13
「本当にスマン」
俺は朝、開口一番、賢人に謝った。
それはそうだ、昨日は賢人との約束よりセレカの家の鍵探しを優先したのだから。
これで賢人が起こって絶縁しようものでも仕方がない。全ては俺の責任だ。
しかし賢人は、
「……あー、まぁ、見てたからな。セレカの奴に捕まったらもう逃げられないからな。構わないさ」
と笑って許してくれた。
これが、こんな俺を受け入れてくれる人徳か。
「悪いな、せっかくのお誘いだったのに……。……それで、賢人は昨日?」
「ああ、俺か。俺はとりあえず、一人で行ってみたんだが……」
そう言って賢人はポケットから携帯を取り出す。どうやら、写真を撮っていたようだ。
「奇妙なものを見つけたんだ」
「……奇妙なもの……?」
俺は違和感を覚えた。
とはいっても、賢人の話を疑っているわけではない。フレイに続き、こいつも。立て続けにトラブルは起こるものなのか?
そういえば、フレイも俺との共闘を受諾したが、今思えば変だった。まだそこまで交友関係も深くないのに俺をあそこへ引き込んだ。
それに、諜報員というのは『隠密』が重要な仕事だ。もし俺がフレイの正体をバラさないという信頼がなければ俺と共闘することもできないし、そもそもあんなところへ行こうなど、いささか急だったような気がする。
俺がもしフレイの立場だったら、もう少し俺との共闘を持ちかけるのは後にするだろう。それはそれだ、これは信頼関係が大事なのだから。
それをわかっていながら俺にあのタイミングで共闘を持ちかけたということは、そうせざるを得ない重要な理由があったのだろう。
ということは。
フレイの察知した『違和感』、そして賢人が目視した『違和感』。これらは繋がっていて、いずれ俺たちの身に降りかかる、大きな災厄の前兆かもしれない。
そうなれば、今日はじっとなんかしていられないな───
とりあえず、俺は賢人を追及する。
「一体それは、どんなものなんだ?」
賢人は無言で、俺に携帯を見せる。
なるほどそこには、確かに違和感といえる証拠となる一本の動画があった。
「……なんだこれ……」
そこには、目を疑うようなものが映っていた。
場所はフレイとの時と同じ、倉庫街。ただし場所は特定できない。
そして、そこに映っていた光景。
まず、倉庫の上に、縦長のだ円形の光が生まれる。
そして、その中から出てきたのは……
「人……?」
そうだ、あろうことか、突然光から人が生まれてきたのだ。それも何人も。
しかも生まれてきたとは言っても赤ん坊などではない。男、女、学生、青年、老婆……
ありとあらゆる人が生まれてきた。
「……どういうことだ……⁉︎」
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