15

「……それで、お前はF-ノグリーフと手を組んだ、と」

「……はい」


今にも消え入りそうな俺の声が、やたらと部屋に響く。

ここは、国際協会本部、最高統監室だ。

部屋には色々な許可証が飾ってあるほか、各国のノグリーフ情勢など、さまざまな情報がある。なるほど確かにここは、最高統監サマとやらに相応しいところだ。

ちなみに言っておくと、俺は別に最高統監サマを敬う気はない。俺はもともと復讐目的で諜報員になったのだし、そもそも俺は国際協会ここの人間を敬おうと思わない。誰が上で誰が下なのかなど、どうでもいいのだから。


「そうか。……別に、国際協会うちとしては構わない。フランスの持つ情報網や資金が手に入るのだからな。……ただ」


最高統監は、俺を睨んで言った。


「諜報員としての心構えは、わかっているな?もし万が一に、お前の身元や秘密がばれるようなことがあったら……そのときは、お前とて容赦しないぞ」


ああ、首を撥ねとばすんだな。

俺は瞬時にそう悟った。


「……最高統監様、ひとつ質問をよろしいでしょうか」

「……なんだ?言え」

「もしそのようなことがあった場合、その場で敵対者を⚫︎⚫︎してしまえば問題はないのでしょうか」


本当は敬語などだるくて使いたくないのだが、身分上仕方がないので使う。

最高統監は少し考えて、答えた。


「……そうだな。これはお前の判断でいいのだが、もしお前の身元を敵対者に知られたのがその場だったならば、始末だけで構わない。だが、もし以前からわかっていたと推測できる場合……覚えとけよ」


俺の判断で構わない、と。

それなら、そこに至っては俺の自由だな。

あとは、俺がさらに何かを得るには───


「あとは、クラスメートの噂話でしかないのですが、最近妙な出来事が多発しているそうです」


そこで俺は、賢人が体験したあのことを言う。


「ふむ、人が現れる、と。そして証拠もある。……とすれば、捏造や自作自演でもない限り、真実とみていいだろう。……それで、何だ?」

「そこで、自分は一度、ゴーレムに襲われそうになりました」


少し、フレイのときのことを借りる。まあ、別にこれから言う建前でも理論的には成り立っているのだから少しくらい問題ないだろう。


「そこで恐縮ながらひとつ許可を頂きたいのですが」

「……なんだ?」


よし、聞く態勢はあるようだな。ならば、この話が通る確率は半々といったところか。まあ悪くない。


「国際協会の武器庫の自由使用権を、認めていただきたく」


俺の真の狙いは、これだ。

武器の使用の自由化。これがあれば俺自身だけでも相当な強化に繋がるし、もしこれから戦闘の仲間が増えていくなら、そいつにも国際協会の豊富な武器を使用させられる。一見メリットは少なさそうだが、意外と利点は多い。


「……ゴーレム、か。……そうだな、うちとしてはもちろんお前が抜けるのは困る。それを考えると今すぐにでも、それを認めてやりたいのだが……」


ここまでくれば、あとはどんな否定意見が来ようとも押し切るだけだな。

俺は感情を押し殺し、じっと次の言葉を待つ。


「完全自由化、ともいかないのだ」


なるほど、それだけか。だがまあ、どこか完全ではなのか、場合によっては大きいししっかり聞いておくか。


「……といいますと」

「お前も知っての通り、うちには莫大な武器がある。そしてその中には、匠が仕上げた世界に二つと無い一級品だってある。それを、たかだか一級諜報員に自由に使わせるのは気が引ける。もっと上の身分のやつはいるからな、そいつら全員に認めてたらきりがない」


つまり、名刀なんかはそう簡単には使えない、というわけか。

それなら構わない。もちろん質も欲しいが、それよりも大事なのは『種類』だ。銃に刀、剣、打撃武器、弓矢、ボウガン、エトセトラ……。武器の種類が多いほど、作戦の選択肢は広がるからだ。


「それでしたら構いません。それで、使用権については……」

「ああ、俺が今言ったことを守れば認める。だがもし勝手に一級品を持ち出そうものなら、すぐに取り消すぞ」

「わかりました。許可を下ろしていただき、ありがとうございました」


本当は他にももっと利用したいものはあるが、一気に頼みすぎるとよくない。今回はこのへんで十分か。


「それでは、失礼いたします」


俺はそう言い残し、最高統監室を去った。

次に向かうところは、もちろん武器庫だ。


俺は、そのあとありとあらゆる武器を漁った。

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