2

キーン、コーン、カーン、コーン。

チャイムが鳴る。

それと同時に、たくさんのクラスメートが駆け出してゆく。


放課後。

俺は、教室で読書をしていた。


「ふう、やっと静かになったな」


周りが静かになったのを確認し、しおりがはさんであるページを開こうとする。

その時だった。


「よーっ、迅火ー」


後ろから、友人、フレイ・ドルセラーが俺の肩を叩いてくる。

そのはずみで、しおりが外れ本が閉じられてしまう。


「おいっ、ちょっ、フレイ」


ちなみにこいつについて言っておくと、まず名前の通り外国人だ。ここは日本の学校だが、おそらくドルセラー家は15年前の第三次世界大戦で日本ここに逃げ込んできたのだろう。

フレイは超がつくほどフレンドリーで、新学期に教室の片隅で読書をしていた俺に、遠慮なく話しかけてきたのだ。

まあそれ自体は俺としては悪いことではないと思っている。こうして友人になれたからな。

あとは、そのツテだろうか、さらに数人の友人ができた。

たとえばそのうちの一人、白岡しらおか賢人けんと


「おいおい迅火、また読書かよ。たまには遊びに行こーぜー」


たとえばそのうちの一人、有明ありあけ雹華ひょうか


「ね、ね、迅火くん。わたしとデートするのはどう?」


ちなみにデートとかぬかしてるが、こいつは俺に好意があるわけでは全くない。ただの冗談だ。


「それはまずない」


すると賢人が俺に同調する。


「そだそだ、デートするなら俺と」

「あっごめんそれはないわ」

「えーっそんなひどいー!なんで迅火ならオッケーだったのに」

「だって賢人変態じゃん」

「待って俺は呼び捨て⁉︎てかそもそも変態じゃないし、というより変態といったら迅火のほうが」


……おい。

なぜ俺にレッテルを貼り付けた?


「え?じゃあこの前女子更衣室覗いて先生に説教されてたの、迅火くんだったの?」

「………………………いや、それは俺だ。で、でも、迅火なんか覗き見の映像見してくれなんて」


ちょっと待とうか、賢人くん。なぜ君はそうも堂々と嘘をつけるのかなぁ?


「……あっそれ俺です……」


フレイがぼそりと正直に名乗り出る。

……これはいいことなのか、悪いことなのか?


「まあお前ら一旦落ち着けよ。別にそんなことで……。ほら、な、遊び行くんだろ?」


このまま放っておいたら延々に続きそうなので、俺は先を促した。


「……ま、そうだな。とりあえず、学校出るか」

「だね、それから商店街でも歩いて決めようか」


フレイと雹華が言って、教室を後にする。

賢人もそれに続く。


「おーい、迅火、置いてくぞー」

「あっ悪い、今行く」


俺は本を片付け、三人に続こうとする。




ズキン……。




ふいに、胸の奥が痛む。

もちろん、罪悪感だ。


俺は、三人を騙し欺いて、ここにいる。

俺が第三次世界大戦の元凶だと知ったら、みんなは許してくれるのだろうか……


俺は心の中で謝りながら、三人の後を追った。

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