§4-1-5・もう一つの地球が辿った道を説明する前の総まとめとして〜仮に日本が経済破綻したとしても、何故「ダメージが軽くて済むのか?」を考えてみる

 いままで述べてきた文が「次元波動超弦跳躍機関」つまり波動エンジンというエネルギー資源を持ち得なかった人類の辿ったであろう、最も可能性の高いストーリーだった。

 そして我々は人類文明において「エネルギー」と「金融」の二つが必須であるということも知っている。エネルギーに関しては拙文・第4話において、金融に関してはほぼ全編に渡って繰り返し述べてきたことだった。


 では2199年において、もし人類が『BBY-01ヤマト』に積んだ次元波動超弦跳躍機関のコピーを作り出すことが出来ていたら? ・・・という場合の2200年の展開をこれから述べる。

 BBY-01ヤマト帰還までのプロセスは拙文の第6話〜第8話のような展開を辿った。三話を割いたので、ここでは詳述は避ける。肝心なことは、結果として『次元波動超弦跳躍機関を手に入れた』&『戦争で莫大な債務を抱えて死にそう』の結末になったということだった。他の選択肢はない。戦争になったのだから、幸せな結論などないのだ。

 この2200年の地球はつまり『エネルギーはあるが、金融で窒息しかけている世界』と言えた。


 しかしエネルギーを自前でまかなえるし、冥王星のガミラス基地も消えて無くなったので、ガミラスの影に怯えながらではあるが、「復興計画を前に進めようかな?」と、少しだけ前向きな人類の姿がそこにはあったはずだ。こちらの世界には、希望がないわけではなかった、もう一つの2199年だ。


 ただし、こちらの世界は『エネルギーさえ無かった2199年が辿った道』すなわち『地球破綻→大増税と金融再編成→国家の事実上の解体&再編成→強力な地球連邦政府成立』とは違う世界になりそうだった。なぜならば『エネルギーがある。そして資本も中途半端にあるor莫大な債務もある』の世界だからだ。


 自分の国でエネルギーや経済力があるのなら、なんで進んで『地球連邦』なるワケの判らない『謎組織』に改編などするのだろうか? 実際、1945年に国際連合が成立して以後、一度たりとも『全ての国家を解体して国連という新しい統一地球国家を!』などという展開になったことなどない。

 各国政府もしくは各国国民にとって「ガイジンの面倒なんかみたくない」とは、いつの時代でも変わらず抱いている気持ちだろう。いまだって海外からの移民には、あまりうれしい顔をしないのが実情だ。たとえ異星人の強襲があっても、ガミラスがいなくなれば元の世界。平常運転に戻ってもおかしくない。

 そんなワガママな連中の集まりであり、しかも歴史的にも長持ちしている『国家』という組織形態を、そう易々やすやすと手放すとは思えない。たとえ17万光年先に手が届くようになっても、小さな地球の上では、相変わらず心の小さい人達が、小さい事に固執し続けると考えるのが妥当なのではなかろうか?


 結局、この小さな世界はエネルギーとカネで動いている。そして、今度の2200年の地球には、そのどちらも存在している。ここに信じられないほどの戦費負債が乗っかったという状態は、とどのつまり『2008年のリーマンショックの超ド級(←ドは戦艦ドレッドノートの事)拡大版』の経済パニックに近い。規模が桁外れでニッチもサッチもいかなくなっただけのことだ・・・。



  ※     ※     ※


 ここでこれまでの流れを整理してみる。我々はまた一つの事をなんとなく理解した。それは・・・


『国家債務は国力の増進のためには必要』・・・だが、所詮は債務なので、

『国民の税金を投入して債務を減らすしかない』。


 しかし経済力の底堅い国の場合、この税負担が相対的に少なくて済み、また、

『持続的な経済成長インフレによってのみ国家債務は消滅する』ということだ。


 今の日本が経済破綻を起こせば、このタイプの破綻になるだろう。逆に言えば、国民の税負担が気違い沙汰に巨大になる場合というのは、『気違い沙汰な国家債務を抱えた場合にのみ起こる』・・・ということだった。


  ※     ※     ※


 過去の事例を紐解くと、国家が破綻した場合、どうなるか? ・・・という疑問には既に回答があった。


 国家債務がGDP比で8倍以上にも膨れ上がり、挙げ句、産業基盤が戦災で消滅した1945年の日本の場合、300%のインフレと国民資産の10%もの過酷な『預金税』という大増税による『超緊縮政策』を取るしか無かった。

 これは『気違い沙汰』な国家債務を抱えた『国力の弱い』国家の辿った道だった。拙文・第34話〜第37話で述べてきた、エネルギーが無く産業基盤が失われてしまい、しかも天文学的な数字(・・・が幾等だったのかは残念ながら解らないのだが)の戦費国債を背負った2200年の地球の辿った復興の道でもあった。


 次にGDPの5-5.5倍程度の債務を負った国の例として、第一次世界大戦直後のドイツ第二帝政〜ワイマール共和国の例を挙げた。

 拙文の第23話の内容だが、敗戦国ではあっても国内産業は無傷のまま残った。当時は大規模無制限空襲という手段がなかったからだが、この国は全く無責任に通貨供給量を増大させたために一兆倍もの悪性インフレに陥った。これは戦後日本や2200年の地球が採った金融手段の真逆の『超金融緩和政策』の大失敗例だ。産業力が残っていても金融政策が不適切であると国家は破滅的な結果になるということだ。


 別の言い方をすると『国家債務の5倍程度の場合、やはり激烈な増税と超緊縮策しか手段がなくなるのではないか?』ともいえなくもないのではないか?

 つまり、この『国家債務の五倍程度』が一つの分水嶺ぶんすいれいになるのかもしれない・・・という、漠然とした予感だ。本当だろうか?


 そこで戦費が国家債務の3-4倍ほどの債務を背負った国のパターンを考えてみる。

 第二次大戦後のアメリカは3.5-4倍程度の国家債務を戦時国債の形で抱え込んだ(拙文・第22話と第30話)。アメリカの場合、戦勝国であったことや世界の富の1/2〜3/4が主に国債と戦費支払いの形でアメリカに流れ込んだ債権国であったことや、もともと莫大な経済力・生産力が無傷のまま残っていたことなどからインフレ率が4倍程度で収束した。インフレは米国に資金が一気に流入したことと、戦時体制のため生活資本が不足していたことによる。なので社会資本を物資不足インフレに振り向けることが出来、その結果、数年でインフレは収束した。アメリカでいう『ベビーブーマー』の世代にあたる。


 もう一つ別の事例を挙げると、戦争による国家債務が対GDP比4倍程度の負債を抱えた戦後の英国の場合、経済力・生産力の低下に歯止めがかからなかった。なぜなら英国は債務国に転落したからだ。ほどほどの技術力・産業経済力はあったが赤字国になっていたということだ。結果、莫大な費用負担を強いていたインド植民地からの撤退と、以後長く続く英国病へと至る。


 この二国の例は『債権国と債務国』との違いとも言える。極端過ぎるかもしれないが、金融収支がプラスかマイナスかで国家の行く末が正反対になったということだ。極論すぎるかもしれないが、金融的状況の違いが国家の違いを生み出したとあえて言ってみる。つまり、状況によっては結構ラクチンに生き残ることも出来そうな国家債務の上限・・・の経験的事例かもしれない。


 なので、2020年くらいの対GDP比200%の国債を抱え込んでる日本の場合、経済力があり、国民の富があり、企業が400兆円にも達する内部留保金を抱え込む一方で、国内外に産業・金融資産があり、おまけに領海内には途方もない量のメタンハイドレートという、自前で賄えそうなエネルギー資源or国家債務を一気に返済出来そうな超有望な輸出資源を持っているという、『とにかく勝ち組』&『実はたなぼた』な日本国が早々簡単に参るとは思えない。


 とかく地震だらけの国・・・という悲惨な一面だけしか見えてないと、かつて自分の足元には世界の1/3もの産出量を誇った銅や銀、年間5000万トンもの莫大な産出量があった石炭という『天が与えたすっごい財産』のありがたみを忘れてしまう。これらは地質変動がもたらしたものであって、日本人の努力など始めから無い。我らは幸運だっただけだ。いま無いのは「強欲に掘り尽くした」結果に過ぎない。


 勿論、「日本は破綻するに決まっている」という悲観主義者、もしくは『パヨク』と嘲笑される左翼無政府主義者の諸君らもいることだろう。そんな彼等には、「現在の世界が平然と生き残っているのは何故か?」と尋ねたい。拙文・第31話で、2010年代に既に人類は総生産力の200%もの債務を抱えたと言った。リーマンショックの悪影響だ。その負債額、実に1.5京円。当時の地球の全生産力がおよそ7,500-兆円(GDPもしくはGNPに相当するモノ)とされていたから、2020年くらいの日本とほぼ同じ程度の負債額だ。しかも日本の国債と違い、負債金利の利率も利払い額も高く、中身も酷い。そもそも負債元本がデカすぎる。


 リーマンショック時に使われた様々な金融商品は(正確な実数が隠匿されていて不明なのだが)かなりの高金利負担商品だ。たとえば金利10%以上とか、ヘタすれば20%以上のモノもある。これらは(欧米では結構一般的な)リボ払いのような『何時までたっても債務元本が減らない』厄介な債務だったり、金利負担が突然増えてしまう金利変動型債務だったり、複利負債のような支払い金利が倍々で増えていく天井知らずのタチの悪い債務が多いのだ。つまり債務はいつまで経っても減らない。共産主義者やパヨクなら「全て強欲な資本主義者・富をもつ金持ちが悪い」といいそうだが、筆者のようなマネタリストでさえも「ボクもそう思うヨー(^ω^)」だ。実際、こりゃシャレにならん。


 しかしあれから10年、なんとかかんとか・・・というか、図々しくも平然と人類は生き残ってきた。経済活動をしながら、である。筆者が思うに、「いずれ人類は破綻する」に違いないが、それは個々の国家や銀行が対処すべき事柄になるのだろう。つまり「日本にはあまり関係ない」という話しだ。

 無論、日本にも無関係ではないが、今後予想される日本以外の国、アメリカやEU、中国や中東の金融機関などの阿鼻叫喚あびきょうかんは多分、日本語ではないだろう・・・という安心感だ。


 より重要な事は、倍々に増えていく債務の中でもなんとかやりくりしている人類の姿が今現在、此所にある・・・という厳然たる事実の方だ。

 債務がGDPの2倍程度ならば国家は破滅しない。これで破滅するのは政府と金融担当部門の力量不足ということだ。

 さらにいえば国家債務対GDP比で2倍程度の国の場合、金融的対策とほどほどの増税、その前にもしかしたら計画的国家破産プチ・デフォルトで対処は可能なのではないか? ということだった。それが複利支払型や、金利変動型などの悪性の債務形態でなければ、なおさら、だ。


 筆者が「日本はなんとかなるし、なんとかする方法もある。国民の犠牲が出るものの、途轍もなく酷いものではないはずだ」の実証的見解のバックボーンがこれらの事実だ。リーマンショック後の世界の方が、もっと遥かに酷い。世界各国や銀行がどれほどの含み損を抱えていて、今後、どのくらい爆増するのかメドさえ立たないほどだ・・・。しかし、それでも人類は生きている。2200年まで生き残ったのだ。



  ※     ※     ※


 そこで、これらを踏まえて、今度から話しをしようと思う『もう一つの2200年』の流れについて話しをしようとおもう。

 そこは安くて潤沢なエネルギーがあり、産業資源もあって経済力が程々に回復傾向を見せ始めているが、とんでもない額の戦時公債で破綻寸前の『中途半端な地球』だ。

 しかし、ありえそうな結論はたった一つ『全地球規模での大規模連鎖型経済破綻』にしかならないのではないか? ・・・という事だった。中途半端に経済力が回復してしまったので、前回まで四話に渡って繰り広げてきた『経済破綻→債務整理→地球連邦誕生』ではなく、「全地球規模での経済破綻を回避しなくては」・・・と頑張った挙げ句の果てに、より大きな全面連鎖破綻という、かなり仰天の結果にしかならないような気がしているのだ。こちらは欧米各国や中華人民共和国が辿る可能性のあるパターンだ。


  ※     ※     ※


 なので、これから「経済的に立ち直りそうに思えたので、頑張って莫大な債務を消滅させようとあがいてみたら、余計に失敗した」2200年の世界をシミュレーションしていこうと思う。ちょうど『エネルギーもなく絶望していた2200年の地球』とは好対照を成すような結果だ。

 そしてそれは『リーマンショック後に、対処方法を間違えた場合の世界』が辿るのと同じ結末となるはずだ。思考実験としても丁度よい好例となりそうに思うのだ・・・。

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