第21話
クリスマス当日。
大雪が降りそうなくらい珍しく真彩は今風の女の子のような姿でやってきた。
街はクリスマス一色。
色々あったため、会社も気を使ってか今日は休み。
「お待たせしました。」
2人の地元から近い駅前での待ち合わせ。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「…そんな格好するんだな。」
「まぁ元は見られる仕事もしてましたから。流行に乗るのは嫌いですけど、枝理が着ろって煩くて。」
「たまには良いんじゃね?似合ってるよ。」
「何か照れくさいですね。」
「普段ゆっくり話もしないから余計かな?辞めてからまともに話さなくなったし。」
「ははっ。すいません。」
「その割に2人になると話すの面白いけど。」
「緊張するんです。」
「あの赤面さ。慣れないの?」
「うーん。どうでしょ?」
2人はトボトボ歩き駅から何処かに移動するようだ。
伸也はエスカレーターで真彩の後ろに立ったり、切符を買ったりと紳士的。
ホームについても風よけになったり寒そうにしている真彩にマフラーを貸したり。
「真山さんってずっとそうなんですか?」
「何が?」
「その紳士行動。」
「?男として普通するだろ?」
「しないでしょ。」
「あっ。デートとかは結構してたとか?」
「全く。店外はしません。」
「なのに良く分かるな。」
「一応そーゆーのも勉強になりますから。」
電車が来て、中に乗り込む。
真彩は何処に行くかは知らない。
とりあえず付き添いという感覚しか無かった。
「開いてる。座って。」
「大丈夫ですよ。立ってる方が楽なんで。」
「ならあっち行こう。」
出入口から遠目の所に行く2人。
「すぐ降りるなら近くの方が良くないですか?」
「ドア開いたら寒いだろ?真ん中の方が暖房も効いてるし。」
「また紳士。」
「悪口だぞ。それ。」
「なら止めます。」
「よし。…何笑ってんだよ。」
「楽しくて。」
「俺もだよ。」
「そうだ。枝理が悲しんでましたよ。私にはお誘いなかったって。」
「クリスマスに女2人連れてたら可笑しいだろ?」
「そうですか?」
「そうです。…あっ。次降りるよ。」
「あっ。はい。」
その駅では結構な人数のカップルが降りた。
「恋人スポットですか?」
「内緒。」
駅についてまたしばらく歩いた。
昔ながらの商店街が並ぶ。
「好き嫌いあった?」
「チーズケーキ食べれません。」
「珍しいな。」
「どうにも苦手で。」
「じゃぁ好きなモノは?」
「んー…。特に…。」
「言うと思った。…人多いな。」
「クリスマスですから。…わっ。」
「佐原?」
凄い人に転けそうになった真彩。
「…今は迷子防止。」
そう言って笑う伸也は真彩の手を握っていた。
「暖かい。体温高いですね。」
「人間カイロだから。」
真彩は伸也の行動に平然としてるだけ。
どちらかと言うと景色や建物が好きなので、たまに立ち止まり眺めている。
「そんなに建物好き?」
「格好良くないですか?人の手なんですよ。同じ人。何も変わらない。そんな人達が一軒の家やビル、道や橋、高速道路を作る。カッコいいと思います。」
真彩は目を輝かせていた。
「歩くの疲れてない?」
「全然平気です。」
しばらく古風な風景や建物などを見て、たまに立ち止まる真彩に付き合っているだけ。
「あっ。あった。」
やっと立ち止まり、入っていった先は古風はレストラン。
「オススメなんだって。オムライス。」
「よく知ってますね。」
「意外?」
「素敵だと思います。何かに興味を持つ事って。」
「ありがとう。」
ちょうど時刻はお昼時の少し前に入ったので、すぐ座れた。
注文をして食事をしながらも話が尽きない。
「綺麗な食べ方するよな。」
「…ゴホッ。変な所見てますね。」
「そっか?」
「私があまり気付かないとこに気付くというか…。」
「羨ましい?」
「そうですね。」
「佐原さ。」
「はい?」
「俺の両親好きじゃん?なんで?」
「憧れです。店長さんは人見知りなのに接客されてて何も持ってないのかと思いきや建築の色んな資格をお持ちだし、奥さんは歩くだけで仕事が出来るオーラ持っててハキハキしてるし、お客様にはいつも笑顔。本当にカッコいいです。」
「人をけなしたりとかしないの?」
「前は結構してましたよ。父親も大嫌いでしたし。でも1人の人間なんですよ。父も母も、姉も弟も。その人がどんなに辛い人生を送ったか、どれだけの思いで生きてきたかなんて、その人にしか分かりません。話して貰ったとしても話すことで楽になるモノはありますけど、その辛さも軽さも本人しか分からないんですよ。だから仕方なくそうするしかなかった。周りが何もしてくれなかった。時代が違えば大きく変わります。だから、その人のカッコいいところを見ようと思ったんです。まだまだ未熟ですけどね。」
「…やっぱ好きだわ…。」
「…え?」
「あっ、ごめん。考え方とかがさ。…そろそろ行くか?」
「そうですね。」
2人でお会計。
真彩は財布を出したが、伸也が全て払ってしまった。
「…ご馳走様です。」
「付き添いのお礼。」
「暇人なので。」
そしてまた2人は歩き出した。
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