修復・再生する技術は高度文明イスカンダルの真骨頂ともいえた。しかもなぜか知らないが、タダでくれた。良い人過ぎる。

喜久子たん、サイコー!


 あとは、このイスカンダル・スターシアのテラ・フォーミング技術を地球人がどこまで商業化・製品化してもOKなのかのライセンスの問題が重要となるだろうが、それはヤマトの諸君ら軍人には関係のないことだ。


 判っていることは、ヤマトの諸君らは、もう何回宝くじを買っても一等・前後賞が当たることはないだろう・・・というほどの人生の幸運を、此処で一気に使い切ってしまったということだ。普通に考えれば巨大星間帝国ガミラスのお隣さんまで、荷物の回収に行って帰ってくることの出来るクロネコヤマトなんぞ存在しない。しかし彼らはやってのけた。無論、これはテロンの強さによるものではない。ガミラス帝国が既に斜陽の帝国で、ほぼ末期のローマ帝国のような状況だったという幸運に助けられた可能性が大だ。よってBBY-01のテロン人たちは長生きしても、もう良いことはない。実際、このあと彼らは戦争しまくり、常に業火の中に身を晒すことになるのだから…

 ま、今日のところはとりあえず、「おつかれ。おかえりなさい m(_ _)m」


  ※     ※     ※


 とはいえ、帰還直後のBBY-01ヤマトの諸君らは少し『?』にもなっていた。

「なんか、思っていたのと違うよね?」という、錯覚にも似た感覚だった。


 確かにヤマトの諸君が地球に帰ってきた時、彼等は英雄として派手に出迎えられた。しかし、そのパレードが結構豪華だった。死滅の縁に追い詰められていたはずの人類の姿とは程遠い、御馳走が山のように並ぶ華やかなものだった。すぐに彼等は知った。彼等が旅立った後の地球では、次元波動超弦跳躍機関の複製に成功し、その莫大な恩恵を得ていたということを。


 実際、超ド級宇宙戦艦(のようなもの)の建造まで行われていたし、旧式艦のアップグレード化も成功していた。それどころか潤沢なエネルギーのおかげで地下都市はそれなりに快適さを取り戻していた。戦時防空壕というよりも、ワインを楽しめる素敵な地下室クールバーに近いほどた。

 またBBY-01ヤマトがイスカンダルへの行き掛けの駄賃にガミラス冥王星基地を木端微塵に火達磨ひだるまにしたために、自由に太陽系の中を移動することも出来るようになっていた。そして、とっとと太陽系内の天然資源の採掘事業を始めていた。『太陽系の制空権』を取り戻したと言っていい。

 要するに地球はBBY-01ヤマトなどとは無関係に、勝手に人類文明再生への道を突き進んでいたのだ。


 そのため、ある程度の産業復興がなされていたし、ヤマト轟沈の可能性を考えて、第二・第三の遣イスカンダル使節団の編成作業さえ進んでいたほどだった。農業・工業・サービス産業・・・あらゆる活動領域が息を吹き返しつつあった。また次元波動超弦跳躍機関のおかげで他の恒星系への移住も(理論上は)可能だったし、勿論、地球が元通りの緑濫れる美しい故郷に戻ってくれればサイコーだったが、そうでなくても絶滅を回避するだけならば、(少数の人類だけだったかもしれないが)もはや地球を捨てる可能性さえ真剣に検討されたほどだった。

 そんな感じだったので、送り出した地球人もまた、


「ヤマトか・・・なにもかも懐かしい・・・」


・・・的な、物凄いビミョー感を内々、抱いていた。

 ハッキリ言えば「いまさら何しに戻ってきたの?」という感じが無くもなかったのだ。


 とはいえ、故郷の地球が住みやすい元の星に回復し、おまけに地上で生活できるのならば、それはそれで大変嬉しいことだったので、そのことに関してはヤマトの帰還を確かに喜んだ。なにしろタダで元通りになったのだ。他の惑星に移住するにはそれなりカネがかかるはずだから、それだけ考えても結構なことだった。またそれ以上にガミラスとの和平条約を結ぶことが出来そうだということも大きかった。平和になる、ということだったからだ。


 しかし、この確信のもてる平和によって顕在化した問題があった。対ガミラス戦役を遂行するにあたって掛かった戦費、特に戦時国債を中心とする『利払いの必要な債務』をどう解消するか? という問題がソレだった。

 いままでは「ガミラスとの戦争が続いているから、戦時保証の債務の繰り延べをさせてくれ」と債権者たちにお願いすることもできた。「いやだ!」というのがはばかられる状況だったので、債権者も日々の生活の不安を押し殺して、さしあたり泣き寝入りすることもできた。


 しかし、その前提である戦争が無くなったのだ。なら戦時債務の問題に真剣に取り組まなければならない。これ以上、膨れ上がることはないし、この問題を解決しなければ戦後の経済復興の足枷が解けないからだ・・・


  ※     ※     ※


 これに先立つ2199年、まだ地球は強力な統一政体〜地球連邦政府という、いわば20世紀以後のアメリカ合衆国のような『強い連邦政府と50の国々』のような、強力な中央集権的政治政体を採用していたワケでさえ無かった。

「一つになって協力しあえば、結果はもっとマシ」なハズなのに、ナショナリズム丸出しで統一政体の構築できなかった人類は、個々バラバラに各国の責任において地下都市を構築し、遊星爆弾の攻撃から逃れた。経済力の無い国は見捨てられた可能性さえある。つまり絶滅したのだ。


 なるほど、テレビ画面の中で黒人の数がやたらと少ないのは、もしかしたらそういう理由かもしれない。アフリカが18-21世紀の時のように、経済的には発展から取り残された地域のままであったならば納得のいく結果だ。戦争は弱者をより弱者にし、より最初に死滅させる・・・この冷徹な生存原理が働くのだから。


 なにしろ、ガミラス来寇前の平和な時でさえ、移民を海に追っ払うような我々だ。自分が困っている時に他人を助ける気になど、なるはずもない。否、むしろ協力したくても、地球上の制空権さえアヤシイほど厳しい状況では、各国単位で孤立した住環境の整備を図らねばならないほど悲惨だったというのが実像かもしれない。

 他の国・他の地域を救済するために、荒廃しきった地上を対NBC防護トラックの群れが移動することさえガミラス航空隊の目をかすめるように行わねばならないほど絶望的だったとしたら、2199年の人類を責めることも出来ない。


 このような顛末てんまつから考えても、たとえ弱体化していたとしても国家は社会秩序の最小単位として機能せざるを得なかったと思われる。無論、傍証もある。2199年に発動された『メ号作戦』という作戦名の対ガミラス冥王星前線基地への長駆邀撃戦がそれだ。


 この時、主力を構成していたのは日本から派遣された宇宙艦隊だった。旗艦『キリシマ』を始めとした21隻の艦艇は、結果、五倍以上の優勢かつ優秀なガミラス艦隊の待ち伏せ攻撃を受け壊滅する。

 ちなみにこの5倍というのには意味があり、松本零士氏によるコミック版・宇宙戦艦ヤマトの冒頭で、冥王星内作戦区第12ブロックで会敵したガミラス艦隊宇宙戦艦6隻、巡洋宇宙艦8隻、突撃艦40隻の戦力を前に、沖田提督が「ガミラス艦隊は我々の5倍の数だ」というセリフをフォローしたものと考えるのが妥当だろう・・・。


 この時、日本から派遣された大規模宇宙艦隊は『空間自衛隊』というような日本国の戦闘部隊でもなかったし、統一した地球連邦政府が保有する『連邦軍』でもなかった。『国連統合軍』の宇宙軍部門・国連宇宙防衛委員会が統括する『国連軍』としての参戦なのである。各国軍が国連に兵力を供出し、国連軍立案の作戦を各国の判断で実行するか否かを決定する・・・という、国連内に置かれた緩やかな軍事協賛委員会ヘッドクオーターであり、要するに朝鮮戦争のオーストラリア軍やイギリス軍などに立場が似ているということだ。


 なら自衛隊宇宙艦隊が極東方面軍管区の第一艦隊を名乗っていたのも、日本は憲法9条の制約のために国連軍への参加と統合運用に時間が掛かったので、主要国の中で日本の宇宙艦隊だけが、結果として多数残存していたから・・・と考えれば辻褄つじつまも合う。逆にいえば『国連』という組織が2199年時には、まだしぶとく生き残っていた何よりの証拠と言える。


 もし日本国固有の戦力であれば、話が異なる。おそらく日米安全保障条約は生きていたであろうから(この時代、たぶん世界的に見ても『古い歴史を持つ』国際条約の一つになっていたと思われる)、日米安保に従って日本国の宇宙空間領土へのガミラス帝国軍の侵略的行動に対する日本単独の防衛行動、もしくはアメリカ宇宙艦隊に対するガミラスの阻止行動に際しての、米軍艦船との共同戦闘行動の形をとるはずだ。


 前者は自衛隊宇宙軍(ここでは『空間自衛隊』と仮称しておく)の防衛行動として、後者であれば2015年の日米安保法関連法案改正を嚆矢こうしとした『自衛隊の活動領域の地理的制約の解除』に伴う一連の対米援助軍事行動の一環としての戦闘行動になったはずで、どちらにしても国連軍と名乗るはずはない。多国籍軍とか有志連合という名称の宇宙軍であったことだろう。


 また地球連邦政府軍だったとすれば、その軍組織は『連邦軍』であり、連邦政府の決定と連邦議会もしくは連邦大統領の裁可・命令が必要だったはずだが、BBY-01ヤマト出航時に各国政府と日本の軍関係者とのやり取りらしい会話から垣間見えたことを考えると、これまた上意下達じょういかたつの『通常の国家』のような全人類を統一した組織形態が存在していたようにも思えない。


 要するに内惑星戦争の英雄・沖田提督の第一艦隊は、日本国政府が供出した自衛隊所属の艦隊戦力だったと考えるべきなのである。艦隊人員が日本人だらけだったことも、これでスンナリ納得できる。空間自衛隊の艦艇だったからである。


 この事は、メ号作戦に投入された艦隊建設と運用の費用負担は国連、つまり地球人が等しく税金で負ったものではなく、『日本国民の税金で作られた艦隊』だったということだ。なので、日本人以外からすれば「ボクたち、あんま関係ない」で済む問題だったろう。逆に我ら日本人からすれば、無謀極まるメ号作戦に多数の日本人を失ったことは是認ぜにんしがたい。実際、多数の人員を失ったために後の遣イスカンダル使節団のBBY-01ヤマトの人員構成にも支障がでたほどだ。


 一例を挙げれば磯風型突撃宇宙駆逐艦DDS-117号『ゆきかぜ』の艦長だった古代守三等宙佐がこの戦闘で行方不明になったために、彼の弟がBBY-01ヤマトに戦術長として乗艦せざるを得ない程の、酷い状況の悪化を見た。本来は古代守三等宙佐に補任される要職で、高度な戦略戦術知識と、ヤマト砲術運用に関する先進的で専門的な技量、さらに対異星人戦闘において実戦経験を積んでいた人物が適任とされていたはずの部署に、わずかに20歳の戦闘未経験のコドモが配されるほどの人員不足に陥ってしまったのだ。しかも縁故採用だ。まるでフジテレビのアナウンス室のようだ。


 事実、BBY-01ヤマトの人員構成は20代の若者と、相当年を取った老人ばかりで、まさに第二次大戦末期の帝国陸軍のような絶望的な状況に近かった。最も手慣れた30代前後の下士官不足は深刻な戦力不足に直結する。特にヤマトに関しては20代もしくは未成年の若者たちが多数乗り組んでいたから、さながらコドモ十字軍の様相だったことだろう。とはいえ、古代三佐の弟|(←縁故採用された人)も、将来の日本もしくは地球を背負って立つ、水際立った優秀なエリートであったことは唯一の救いだったが(彼は後に金剛改型宇宙戦艦の47番艦『ゆうなぎ』の艦長となり第8ガミラス浮遊大陸基地奪還作戦で勇戦することになる。20代そこそこで、だ。人材不足も甚だしい)・・・。


  ※     ※     ※


 これらから判る事実がある。

 2199年時、土断場にあってなお人類は既存の『国家』の枠組みに固執していたのである。一つの銀河星雲を統一するほどの国家相手に、たった一個の星の中で200前後の小さな『国家』に分かれていて、それぞれが個々バラバラに星間統一帝国と戦っていたという程の愚かさだったのだ。


 驚くべきことに、このバラバラで統一感のない、小さな地球の上の小さな『国家』は2200年においてもまだ生きていたのである。そして真の問題は、こんな小さな個々バラバラの国家に、ガミラス戦役時に発生した戦時債務を処理するだけの能力があるのか?…ということだ。

 2020年とさほど変わらないかもしれない『国家』の枠組みと国境線が生き残った2200年の世界で、とてつもないほどの債務を抱えた場合を検証しようと思う。結論から言えば、希望はない。特に金融資産を保有しているのならば、だ…



          【  この項目、続く  】

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