第3章 侵略の影

20

事態は、急変する。

翌日の朝。


「………は?」


俺は、真っ先にフレイと賢人に報告しようと、朝一番に登校してきた。

そして、教室のドアを開けて、視界に映ったものは───


「……おい」


俺は、目を疑うような気持ちで血溜まりの中心にいる賢人を見下ろした。

なぜ─────⁉︎


「おい、賢人!賢人!どうした⁉︎」


この時点、すでにいくつかの疑問がある。

まずは、まあ賢人がこのように、血を流して倒れていること。

まだうっすらと血が出ていることから、まだ出血してから数分といったところか。


そして二つ目。

⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎

俺はいつ賢人やフレイが来てもいいように、誰よりも早く、と学校が開くのと同時くらいにここに着いたはずだ。

なのに、賢人は俺よりも先にここにいる。

なぜ────?


俺は、とりあえず救急車を呼び、引きちぎった制服の裾で止血をした後、これについて考えた。


賢人は、おそらく腹を鋭利な刃物か何かで刺されたのだろう。下腹部から、縦長の傷口が開いている。

血の量は、およそ人一人ぶんの面積ほど。そこまでは多くはないのだろうが、それでも2リットルくらいは失っているだろう。


さて、次にすることは。


「……間に合えよ……‼︎」


俺は、鍵をひったくり教室のドアを閉める。もうこれで、誰もここへは入ってこれなくなる。

俺はというと、教室上部の窓から入る。

少々骨は折れるが、この際そんなことは言っていられないしまさか高さ2メートルのところから入るとは、誰も思わまい。


ともかく、これをクラスメートに見られないようにしなければならない。救急車は呼んだからいずれバレるのだが、こんな残酷なものを見せてはいけない。それに、パニックになると収集がつきづらくなるし、何より俺が容疑者にされかねない。


「よ、っ」


俺は跳んで、上手く柱の出っ張ったところやクラスの掲示物などを利用し窓を飛び越える。

スタッ。

着地は少し痛かったが、そんなことを言ってられるほど事態は甘くない。


おそらく。

あのSDカードが原因だろう。

あの場面が撮られてしまったことで、その口封じ、もしくは脅迫などをしなければならないと踏んだのだろう。

J-ノグリーフが。


そこで3つ目の疑問だ。

なぜ、賢人なのだ?

俺やセレカではなく?

確かに撮ったのは賢人だ。でも、その後SDカードを持っていたのは俺たちだし、もしそれ以前に賢人が撮ったのだとわかっていたならその時点で賢人に危害を加えればいい話だ。

なぜ、このタイミングで?

まあ、それができない、もしくはこうすべきだった理由があるのかもしれないが。


「そろそろか」


俺が呟いた直後、案の定、救急車のサイレンの音が聞こえた。

俺の仕事はここまでだ。


さあ、友を傷つけた罪は重いぞ……‼︎

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