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俺たちは、学校近くの商店街へ来ていた。
商店街とはいってもまるでアウトレットのようで、少し見渡せばブティックやコーヒー店、さらにはゲームセンターまでもがあった。
「なあなあ、どこ行く?」
フレイが皆に問う。
どうやら、さて商店街へ来たはいいが行くアテが見つからないようだ。
「んー、なら、わたしあそこ行きたい!」
雹華が、向かい側にある洋服屋を指差す。
なるほど、いかにも女子って感じだな。
「あの洋服屋か?いいぜ」
賢人は軽く了承する。
まあ、洋服屋とはいってもジャージやパーカー、水着、帽子や靴など──あらゆるものが売られている。
あれなら、俺たち男子でも楽しめそうだろう。
「そうだな、ちょっとショッピングと洒落込むか」
というわけで、俺たちは洋服屋に入ることになった。
「いやー、それにしてもいっぱいあるなー」
さっきも言ったが、この店にはたくさんの服がある。
俺はそこまではコーディネートには興味はないが、それでもつい服選びで悩んでしまいそうだ。
「ねーえ、迅火くーん、これどーお?」
試着室のカーテンをがばっと開け、雹華は俺に意見を聞く。
雹華が着ていたものは……っと、なんだよっ、アロハシャツじゃねーか。
「おい、雹華、どうした?ほらそこに鏡あるぞ」
俺は、雹華の真後ろを指差して言う。
「てへへ」
雹華は悪びれた様子もなく、今度は軽くカーテンを閉め着替え始めた。
……何だったんだ、今の……。
すると、今度は横から。
「な、迅火、賢人様のスタイルどうよ?あっ、惚れるなよ」
当たり前だ。
……というか。
「なんでお前までアロハシャツ着てんだよっ!」
揃いも揃ってこのバカたちは……。
俺が呆れていると、着替え終わった雹華が試着室から出てきた。
「はーい、雹華ちゃんのコーディネート講座第2章ー!」
懲りないのかよ。
俺は苦笑いし、自分の服を選び始めた。
(んー、この黒のパーカーか?いや、でもこっちのTシャツと組み合わせて着るなら……)
意外に迷ってしまった。
適当に、今持っているようなものと同じような服でも買おうかな、と思っていたが、なんというかカッコイイ服が多すぎて、つい目移りしてしまった。
俺は、候補二つの服をじっくり見比べ、考える。
ズキン。
また、俺の胸を痛みが襲った。
そうだ、俺は本当はここにいちゃいけない。
呑気に服なんて選んでないで、この友情も断ち切って、さっさとここから立ち去るべきなんだ。
それができないのは、俺の……。
「迅火はもう決まったかー?」
フレイの、俺を呼ぶ声。
……すまない。ただ、いずれ明かすから、今、このときだけ……。
「おう、今買う」
俺は直感、というか適当に右手の黒パーカーを選んでレジへ持っていった。
「じゃーなー、みんな!」
あっという間に、夕日が差す時間になった。
フレイがみんなに、手を振る。
フレイだけ家が別方向なのだ。
「うん、まったねー」
「また明日なー」
「んじゃ!」
俺たちはフレイとあいさつを交わし、別れる。
あとは三人とも、家にすぐ着く。
全員家が近いためだ。
「にしても、雹華がアロハシャツ着てたときは狂ってるのかと思ったよ」
「えへへ、あれはちょっと出来心ってやつで」
「まあそうだろうな。てか、そうじゃなかったら俺
、友達やめようかと」
賢人と雹華が楽しそうに話をする。
俺は、一抹の罪悪感を覚えながらも話に加わる。
「んでそれに続いて、賢人までアロハシャツ着てるからな」
「んげっ」
「あっ、仲間だねー」
……なんとも。
「あっ、迅火くんち、ここなんだっけ」
雹華が問う。
見れば、俺の家の前まで来ていた。
「ああ、そうだ。……じゃ、な!また明日」
「じゃーねー、また明日もデートしようねー」
「ぇおい俺とは」
最後まで何をやっているんだ。
俺は心で微笑みながら、苦笑いを浮かべた。
そして、この家の中には……。
俺は、ある感情を抱きつつ家のインターホンを押した。
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