3

俺たちは、学校近くの商店街へ来ていた。

商店街とはいってもまるでアウトレットのようで、少し見渡せばブティックやコーヒー店、さらにはゲームセンターまでもがあった。


「なあなあ、どこ行く?」


フレイが皆に問う。

どうやら、さて商店街へ来たはいいが行くアテが見つからないようだ。


「んー、なら、わたしあそこ行きたい!」


雹華が、向かい側にある洋服屋を指差す。

なるほど、いかにも女子って感じだな。


「あの洋服屋か?いいぜ」


賢人は軽く了承する。

まあ、洋服屋とはいってもジャージやパーカー、水着、帽子や靴など──あらゆるものが売られている。

あれなら、俺たち男子でも楽しめそうだろう。


「そうだな、ちょっとショッピングと洒落込むか」


というわけで、俺たちは洋服屋に入ることになった。




「いやー、それにしてもいっぱいあるなー」


さっきも言ったが、この店にはたくさんの服がある。

俺はそこまではコーディネートには興味はないが、それでもつい服選びで悩んでしまいそうだ。


「ねーえ、迅火くーん、これどーお?」


試着室のカーテンをがばっと開け、雹華は俺に意見を聞く。

雹華が着ていたものは……っと、なんだよっ、アロハシャツじゃねーか。


「おい、雹華、どうした?ほらそこに鏡あるぞ」


俺は、雹華の真後ろを指差して言う。


「てへへ」


雹華は悪びれた様子もなく、今度は軽くカーテンを閉め着替え始めた。

……何だったんだ、今の……。

すると、今度は横から。


「な、迅火、賢人様のスタイルどうよ?あっ、惚れるなよ」

当たり前だ。

……というか。


「なんでお前までアロハシャツ着てんだよっ!」


揃いも揃ってこのバカたちは……。

俺が呆れていると、着替え終わった雹華が試着室から出てきた。


「はーい、雹華ちゃんのコーディネート講座第2章ー!」


懲りないのかよ。

俺は苦笑いし、自分の服を選び始めた。


(んー、この黒のパーカーか?いや、でもこっちのTシャツと組み合わせて着るなら……)

意外に迷ってしまった。

適当に、今持っているようなものと同じような服でも買おうかな、と思っていたが、なんというかカッコイイ服が多すぎて、つい目移りしてしまった。

俺は、候補二つの服をじっくり見比べ、考える。


ズキン。


また、俺の胸を痛みが襲った。

そうだ、俺は本当はここにいちゃいけない。

呑気に服なんて選んでないで、この友情も断ち切って、さっさとここから立ち去るべきなんだ。

それができないのは、俺の……。


「迅火はもう決まったかー?」


フレイの、俺を呼ぶ声。

……すまない。ただ、いずれ明かすから、今、このときだけ……。


「おう、今買う」


俺は直感、というか適当に右手の黒パーカーを選んでレジへ持っていった。





「じゃーなー、みんな!」


あっという間に、夕日が差す時間になった。

フレイがみんなに、手を振る。

フレイだけ家が別方向なのだ。


「うん、まったねー」

「また明日なー」

「んじゃ!」


俺たちはフレイとあいさつを交わし、別れる。

あとは三人とも、家にすぐ着く。

全員家が近いためだ。


「にしても、雹華がアロハシャツ着てたときは狂ってるのかと思ったよ」

「えへへ、あれはちょっと出来心ってやつで」

「まあそうだろうな。てか、そうじゃなかったら俺

、友達やめようかと」


賢人と雹華が楽しそうに話をする。

俺は、一抹の罪悪感を覚えながらも話に加わる。


「んでそれに続いて、賢人までアロハシャツ着てるからな」

「んげっ」

「あっ、仲間だねー」


……なんとも。


「あっ、迅火くんち、ここなんだっけ」


雹華が問う。

見れば、俺の家の前まで来ていた。


「ああ、そうだ。……じゃ、な!また明日」

「じゃーねー、また明日もデートしようねー」

「ぇおい俺とは」


最後まで何をやっているんだ。

俺は心で微笑みながら、苦笑いを浮かべた。

そして、この家の中には……。

俺は、ある感情を抱きつつ家のインターホンを押した。

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