少年と100円玉。

@sakunyao

プロローグ:これが全ての始まり

「……」

太陽が沈み、空がすっかり暗くなった頃、一人の少年が道端を歩いていた。

その理由は説明するまでもなく、少年がやるべき仕事をほったからしにしていた為に、親におつかいを命じられたのであった。

「くそッ」

その辺に転がっていた缶を蹴る事で八つ当たりをし、その缶が中途半端な所で止まってしまい、また少年に怒りの感情が起きる。

ズボンのポケットに入れた両手を決して出そうとはしないまま、少年はコンビニまでの道のりを歩いていく。

普段はスマホをいじりながら歩いているのだが、今回は外に出ている理由が理由なだけに、スマホをいじる事は許されず、親に没収されていた。

「ったく……んっで俺がこんな事を……」

ぶつくさ言いながらもきちんとコンビニに向かう少年。

その心は、本当は真面目なタイプではないのだろうか。

そうこうしているうちに少年は目的地に着き、親に頼まれた物、自分の食べるおやつ、飲み物を適当にかごに投げ込むとーー多少乱暴だが、そこは広い心で許してやってほしい……まぁ、無理なのは承知の上だがーーレジに向かい、ズボンの後ろポケットから財布を出すと手際よく会計を済ませ、少年はその場を後にした。

だがしかし、少年は大きな過ちをしでかしていた。

ーー支払いの際、100円玉を落としてしまったのである。

そしてーー不思議な事……本当に不思議すぎる出来事なのだがーーそれは誰にも気づかれないまま、入り口の自動ドアの隙間をくぐり抜け、歩道にある、お金が落ちやすい隙間の空いた場所ーーきっと多くの人々が見たことがあるであろう、地面に縦長の隙間が空いた場所ーーまさにそこに進み、その下に落ちてしまった。

その事に気付かない少年は、財布の中身も確認せずにズボンの後ろポケットに財布をしまうと、足早にその場を去ってしまった。

その100円玉事件のせいで彼は後々、色々と苦労する事になるのだが、それは後ほどお話しよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

少年と100円玉。 @sakunyao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ