第6話 先輩とカブトムシ(5)
裏口の付近では、入口付近や公園の中央では見ることの出来なかった、木が立派に聳え立っていた。灰褐色でやや深めの裂け目がある樹皮、基部がくさび型であり、葉身が広倒卵形になっており、また葉の縁には二重の鋸歯がある。そう、公園に植えられている木としては割と定番である、ハルニレである。このハルニレからも、クヌギ、コナラなどから出る樹液が染み出てくる。
ハルニレの中でもかなり大きな部類であろう。周りの木々と比較してもかなり大きく、近くから見ると、視界の中にハルニレしか捉えれなくなるほどだ。枝が幅広く縦、横へと伸びており、その枝に綺麗に葉が整列し付随している。
「それじゃ、このハルニレの木を最後にしよっか」
先輩は木の幹から枝を、僕は木の根元から周囲の地面を探すことにした。
ゆらゆらゆら…………………
――――視界の端で何かが揺れている
それが先輩のスカートであると気づくには時間はそうかからなかった。
見ちゃ駄目だ、見ちゃ駄目だとは思うものの、ついついちらちらと見てしまう。悲しい男の性である。
いつかは忘れたが、ネット記事かなんかで「男と虫は動くモノが好き!」みたいな記事を読んだことがある。どうやら虫に備えられている狩猟本能が、男にも潜在的に眠っているらしい、ということを有名な認知科学者が男性心理学の一つとして正式に発表したのだとか。
別に見たくて見ているわけではないのである。先輩の揺れるスカートが、僕の眠れる狩猟本能をせき立てるせいである。断じて恣意的に見ているわけではない、えぇ、絶対に。
「ねぇ!ちょっとちょっと!」
心臓がキュッと締め付けられるような感覚に襲われた。いわゆる"ギクッ"ってやつである。恐らくスカートをチラチラ見てることがバレたのでは無いと思うが、多少なり自分の中に後ろめたい気持ちがあったのであろう。
「ここみて!この樹液が出てるところ!!」
興奮気味な先輩である。
やはりバレてはいなかった。ホッとして立ち上がり、樹液が出ている樹皮を見る。
そこにはなんと、美味そうに樹液を啜るカブトムシの雄と雌がいた。おそらくつがいなのであろう。
「やっと見つけましたね先輩。それじゃ捕まえましょうか」
僕が草食男子でいる理由 静 @shizu_kk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕が草食男子でいる理由の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます