§3-2・金融業は特別な働きをし、しかも戦争に対しては『中立』だという事実

§3-2-1・金融業は特別だという話〜産業革命というチキンラーメンと同じくらいに偉大なイノベーションの真実(←実はカネの流れの正常化という話)

 以前、『第4話・次元波動エンジンこそ真の核心』の中で『エネルギーこそ、文明のもといだ』と述べた。

 全ての生産活動にエネルギーが必要なだけでなく、失くなれば即死する。値段が上がっただけでも死にかけた。その凡例として1973年のオイルショックの実例を挙げた。僅かな不安でもああなる、ということだ。

 同じことが金融でも言える。『経済はこの星の体温』とは岡三証券のCMだが、体温を作る血流が『資金の流れ』だからだ。そして資金の流れを作る『心臓』が『銀行・金融』だからだ。体内で生成した成果物を、体内全域に伝播する役割も担う。

 心臓が止まれば血流は止まる。体温は失われる。というよりも、即死する。生体において物理的なエネルギー生成素因を運搬するのが血流ならば、銀行・金融はエネルギーを文明に伝える心臓なのだ。カネの流れが経済を動かす。故に『金融は経済のもとい』と言える。


 人類の全ての生成物にエネルギーの投入が必要なように、あらゆる生成物の流通・販売にカネが必要だし、生成という行為自体にもカネが関わる。つまりカネは全ての行為に必ず必要とされるモノなのだ。他のものはなくてもいい。鉄やニッケルが必要ない場合もあるし、酸素や水が不必要な生成反応もある。私や貴方がいらない業種も沢山あるし、他の代わりで賄える場合もある。

 しかし、カネが絡まないことはない。これはエネルギーと同じ存在だ。つまりカネとエネルギーは全ての成果物に『内在する』、切り離すことの出来ない唯一の(正確には『カネ』と『エネルギー』の二つだが・・・)存在だった。

 しかも、エネルギー自体も『通貨』で価値付けすることも出来る。カネ以外のモノで、エネルギーを他の何かで交換スワップ出来るのか? 出来ない。きんやダイヤで『交換』することは可能だろうが、一般的ではない。つまり『そんなの誰もやらない』のだ。一方、我々は電気やガス代を払っている。カネで、だ。エネルギーを取り出す生成過程にさえ、カネ勘定が必要だ。


 つまりカネとは、人類の生成した有形・無形の全ての成果物に価値付をし、生成に必須のエネルギーにさえ『価格』という価値判断をする物差しであり交換手段であり、成果物との等価交換の出来る『財産』だ。これは唯一の存在だ。


 エネルギーは文明のもとい。経済は文明の基。金融は経済の基。

 よって国家にとって必須の産業は『エネルギー』と『金融』だ。

 

 そういうことだった。このどちらか、もしくは双方が崩壊すれば文明は破滅する。スタグフレーションが発生するはずだ。

 別の言い方をすれば、ガミラスやガトランティスのような異星文明であっても『エネルギー』と『カネ』が存在していなければオカシイ。逆に言えば『カネ』の流れを詳しく見ていけば、ガミラスやガトランティスと言った、我ら素朴な野蛮人からは全く次元の違う存在のように見えるかもしれない連中でさえ、『タダの国家』に過ぎないことが判るはずだ。文明なのだからエネルギーがあり、国家として運営されているのだから通貨があって然るべき。勿論、ガトランティスがマクロスのゼントラーディになんとなく近しい設定にリメイクされたとしても、国家であるのなら『エネルギー』と『カネ』があるはずなのだ。

 なにしろ、カネを払わず他人の成果物を奪い取る略奪暴行・奴隷制が横行した古代国家の時代でさえ、奴隷売買には貨幣が介在していたくらいなのだから・・・


 そこで、金融が整理・統合された『成果』の、もっとも劇的な例をあげる。

 1700年代中盤から発生した産業革命だ。


  ※     ※     ※


 ある国家における産業の復興の過程において、最も重要なのは『負債の整理』だ。特に銀行の債務問題の解消は極めて重要だ。産業に資本を投下することが出来るという意味で、まさに経済の基盤だからだ。しかし銀行から債務を引き抜く「だけ」で経済上昇トレンドが上手く作れるものだろうか? 

 実は「上手くいく」。実例をあげる。18世紀のイギリス産業革命がそうだ。


 産業革命は1730年代以後の、毛織物工業に端を発する技術革新の結果だ・・・とされている。全員が世界史の授業でそう習ったはずだ。だが、これが間違いなのだ。事実は全く違う。技術など『まさにどうでもいい』ものだった。


 なぜ産業革命が英国主導で行われたのであろうか? この時代、ヨーロッパに共通していたものがあった。それなりのペースで進んだ手工業の発展。人口増。農地改革や農業技術の進展などにより、人口が都市に集まるようになるという集積効果。なによりも資本の蓄積があった。

 しかし英国が他のヨーロッパと決定的に違ったのは、海外植民地を持っていた・・・ということだった。

 この海外経営に際して、多額の資本が必要とされた。また海外侵略を意味する植民地化は必然、小規模の戦闘を常態化させた。この結果、英国は1700年代中期には国家破産に近い状態に陥った。

 一方、個人や企業は産業の進展に伴い、資本を蓄積するのと同時に投資も行った。海外植民地への投資だ。1730年代から英国国内においても鉱山開発や石炭開発が進んだ。このために資金需要は増大し、銀行の債務は増大した。焦げ付くことも多くなった。産業革命直前の頃になると、資本力の弱い中小銀行が倒産するようになっていく。庶民は頻繁に取り付け騒ぎを起こし、より大きくて安心の出来る銀行へと殺到した。

 この結果、次のような効果が生まれた。債務を抱えた銀行は淘汰され、債務が帳消しになった。多くの預金者を道連れに、だ。反面、少数だが預金力が大きく強い銀行が生まれた。彼等は莫大な資本を保有するに至った。健全で強大な銀行、債券、保険屋が誕生したのだ。彼等は、この元手を活用できる投資先を探し始めた。

 この時に、沸かしたヤカンの蒸気を見て、『チキンラーメンよりウマイもん、ねーかな?』という発想を得たワットという変人がヒョッコリ歴史に登場した・・・たったこれだけだ。

 勿論、ワットが全てではない。似たような事例は同時期、別の産業でも起こっていた。例えば運河開発だ。鉱工業生産力の上昇に伴い、移動手段が必要とされたからだ。その必要に投資が乗っかり、投資のリターンが更なる投資熱を上僖じょうきさせたのだ。


 重要なことは金融が整理され、投資ブームが起こっていたことだ。無論、鉱工業生産力の上昇さえも、投資ブームのおかげだ。鉱山開発に資金が回るようになっていたからだ。

 これの意味するところは、余剰資本がなければダメだということだ。


 これ以後、英国は技術革新→投資して育成→さらなる技術革新と新たな生成物→利益の回収と再投資→さらなる技術革新と新たな成果物・・・の、好循環モードに入っていく。まさに坂道を『転げ上がる』ように急成長し、国家歳入は劇的に好転した。資本力の増強は庶民にも恩恵をもたらしたし、金融業の発展を見た。市場の拡大も進み、国富の増大に繋がった。しかもこの第一次産業革命は1760-1830年代と長きに渡って続いた。資本と債務の整理統合による余剰資本の創出が如何に重要かということの証左だ。そして英国は最強帝国へと飛躍した。

 資本の再整理と統合、そして投資力の回復こそが、大英帝国のバックボーンだったのだ。


  ※     ※     ※


 日本においてもこの効果は現れた。この一連の企業に対する戦時補償反故政策だったが、この苦境を脱するために、帝国時代の負債を国民の税金で精算しに掛かった。これによって金融再編と整理、そして資金投入による体力の強化が図れた。

 この金融整理業務が続くのが大体1950年代前半まで(実際には延々と続くが、一息つけるようになるのはこの時期)、金融業務の改善が『健全な資本』の構築に役立ち、それが戦後の爆発的な経済発展の原資となったのだ。

 まさに、産業革命と同じことが起こったのだ。日本が復活するのは当然のことだった。



       【  この項目、あと四回続きます  】

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