第24話


「今までありがとう。」


「こちらこそ。」


離れはしたが、真彩の両腕を掴む手はまだ離れない。


「ちゃんと待つから。」


「はい。」



「「…さようなら。」」


先に背を向けたのは真彩。

急ぐわけでもなく普通の速度で…。


伸也にはとても早く感じた。




次の日…。

真彩は働いていたスーパーに退職届を出し、枝理ともしばらく会わない約束をした。


その日は何時まで話したであろう。

いつも昼過ぎに終わる仕事が気がつけば真っ暗。

名残惜しそうに固い握手を交わし、互いに抱き合い別れた。






4年後…


真彩は夢だった建築の資格を取るため学校に通いながら建築の世界で有名な人に弟子入りしていた。


「佐原。休憩行くぞ!!」


「はい!!」


忙しそうに走り回る真彩。その顔は何処かとても充実したモノだった。

女性はそこに真彩だけ。

男と同じ木材を運び、土や泥もお構いなく毎日ドロドロで帰っていく姿に皆一目置いていた。


「佐原。そろそろ俺の所卒業しても良い頃だぞ?」


「そうだ。一級建築士を一発合格した上、卒業制作で賞取るヤツなんて早々いないからな。」


先輩や師匠がそう言うが。


「いえ。まだまだです。追い付きたい人が居るから。」



真彩は今日も自分の心と色んなモノと戦いながら泥だらけになる。


それは、いつかの再会を信じてるだけのこと。

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大好きだから近付かないで なぎさ @kiryu-nagi

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