特大号:懐かしのササミストリート


 前回の内容を読み返していると、ふと思い出した事があるんです。私セサミストリートの事、ササミストリートって覚え違えてた事があったなと。


 ほぼテレビ観ないんですよ。小さい頃は活発な子供で、虫取りとかザリガニ釣りとか、近所の皆とドッジボールやキックベースボールをしたり、兎に角外で遊ぶ子でした。夏は真っ黒に日焼けして。


 何でそうなってたのか分からないんですけれど学校の帰りに、狭いドブにピチィッて挟まってたウシガエルを見つけて、可哀相だから助けてあげようよと、一緒に帰っていた友人達に提案した事があったんです。


 彼女らはいいよと言ってくれて、一旦ランドセルを置きに家まで走って帰った後、この通り活発な子ですから生き物に慣れてまして、私が素手でウシガエルを引き上げました。

 でっかいだけで毒を持ってる訳でも、爪や牙でも持ってる訳でもありませんからね。ザリガニとか蛇触ってたもので、あっちの方がよっぽど怖いし痛いとも知っていましたから、カエルなんてもう全く迷い無く。


 今やれって言われても、多分出来ると思います。ちっさいクモとかなら、素手で叩き潰せますし。窓に張られてる巣も、困るなあと思いながら素手で片付けられます。でもその時、直前までいいよって言ってくれてた友人達が、やっぱ気持ち悪いから無理って私を置いて逃げ出して、明らかに大人サイズのウシガエルを両手で抱えながら一人家路につくっていう、寂しい経験を思い出しましたね。十歳の事です。近所にある池に放って、帰してあげたんですけどね。


 そのドブに引き返した時から、おろおろしてるだけで全く手伝ってくれる気配が無い友人達に、違和感を覚えてはいたんです。何で手伝ってくれないのって。もう置いて行かれた時は私十歳ながら、何で嘘つくんだろう。何で嫌なら嫌って最初から言ってくれなかったんだろう。友達って何だろうって、強く思いました。別に断られても、一人で行ってましたしね。可哀相ですから。以来彼女らとはドブならぬ溝が生まれ、何かちょっと遠くなりましたね。


 それで、そのまま物思いに耽っていると、今度は高校生の頃を思い出したんです。当時の私は軽音部で、入部した頃から技術力のある生意気な後輩として、上級生に目を付けられていました。やってた楽器は、エレキベースなんですけどね。腕の方は、バンドマンであった父の遺伝でしょうか。

 それで、思い出したのは二年生の頃。休み時間に、バンドでコピーする曲のスコアを、退屈凌ぎに自分の席で、パラパラと眺めていた時でした。いつも練習の時に詰まってしまうフレーズがあって、そこを確認したかったんですね。


「なあなあもっ……ストレス☆毛根撃滅丸さん! これ見て見て!」

「今キモいっておうとした?」

「いや、あの……ってへん」

「いやったやろ」

ってへん。ちょ、もええから、これ見て?」


 クラスでも、いや学年で見ても結構な美人だった友人が私の机に差し出していたのは、セサミストリートのキャラクターがプリントされた、クリアファイルでした。

 何故だか私のクラスの女子の間で、当時大流行りしてたんです。


「いやーひっさしぶりに文房具屋さん入って探し回ったわー! 何か今全然知らんアニメとかキャラクターばっかりやし、オタクっぽいエグめの絵ぇとかもあったから、近付くだけで謎の勇気振り絞ったわーめちゃ可愛ない?」

「ふうん」


 私はどうしてか、親しい相手に限って素っ気無い態度を取ってしまう癖が昔からありまして、何でもっと他にあるだろう返事の仕方が出来ないのだろうと思いつつ、でもちゃんと聞いてますよとアピールするように、スコアを閉じると机の端に寄せました。

 後に三年生になる私はその性分を、「だってストレス☆毛根撃滅丸さんツンデレやんフッフゥ!」と友人にディスられ、報復にその友人へ、限り無く殺意に近い怒りを込めたグーパンを放つ事になるのですが、当時の私は知る由もありません。


「いや、そもそも可愛いとかそういうん、よう分からんし……」

「アーもうまたそんなんうて! ストレス☆毛根撃滅丸さんも買おや! 皆持ってんで!」


 そう言われながら顔の前に突き出されたクリアファイルを、身を引いて距離を取りながら、初めてちゃんと見ました。

 まず飛び込んでくるのは、四方八方にクッキーを食い散らかしている青い毛玉怪人と、ビワのような巨大なオレンジの鼻が特徴の、小振りな赤い毛玉怪人です。

 微妙な顔をして、黄色い羽毛に覆われた存在感の無い珍生物と、ゴミ箱から顔を出している、不潔そうな緑もいましたでしょうか。小さい頃から外で遊び回り、余りテレビを観なかった私には、どれもいまいち親しみが湧きません。


「あ……えっと、ササミストリート?」

「え? ササ……え?」

「いやササミ……。この黄色いんほら、鳥ちゃうん?」

「セサミストリートやで木元さん」


 私は恥ずかしさで死にたくなりました。


 猟奇的な発言に驚いたのでしょう。友人は笑っていいのか、引いていいのか分からない顔で、じっと私を見つめていました。


 黙っていれば可愛らしいのに何故口を開くと、「エグめ」とか「謎の勇気を振り絞る」とか、どうにも残念な雰囲気を醸す事ばかり言うのだろうか彼女とはとも思いましたが、そんな事を指摘出来る心の余裕は、当時の私にはありませんでした。


「あー……うん。そうなんや。いや、あんまテレビ観いひんから、知らんくて……」

「ああ。そう言えばストレス☆毛根撃滅丸さん、ちっちゃい頃の話しても、基本誰とも噛み合えへんもんな。アマゾネスやったから」

「そこの黒板からチョーク持って来てお前の鼻に刺すけど、その話まだする?」

「やめる。え、てかほんまに知らんの!? 流石にこのエ」

「いやこの赤いのは分かるよ。青いのはこれ、クッキーモンスターやろ? ……久し振りに見たけどエグいなこいつ……。ほんまに食う気あるんかぐらいの散らかしっぷりやけど……。口に入れたクッキーを吐き散らしてるようにしか見えへん」

「ほなモノマネやったるわ! 思い出すやろ!」

「いやええて」


 私は拒絶しました。


 覚えていると言ったのに何故再現の必要があるのか、どちらのモノマネをやろうとしているのか、そしてそもそも私の話を聞いていなかったのかという突っ込みを放棄してでも、阻止したい事だったのです。

 他県の場合では分かりませんが、少なくとも大阪の場合でのモノマネは、クオリティを放棄した一発芸を披露する場になる事がかなりの割合であったのです。というかこの流れで真面目に精巧なモノマネを披露する奴は、大阪にはまずいません。流れに乗じ笑いを取ろうとするのが、ほぼ大阪の人間の行動パターンと考えてくれていいでしょう。


「いや、いける。私にはいける。ンンッ。アーアーアー」

「いや分かった。お前あれやろ。ほんまはファイルとかどうでもよかったんやろ。遊んで欲しかっただけやろどっか行け」

「だって今日●●ピーは休みやし、●●ピーちゃんは彼氏のクラス行ってるから」

「完全に暇人ひまじんやんけお前も失せろ」

「ストレス☆毛根――なッがいなアホちゃう!? ●●●ピッピピピーやて暇やんペラペラペラペラ何なんそれ何か……本見てェ!」

「楽譜や! 練習前の予習やっちゅねん大体ライブ前で忙しぃし」

「(全く似せる気の無い甲高い声で)エロモだよぉ!!」

「エルモやろ!!!」





 はい。以上、ほぼ実話で出来たギャグでした。


 落ちの流れだけは別の時期に起きたので、実話を繋げて、いい感じに仕上げてみたって感じですかね。

 気掛かりはそのセサミストリートのグッズが、下敷きだったかもしれない事か……。プリントされてるキャラ数が違うような気がする……。ぐらいで、フィクションですが、九割ぐらいを事実を元に作られています。登場人物は実際の人間及び団体に関係ありまくりですし、文章の雰囲気で分かってるでしょうからもう言っちゃいますけれど、私はレディです。もう色々と捨て身でしょ?


 昔から同性に、モテてモテて仕方がありません。私が男だったら今の彼氏と即刻別れてあんたと付き合ってたのにと複数の友人から言われた事もあれば、あんまり甘い物好きじゃないって言ってるのにバレンタインには周囲のイケメンを置き去りする程の量の、ギリギリ友チョコだけれどあと一歩道を踏み外せば本命みたいな圧を感じるチョコを頂いた事もあります。私以外にあげる人特にいないのに、わざわざ手作りとかね。素敵な男子と恋をしろよ。わざわざ私へのチョコを用意する為に、買い物に行かないで。

 あの……これだけは冗談抜きに書きますけれど……。気持ちは嬉しいですが、ごめんなさい。来世男だったら、真剣に考えます。

 

 ほらァ、クラスに一人ぐらいいませんでした? 女子人気が高い女子。職場とかバイト先でも、何かやたら女の子に人気ある女の人。それなんですよ。サバサバしてる方に、多いと思うんですけれど。

 それでこの高校時代なんて、軽音部じゃないですか。軽音部とは文化部、運動部から見ても、花形の中の花形です。私は、バンドやりたいんだけれどメンバーが集まらなくて困ってる友人の為に入部したんですけれど……。ね、もうほら。黄金のモテ期です。まあ大学でもそんな大差無かったと言えば無かったのですが……。まあまあまあ。

 何なんですかね? あの中高生によく見る、友情と愛情の境界が曖昧な感じ。何で私まだ、同性にモテてるんですかね? まあ皆してからかってるだけでしょう。昔からよくドッキリとか食らってましたし。




 ――さっ! パンチも量もたっぷり書きましたので、申し訳ございませんが暫くこの日記、更新しません。そろそろ本気で、『鬼討おにうち』の完結に挑みたいので。



 更新はしませんけれど息抜きに、フォローさせて頂いている作品を読みには、ぷらっと現れるかと思います。ハイ。あと思いの外疲れたので、今回お勧め作品のご紹介はナシで。今紹介文を書くと、本当に目が悪くなるようなブツしか生み出せない気がします。


 『鬼討』は勿論ですけれど、この日記も、読んでくれて本当にありがとうございます。もう一作の小説の方も。PVとか、応援とか、フォローとかレビューとか増える度、本当に嬉しいですし、励みになっています。



 頑張って書きますんで、気が向いたらいいのでどうか、我が『鬼討』の応援を、宜しくお願い致します。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884394457



 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。



 では今回は、この辺で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る