鮮烈を追い続ける、クリエイター。






永野護氏/アーティスト・クリエイター


メカニックデザイナー。キャラクターデザイナー。漫画家。

……と、紹介するのが正しいかもしれませんが、枠に当てはまらないと判断致しました。


『ファイブスターストーリー』(FSS)の原作者。

緻密な設定と世界観からするとSFなのですが、

(欧米では、サイエンス・ファンタジーに当たるそうです)

氏が語るには〝おとぎ話〟。

一九八六年から、連載と休載を繰り返しながらも、しっかりと連載中です。


最大の特徴は、連載中でありながら、氏のこだわりのまま突然、設定、用語、キャラクター氏名の一部。

象徴の一つでもある、決戦巨大身型兵器MHモーター・ヘッドを、GTMゴティックメードへと名称、デザイン諸々を刷新。


これを、暴挙と受け取るのか。氏らしさと受け取るのかは、それぞれだと思われます。


私は、後者です。


新設定。GTMも、素晴らしいラインです。

特に、脚のライン。女性のピンヒールを思わせる、足元のシャープさがたまりません。


連載は三十年を超え、時代も流れ、氏の性格を考えると、当然と言えば当然の結果。


生み出された時点で、過去の産物です。


案の定ではあるのですが、氏だからこそ許されるのだろうとも、感じる次第です。


熱く語っておりますが。

問題が一つあるのです。

もちろん、氏ではなく、私にあります。

批判を甘んじて受ける覚悟で申し上げます。


周囲が熱狂する中。

有名なロボット(系統も含め)アニメの数々が苦手でした。


理由は簡単です。


お人形さんや、設定資料があるのは存じ上げておりますが、あの構造で、動けるとは思えなかったからです。

魅力は、群像劇にも焦点が当てられるのですが、違和感が拭い切れず、はぐれ者の気分で過ごしておりました。


そこで出会ったのが、FSSです。


世界の根幹から作り出される物語。魅力的なキャラクター達。


全く、一切、ロボットに興味がなかった私が、作中のREDミラージュを見た時の衝撃たるや。尋常ではありませんでした。

こんなに美しいロボット兵器が、世に生み出されたとは。

感動の一言でした。


動く、巨大身型兵器の可能性。見た事もないデザイン。ボルト一つから考え出される細やかさ。

大好物でもある、設定資料集の美麗さ。


氏は頭の中で、何度も何度も、あらゆるモノの解体を繰り返し、辿り着いた先が、命が持つ強さといびつさだったのでは。

素人は、妄想する次第です。


作品もさることながら、作者の永野護氏の魅力も大きいです。


「付いて来れる奴だけ、付いて来い」


スタンスを、現在も変えない永野節。

この姿勢を、作る側の傲慢とも受け取れるかもしれません。


誤解を怖れず申し上げます。

受け手も、無責任で、無慈悲な部分があります。


今でこそ、カクヨム様でお世話になる身。拙作を発信する側(カク側)にいますが、

基本的には、受け手(ヨム側)でもあります。

双方の都合も、重々承知しております。


それでも、私がFSSに引き寄せられるのは、

今まで出会った、アニメ・漫画・ゲーム全般を含めた頂点に立つ、一番好きなキャラクターが、存在しているからです。


お気付きかもしれませんが、

永野護氏は、影響を受けたクリエイターの、お一人です。


作品だからこそ込める、既存の常識の垣根を超えるスタンス。

ここまで、命の深淵に踏み込んでも良いのかと言う、ボーダーラインの参考。

服飾のデザイン。

衣装や、髪型を変えても、誰か分かるキャラクター達。

ファンタジーへの逃げ道の設定。限界までリアリティに落とし込む知識の深さとのバランスには、脱帽の域を超えております。


創作をされる方には、実感があると妄想してしまいます。


脳から現実に引き出した時点で、他人の物になる。


脳内で、鮮明で明確な映像を、風景を、文章を引き出した時の別物感・違和感とのせめぎ合い。


氏は、楽しみながらも、苦労を重ねていらっしゃる痕跡が、作品にまざまざと刻まれています。


破綻する事が、分かっているとして。

納得できず、受け容れられない部分があるとして。

尊敬し、考えさせられ、感じる美しさがある限り、引き寄せられる幸い。

このバランスこそ〝好き〟でいられる正体の一つではないか。

そう、思う次第です。


氏は、様々な気付きを与えて下さいました。

変化をするための、余白を残しておく事。

変化による、再構築の必要性を覚悟する事。

設定の重要さ。

破綻しないための、俯瞰的な姿勢。

はぐれる事を怖れない事。

挑戦する事。

美しいと受け容れる感覚を、研ぎ澄ます事。


書き表すと、キリがありません。


氏は、百年先、その先も業界の歴史に、その名を残されると確信しております。


誰かに影響を与え、記憶に、記録に残る作品を生み出される方は、本当に素晴らしく、偉業だと感じる次第です。





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