第22話
歩いて行くと、とても綺麗な広場に着いた。
よくテレビでも特集されている所だった。
真彩は目をキラキラさせて風景を携帯のカメラに収めている。
「あぶなっ。」
再び転けそうになった真彩を引っ張り抱きしめる形となった…。
「危なっかしいな。」
「すいません。」
「佐原。」
「はい?」
「手繋いでて。」
「大丈夫ですよ。」
「俺が助けてケガすんのと。今から手つないどく。どっち?」
「はい。」
真彩は少しふくれて仕方なさそうに手を繋いだ。
「離したら俺がケガするからね。」
「卑怯ですよ。」
「何とでも。」
2人はその広場をゆっくり歩いた。
真彩はちょこちょこ立ち止まっては伸也に頼み、写真を撮る。
そしてまた繋ぐ。
ひとしきり写真を撮り終えると開いているベンチに座った。
「寒い?」
「大丈夫ですよ。人間カイロさんがいるので。」
繋いでいる手を見せ笑った。
「佐原。」
「はい。」
「好きな人いる?」
「いますよ。家族、枝理、もちろん真山さんも。」
「…そういう意味じゃなくて。」
「…いますよ。」
「…俺であって欲しい。」
「はい?」
「佐原の好きな人…。」
「真山さん。先に話しても良いですか?」
真彩は伸也の告白を止めた。
「…どうぞ。」
伸也は小さく呼吸して真彩の方を向いた。
「私、色々考えたんです。本当に死のうと思ったとき、枝理の気持ちとか、真山さんの気持ちとか。2人は私にとったら神様同然なんです。私以上に辛かった枝理はずっと傍で笑ってくれた。何も知らなかった真山さんはいつも助けてくれた。2人には今のまま輝いていて欲しいです。でも、私はまだ影でしかない。…違う。影でありたいです。光と影は対象ではありますけど、離れないから。今やっと自分を許せそうな気がするんです。…。」
「佐原。ゆっくりで良いよ。」
真彩は涙を流し過呼吸気味になっていた。
「こんな時まで…。悔しいです。弱い自分が。認められない自分が。…真山さんのことは…大好きです。でもそれが本当に好きって気持ちなのか。ただの友達としてなのかまだ分かりません。」
「うん。」
伸也は真彩の手を取りゆっくり頷いた。
「本当は枝理も真山さんも…近付かないで欲しい。私のせいで誰も傷付けたくない…。誰も幸せに出来ない…。今の私じゃ駄目なんです。…今は真山さんも枝理も同じくらい大切で大好きで…傷付けたくなくて…汚したくなくて…。」
「しばらく…近寄るなって事…?」
真彩は止まらない涙を流しながら小さく頷いた。
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