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キーン、コーン、カーン、コーン。
チャイムが鳴る。
それと同時に、たくさんのクラスメートが駆け出してゆく。
放課後。
俺は、教室で読書をしていた。
「ふう、やっと静かになったな」
周りが静かになったのを確認し、しおりがはさんであるページを開こうとする。
その時だった。
「よーっ、迅火ー」
後ろから、友人、フレイ・ドルセラーが俺の肩を叩いてくる。
そのはずみで、しおりが外れ本が閉じられてしまう。
「おいっ、ちょっ、フレイ」
ちなみにこいつについて言っておくと、まず名前の通り外国人だ。ここは日本の学校だが、おそらくドルセラー家は15年前の第三次世界大戦で
フレイは超がつくほどフレンドリーで、新学期に教室の片隅で読書をしていた俺に、遠慮なく話しかけてきたのだ。
まあそれ自体は俺としては悪いことではないと思っている。こうして友人になれたからな。
あとは、そのツテだろうか、さらに数人の友人ができた。
たとえばそのうちの一人、
「おいおい迅火、また読書かよ。たまには遊びに行こーぜー」
たとえばそのうちの一人、
「ね、ね、迅火くん。わたしとデートするのはどう?」
ちなみにデートとかぬかしてるが、こいつは俺に好意があるわけでは全くない。ただの冗談だ。
「それはまずない」
すると賢人が俺に同調する。
「そだそだ、デートするなら俺と」
「あっごめんそれはないわ」
「えーっそんなひどいー!なんで迅火ならオッケーだったのに」
「だって賢人変態じゃん」
「待って俺は呼び捨て⁉︎てかそもそも変態じゃないし、というより変態といったら迅火のほうが」
……おい。
なぜ俺にレッテルを貼り付けた?
「え?じゃあこの前女子更衣室覗いて先生に説教されてたの、迅火くんだったの?」
「………………………いや、それは俺だ。で、でも、迅火なんか覗き見の映像見してくれなんて」
ちょっと待とうか、賢人くん。なぜ君はそうも堂々と嘘をつけるのかなぁ?
「……あっそれ俺です……」
フレイがぼそりと正直に名乗り出る。
……これはいいことなのか、悪いことなのか?
「まあお前ら一旦落ち着けよ。別にそんなことで……。ほら、な、遊び行くんだろ?」
このまま放っておいたら延々に続きそうなので、俺は先を促した。
「……ま、そうだな。とりあえず、学校出るか」
「だね、それから商店街でも歩いて決めようか」
フレイと雹華が言って、教室を後にする。
賢人もそれに続く。
「おーい、迅火、置いてくぞー」
「あっ悪い、今行く」
俺は本を片付け、三人に続こうとする。
ズキン……。
ふいに、胸の奥が痛む。
もちろん、罪悪感だ。
俺は、三人を騙し欺いて、ここにいる。
俺が第三次世界大戦の元凶だと知ったら、みんなは許してくれるのだろうか……
俺は心の中で謝りながら、三人の後を追った。
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