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……それにしても、次から次へと……。

俺は、何回トラブルに会えばいいのだろうか。

ふと、教室に入ってきたフレイを見て、そう思った。


「いやー、まさかあそこでお前がシュート決めるとはなー」

「まー……シャルがあそこでいいパス出してくれたからな」


どうやら話を聞く限りでは、フレイはクラスメートたちと昼休みにサッカーをしていたらしい。……盗み聞きの限りだが。


「ぷは〜っ!いやー、運動後のスポドリは美味いなー」

見るとフレイは、水筒に入ったスポーツドリンクをがぶ飲みしている。……なんとも。昨日あんなことがあったのに、よくもここまで普通のクラスメートを装えるな……。

っと!

俺は、フレイと目が合う。どうやら俺は、フレイを凝視しすぎていたらしい。

俺はどう返せばいいか迷った。もうフレイが復讐を望む、黒い人間だと知ってしまった今、今みで通り普通に会釈などはできない。かといってここは教室の中だ、何か特別なことができるわけでもない。

するとフレイの方から、左目を一瞬瞑ってきた。つまり、ウインクだ。……それは、もっと、な……。

とまあ、俺がそんなことをしていると。


「あーっ‼︎」


教室の中心で、叫ぶ声が聞こえた。

見ると、学級委員である、セレカ・マーレンが、何かを思いだしたように慌てふためいていた。


「やっばーい、家の鍵なくしたーっ‼︎」


すると二つのことが同時に起きた。

一つは、セレカがクラスを見渡したこと。

もう一つは、クラスメート全員がセレカから目を逸らしたこと。


「……?」


俺は、クラスに何が起きたのかわからなかった。だが、かといってクラスメートに合わせる気もしないので、俺は先ほど読んでいた本に視線を戻した。

だが、セレカが教室を見渡していた理由はすぐにわかった。……災厄という形で。


「んー……。一人じゃ見つけられないかなー。誰か手伝ってくれる人はいないかなー。暇人いないかなー」


頰に手を添えながらそう言うセレカは、どこか白々しい。……まさか!

俺の予想を嘲るように、クラスメートたちが言う。


「い、いやー、俺今日塾なんだよ、なー」

「あっ、やーっべ、俺も今日大事な用事があるんだった!」

「あっ、えっ、私は……じゃあ、美容室が……」


じゃあとか言ってる時点で、もう嘘確定だろ。

……待てよ?暇人と言ったな?

俺は、暇人から連想されるモノを想像する。

……読書している人。

あっ


「あーっ、こんなとこにー!……ねぇねぇ君、ちょっと私の家の鍵探すの手伝ってくれなーい?」


セレカの目は、バッチリ俺を捉えていた。……くそっ、この女狐が。


「……?なんで、自分の責任なのに人に押し付ける?自分で探せばよかろう」


俺は、おそらく無駄だろうなと思いながら正論を口にしてみる。

しかし案の定、それはことごとく打ち破られる。


「えーっ?私、いーっつもクラスのために働いてるのになー?……ねっ、一生のお願いっ♪」


……そんなキラキラした目で俺を見るな。

……ああー、もう。


「……はいはい、わかったよ。でも、今回だけだからな?」


というか、一生のお願いって……。お前の一生、軽すぎないか?

だがそうなると、賢人との探索は無理だろう。まあ早く見つかればその限りではないが、なくしたということはすぐに見つかるものでもないだろう。

……まあ仕方ないか、賢人との約束は明日にしよう。

こちらはなんとしても今日やらねばならないのだから。


「あっ、ありがとーっ。じゃ、放課後、一緒に探そーねっ」


そう言って、セレカは教室から駆け出していく。……全く、なんなんだよこの茶番は……。

ふと気づくと、クラスメート全員が、俺を憐れむような目で見ていた。

……悲しくなるから、やめろ!

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