第23話


「分かった…。なら最後の頼み。俺の話も聞いて。」


真彩は声が出なくて、ただ頷いた。


「俺は佐原に救われたのは本当。最初はそれだけだった。会いに行ってもまともに話してくれないしムカついてたこともある。けど、色んな訳を知って山田と3人で遊びに行って色んな話して。いつの間にか好きになってた。今のままの佐原が好きだよ。けど佐原がそれが無理って言うなら…待ってていいかな?」


「でも真山さんの人生が無駄になる。」


「無駄になるかならないかを決めるのは俺だよ。そこは譲れない。」


「…どれだけお願いしても無理ですか?」


「逆に聞くけど、今まで生きてきた中でこの人ならって想えた人を簡単に諦められると思うか?」


「…100年先かもしれませんよ。」


「2人で長寿賞取れば良いじゃん。」


「さすがに死んでますよ。」


「なら生まれ変わってまた探すよ。」


「ウツもまだ治ってませんよ。」


「知ってる。」


「適応障害も癌だってあるんです。」


「分かってるよ。」


「…私より素敵な人が現れたら?」


「ここまで好きになったの初めてだからもうないな。」


「分からないですよ。」


「ならその時は連絡するよ。美女がいたって。ヤキモチくらい妬くだろ?」


「だからっ。」


「真彩。無駄だよ。俺が諦めることを諦めろ。」


「…信じますからね。」


「良いよ。」


「…ありがとう。」


「こちらこそ。」



2人はそのまま地元へ帰った。

帰りも伸也の紳士的な態度は変わらない。


そして…。


「メールくらいは許して。」


「はい。なるべく返します。」


「何かあったら即連絡すること。」


「はい。」


「何か無くても喋りたくなったら電話でもしてよ。」


「はい。」


「真彩。」


「はい?」


伸也は真彩を引っ張り力一杯抱きしめた。

真彩はそれに答えることなく、その手が離れるまでは待っていた。




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