穴だらけの知恵袋

中米 その②グアテマラ・女性編

　今回はグアテマラの女性の民族衣装についてです。今回も前回同様、上（頭）の方から述べていきます。

頭飾り

・頭飾りには種類も呼び名も幾つかあり、頭飾りの色や文様、幅、房飾りには村の特徴が表れています。下記のトコヤルやトゥプイを除く、一般的な頭飾りはシンタもしくはリストンと呼ばれています。シンタもリストンもスペイン語で「リボン」を意味する単語（ただしリストンは「（絹の）リボン」という意味らしいです）なので、そういう形状なのでしょう。事実、グアテマラの一般的な頭飾りは織紐で、髪と一緒に巻き付けるそうです。もっとも一部地域では布に詰め物をし、ドーナツ状にした頭飾りが使用されているそうですが。

・トコヤルは毛糸製の髪飾りのことで、一部地域では黒い毛糸を三つ編みに死、両端に大きな房飾りをつけていました。

　→トゥプイ

　・北中部に位置するアルタ・ベラパス県の県都であるコバンの女性が、儀式の際に使用する頭飾りです。赤い糸で作られた長さ７ｍの紐で、髪に巻き込みながら背中に垂らして使用します。その見た目はケクチ族というマヤ系の民族の伝説「サンゴ蛇」に起源があることを表しています。

ベロ（ベール）

・ベロとはスペイン語でベールもしくは被り物を意味しています。まんまですね。ただ、グアテマラでベロといえば、宗教儀式や結婚式用のベールを指しているようです。グアテマラにベールが入ってきた経緯と定着するまでには、キリスト教が深く関わっているでしょうから、さもありなんという感じですね。

・一部地域では絹糸で刺繍を施した四角い布「パヤ」をベールに縫い付けます。

肩掛け《ペラッヘ》

・一般的には１ｍ×２ｍほどの大きなショールです。村によっては絣や縞から仕立てるだけでなく、刺繍を施したり両端に毛糸の玉房の飾りを付けたりしています。一部地域には2.52ｍ×3.36ｍという、超大型のショールもあるのですが、こちらは「タパード」と呼ばれています。……2.52ｍ×3.36ｍのショールって、もうショールじゃない気がしますね。

・ペラッヘは体を包むだけでなく、畳んで頭に乗せて日よけとしても使われています。

上衣（ウイピル）

・布の中央に開けた穴から頭を出して着用するという、極めてシンプルな巻頭衣です。丈を着用者に合わせて織った布を数枚剥ぎ合わせて仕立てます。特に儀式用のものは、普段着の上に重ねるので三枚の布を接いで仕立てます。形はシンプルながら、縫取織の紋様と色彩の美しさは群を抜いているのが特徴です。

帯（ファハ）

・女性用の帯は男性のものよりも控え目なデザインになっています。女性の上衣は華やかですから、帯まで華やかにすると喧嘩しちゃいますし、見た目もくどくなっちゃいますからね。逆に男性のものは上衣はシンプルだから、帯は華やかにした方がバランスが取れてよい、ということなのでしょう。もっとも、やはり村ごとに独自の文様を織り込んだりするのですが。

・女性のファハは下記のコルテ（スカート）の上から腰に巻くのですが、結ばずに端を詰め込んで使用します。

腰衣（コルテ）

・つまりスカートのことなのですが、コルテの誕生とスペインは切っても切り離せない関係にあります。そもそもスペインの侵攻以前のグアテマラでは、古代マヤ時代から受け継がれてきた後帯機(テラール・デ・パロ)という、数本の棒を使用する織機が使われていたのです。この織機は我々が織機と聞いてイメージするものよりも小型で、その分出来上がる布の面積も狭くなりますが、技法や技術によっては刺繍と紛う文様を織り出すこともできます。が、スペインによって高機（椅子に腰かけて使う、足踏みの織機。大多数の現代日本人が織機と聞いてイメージするのはこちら）がもたらされると、幅広の布を織れるようになり、腰衣が誕生しました。

・腰衣は模様（村ごとに縞や格子、絣に無地など様々）だけでなくデザインも様々です。二枚の布を接ぎ合わせて仕立て、接目の上には刺繍を施して隠すところもあれば、輪状に縫った布を巻きつけたり、腰に巻いたりして着用するところもあります。細かなプリーツを入れるところもあります。

前掛け（デランタル ）

・絣お布にフリルを付けたり、ミシン刺繍を施したもの。要するにスカートの上に付けるエプロンのことで、近年になってから誕生しました。

チャチャレス（アクセサリー）

・グアテマラの伝統的なアクセサリーは珊瑚と銀の打ち出し細工（金属の板を裏から叩くことで、図案や模様を打ち出す技術。もしくはその技術を施した細工のこと）の首飾りです。が、銀貨や十字架、小さなお守りをつけることも。また、最近ではガラスやプラスチックの首飾りも使用されるようになっているそうです。

小布（セルビリェタ）

・祭事の際や、食べ物を包んだりする床に使う小さな布のことです。祭事用の物は、文様も配色も伝統的な要素が強く出ています。