6

休み時間にて。


「おい、どうしたんだ、迅火?」

「?……ああ、さっきのか」

「そうだよ。めっちゃうなされてたぞ?まったく、どんな夢見てたんだよ」

「う……スマン」


フレイだ。

俺とフレイの席は隣であり、一番早く俺の異変に気付いたのだろう。

だが、さっきのは──

生憎、夢じゃなくて現実なんだよな……


「まあ、もういつもの迅火に戻ったからいいけどさ」

「ははははは……」


俺は、渇いた笑いをこぼす。

それくらいしか、俺にはできないのだ。


「な、迅火」


フレイが、はっとして俺に言う。


「今日、放課後空いてるか?」

「え?……ああまあ、空いてるが……。まさか、今日も遊ぶのか?」


俺は別に構わない。だが、二日連続となると、さすがに出費を抑えたいところだ。

要は、金の話だ。俺たちは高校生らしいから、まだそれなりの金額はもらえない。それに、昨日なかなか高い服を買ったから、今日は安く抑えておきたい。

無料ならなお良し。


──らしい、というのは。

15年前の第三次世界大戦で、戸籍も焼かれてしまった。また、それだけでなく教育機関も取り壊され、学校に入るはずだった子供は徴兵などに充てられた。

つまり、今となってはもう教育制度がめちゃめちゃになっているのだ。

そして俺は今、高校生らしい、ということだ。


「いや、さすがに、な。……ちょっと、気になるところがあってさ」

「気になるところ?」


俺は、いつになく真剣なフレイに、思わず息を呑んだ。

フレイは、声を潜め俺に話す。


「南地区の廃墟地域なんだけど……あやしい傷痕があったんだよな」


廃墟地域?なんでまた、そんなところに。

しかも南地区といえば、ここやフレイの家から随分と遠く離れた場所じゃないか。なんでそれに気づけたんだ。

なにより───なぜ、俺とそこへ行く必要がある?


「……なるほどな。だが、まず理由を聞かせて欲しい。俺が行く必要性は……」

「迅火なら、未来を『予見』できるだろ。だから、もし何かあったときに対処できるから、さ。……もちろん、迅火が能力を使わないことを祈るが」


……やはり、何かがおかしい。

これでは、まるで予め何か波乱が起こることがわかっているかのような口ぶりだ。

そして、俺は他人へ、まだ『予見』の能力があるということ、正確には能力が『予見』であることを口外していない。

フレイ……こいつは、一度問い詰める必要がありそうだ。


「……そうだな。じゃあ、授業が終わったら校門の裏で待ってるよ」

「ああ、ありがとう、迅火。……んじゃ、学食にでも行くか」


……フレイの行動が不可解すぎる。

何から何まで、意味不明なことばかりだ。

フレイ・ドルセラー、こいつは一体何を抱えてる?

なにゆえ、俺に関わってくる?

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