第14話 赤とIT
「笑うなっつってんだろ!! ぶっ殺すぞ、こら!!」
「へ、へい! スンマセン、姉さん!」
「ったくよ。……まったく朝っぱらからムカつくぜ。やっと同じ学校の生徒を見つけたってのによ」
このヤンキー姉さんは学園まで行けなくて、半泣きになってウロチョロして、こんな裏通りまで出ちゃって、困った揚げ句に道案内の同学生を探していたのか。
想像しただけ、吹き出す。むせる。ケホケホする。
さすがの姉さんも観念したのか、もう拳を振るわない。
「そ、そりゃ案内相手をぶちのめしたら、あたしがガッコに行けなくなるしな」
情けない言い訳だ。
「で、でも、ですね、姉さん、スマホ使えば学園ぐらい一発で」
「んん? これ、そんなことできるのか?」
と、曖昧な返事とともに、彼女は自分の携帯を僕の目の前に差し出した。
これは知っている。ご年配の方が使う、操作も簡単で目にも易しい携帯だ。金色で、なんか大量のお守りがストラップについている。
ダッセ!! とは言わなかった。言ったらたぶん、今度こそ躊躇なく姉さんは僕を半殺しにするだろう。でも、心の中では大声で言ってやる。「クソダセえ!!」
「そ、そっすね、この携帯でも道案内はできるかもしれませんが……」
「マジか!? すげえなITは!! やっぱり日本は進んでるな!!」
何この素直な反応。姉さんは感心したようで、しげしげと己の携帯を撫でている。
「でも、いいや。なんか、難しそうだしな! また今度でいい。それよりも、お前、さっさと連れってってくれよ」
姉さんはそう言って携帯をワイシャツのポケットに仕舞うと歩き出す。だから、そっちは逆方向だっての。
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